セックス体験談|生挿入を求める女性の心理状態とは

隔たりセックスコラム「生挿入を求める女性の心理状態とは」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにて連載コラム「セックス物語」を寄稿中。「隔たり」というペンネームは敬愛するMr.Childrenのナンバーより。


セックス体験談|生挿入を求める女性の心理状態とはの画像1
※イメージ画像:Getty Imagesより

「えっ、生?」

「うん。私…生の方が好きなの」

「でもいいの? ほら、今日初めて会ったばかりだし」

「そうだけど、隔たりくんのが生で欲しいの」

「でも…。生でしたことあんまりなくて、ちょっと緊張する」

「中に出さなければ大丈夫だよ」

「それが緊張する理由なんだって」

「大丈夫だよ、隔たりくん…めでたいから」

「めでたい?」

「年が、明けた」

「ああ」

「だから、新年の1回目は生でしたい」

「すごい発想だね」

「ほら、隔たりくん。もう我慢できない。早くいれて?」

「…分かった。それじゃ、生で入れるね」

「うん」

「じゃあ、あけおめっていうことで、失礼します」

「なにそれ、面白い。ふふ」

「まぁまぁ。じゃあ、いれるよ」

「うん…あ、ちょ、あっ、やばい、入ってくるの気持ちよすぎ」

「やばい、生やば」

「もっと奥まできて…」

「うん、いくよ」

「はあぁぁぁああっ!!!」


 年末年始は暇だ。

 学生の頃、僕は年末年始になると必ず祖父母の家に行っていた。それは家族の恒例行事だった。

 行事といっても特にやることはなく、お正月と年明けに親戚で集まって食事をするくらい。大人数が苦手な僕にとって、親戚とはいえどそれは少し苦痛の時間だった。

 それでもなぜ祖父母の家に行くかというと、僕は祖父母の家の雰囲気が好きだったからだ。こたつ、畳の部屋、木造ならではの匂い。その空気感は僕を東京の日常から開放させてくれた。

 親戚が集まっていても、僕はひとり布団に寝転がって携帯をいじるか、外に出て田んぼに囲まれた道を散歩するか。それくらいしかやることがなかった。

 大学2年生のお正月。いつものように僕は祖父母の家にいた。

 やることもないので寝転がりながら携帯をいじる。mixiのコミュニティサイトやモバゲー、グリーなどのTwitterなどが主流になる前のネットサイトを漁っては、ただひたすらに女性にメッセージを送っていた。

 多くの女性にメッセージを送り、返ってきた少数の女性とひたすらやり取りをする。それが僕の年末年始の過ごし方だった。

 やり取りしていた女性の中で、ひとりだけとても返信の早い女性がいた。僕も暇だったので、その女性とほぼ1分間隔で何度もやり取りをした。

 その女性は麻里子(仮)といって、神奈川県に住む大学1年生だった。年末年始は彼女も暇らしい。お互い暇つぶしという感覚で、どうでもいいメッセージを送り合っていた。

 そういった状況もあり、麻里子には気軽になんでも聞くことができた。


「彼氏はいるの?」

「付き合った人数は?」

「初体験は?」

「どんなセックスが好き?」

「経験人数は?」


 恋愛の話から性の話。どうせ会わないし、暇つぶしだし、嫌われたっていい。そう思えば、なんでも聞くことができた。

 そんな質問に対し、麻里子は「えー」「答えたくない」「内緒」などと言いながらも、必ず返信をくれた。だから最終的にはどの質問にも答えてくれたし、やり取りが途切れることはなかった。

 そうやって色々な質問をするなかで、唯一、麻里子が即答した質問があった。


「経験人数は内緒かあ。じゃあ、キスは好き?」

「うん、好き」

「お、これは即答」

「だって好きだもん」

「最近はしてる?」

「してないやー」

「しなくて大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないかも」

「俺もキス好きだよ」

「へー」

「だから俺にしてもいいよ」

「うける(笑)」

 

 そして年が明ける前の31日。僕と麻里子は変わらずにやり取りをしていた。


「もうすぐ年明けるね」

「そうだね」

「来年の目標とかある?」

「目標かあ。あんまり思いつかないな」

「俺、あるよ」

「えーなに?」

「麻里子に会うこと」

「またまたー」

「あ、目標間違えた」

「間違えたは傷つく(笑)」

「麻里子に会うんじゃなくて」

「会うんじゃなくて」

「麻里子とキスすることが目標」

「うける(笑)」


 そして、そのまま年が明けた。


「あけましておめでとう」

「おめでとう」

「会ったことないけど、今年もよろしくお願いします」

「確かに会ったことない(笑)」

「今年は麻里子に会えますように」

「でたそれ」

「間違えた。今年は麻里子とキスができますように」


 今までの流れからして、麻里子からは「うける」と返ってくると予想していた。だが、彼女は違う回答を僕にくれた。


「そんなに私とキスしたいの?」

「あれ、そこは『うける』じゃないの?」

「いやまあ、そんなに私とキスしたいのかなって思って」

「まあキス好きだし、麻里子がキスしてもいいならキスしたいかもね」

「ふーん。いいよ、しても」

「へ? いいの?」

「私もキス好きだし」

「なんか、ありがとうございます」

「隔たりくんが、キスキスばっか言うから、想像しちゃってキスしたくなった」

「なんか、ありがとうございます!」


 僕が東京に返った次の日に、麻里子と会うことが決まった。2人ともカラオケが好きだったので、カラオケに行ってキスをしようと話がまとまった。

 会うことが決まったので、ここで初めてお互いの写メを交換し合った。

 麻里子がくれたのは高校の時のプリクラの写真。彼女は黒髪のロングヘアーで優しそうな顔をしていた。だか、制服のボタンは大胆に開けていて、スカートは短く、ルーズソックスを履いていた。おとなしそうなギャルという印象だった。


「麻里子はギャルなの?」

「ギャルじゃないよ」

「でも制服の着方がギャルっぽい」

「ああ、この時はね。いまは大学入ったし、普通だよ」

「そうなんだ」


 普通だよと言われても、この制服の格好を見てしまったら、麻里子はエッチなのではないかと妄想してしまう。麻里子に会ったとき、キスだけで止められるのだろうかと不安になった。


「麻里子かわいいね」

「かわいくないよ」

「こんなかわいい子とキスできるなんて幸せだよ」

「そんなことないよ、期待しすぎ」

「これだけかわいいとキスだけで止められるか分かんない」

「止めて(笑)」

「頑張るけど、止められなかったら許してね」

「そんなんで怒らないよ。だって私が止められないかもしれないし」

「え、どういうこと?」

「私がしたくなっちゃうかもしれないじゃん?(笑)」


 その麻里子からの返信を見て、気づいたら勃起していた。


「麻里子は意外と変態なんだね」

「いや、隔たりくんのほうが変態でしょ!」

「じゃあ、キスして、お互い止められなくなったらしよっか」

「そうだね」

「なんか、ありがとうございます!」

「隔たりくんは、する気まんまんでしょ(笑)」

「いやいや。そういう麻里子こそ」

「私はその日になってみないと分からないからな〜」

「期待しております」

「うける(笑)」


 そうして僕と麻里子は会うことになった。


「隔たりくん?」

「あ、麻里子?」

「うわあ、隔たりくんだ」

「なにそれ」

「なんか緊張する」

「あんなにやり取りしたのに?」

「そりゃするよー! 直接会ったら」

「ラインの感じと変わらないね」

「そう?」

「なんか安心した。それじゃあ行こうか」


 川崎駅の改札出口で待っていると、麻里子のほうから声をかけてくれた。彼女は全身真っ黒のワンピース姿。年下だけど、僕より年上にも見えた。

 名前の聞いたことのない麻里子がよく行くというカラオケに入り、何もせずに歌を歌い合った。間奏や、曲と曲の間、会話できるタイミングはたくさんあるのに麻里子は話さない。僕はからかうように、麻里子に話しかける。


「何か忘れてない?」

「え、なにが?」

「ほら、麻里子さ、ラインでなんか言ってなかったっけ?」

「えーっと」

「キスしたいとかなんとか」

「それは隔たりくんでしょ(笑)」

「あれ、麻里子も言ってなかったけ? まだキスしてないけど、いいの?」

「うーん、したいけど…」

「したいの?」


 こくり、と麻里子は頷く。


「したいなら、していいよ」

「なにそれー(笑)」

「麻里子がキスしたいなら、いくらでもしていいよ」


 そう言って麻里子の方を見る。照れた表情をした彼女は、ゆっくりと僕に顔を近づけた。そしてそのまま、僕らの唇が重なる。

 麻里子は食べるように、僕の唇をハムハムする。違和感なく僕の口の中に舌を侵入させ、絡みつくように舌を舐めた。僕は麻里子の行為にただ身を委ねる。麻里子のキスは、性的興奮を呼び起こすような、そんなキスだった。


「たくさんキスしてくれてありがとう」

「恥ずかしい…」

「キスしたかったんだね」

「…」

「麻里子は、止められそう?」


 麻里子は恥ずかしそうに下を向きながら首を振った。


「止められないなら、何をするの?」

「恥ずかしい…」

「麻里子は何をしたい?」

「…ッチ」

「ん?」

「エッチしたい」


 麻里子の「エッチしたい」という言葉とほぼ同時に、僕は彼女を抱きしめてキスをした。唇を離して見つめると、彼女はトロンとした目をしていた。

 僕らはカラオケを出てホテルへ向かう。部屋は満室で、少し待合室で待つことになった。


「年明けからみんな元気なんだね」

「…」

「麻里子どうしたの?」

「なんかドキドキしちゃって…」

「かわいいね」


 恥ずかしがっている麻里子が愛おしくなり、僕はキスをした。麻里子は恥ずかしそうだったのに、キスをすると「もっと」という仕草を見せ、そのまま僕の股間に手を伸ばした。僕はその手を優しく握る。


「部屋入ってから、たくさん触っていいからね」

「ごめんなさい、なんか止まらなくて」

「ラインでいってたとおり、止まらなくなっちゃったんだね」

「うん、早く部屋に入りたい」


 麻里子のその言葉が届いたのか、部屋が空いたようで、僕らは待合室から出た。

 入った部屋は思ったよりも広かった。浴槽にはジャグジーが付いていて、色が変わるライトも付いていた。


「これすごいね」

「私初めて見た」

「ラブホって感じだね」

「ね、入ってみたいかも」

「そしたら一緒に入る?」

「うん!」


 カラオケで緊張していた麻里子はどこへやら。部屋に入ってからずいぶんとリラックスしていた。お風呂で素直にテンションが上がる彼女を見て、とてもかわいらしいなと思った。

 服を脱いで、簡単に体を洗い、ふたりで湯船に浸かる。常備されていた泡立つ入浴剤をいれ、ジャクジーのスイッチを入れる。ブクブクという音と共に泡が出来上がり、僕らの身体はすっぽりと泡に隠れた。そしてライトのスイッチをいれる。


「わあ、すごい」

「ね、オシャレだね」


 色とりどりの光にはしゃぐ麻里子。泡の下でモノを大きくさせている僕は冷静を装って、そんな彼女を眺めている。

 麻里子は抜群のスタイルというわけではない。くびれがすごいあるわけでもないし、胸も大きいわけではなかった。

 けれども、そのむっちりとした感じが絶妙にエロい。程よく肉付きのある身体が、僕の触れたいという欲求を加速させていた。早く麻里子の身体に触りたい。

 泡の下からゆっくりと麻里子の身体に向けて手を伸ばすと、程よく柔らかい太ももの内側に当たった。そのまま這うように、僕はさらに手を伸ばす。手が麻里子のアソコにたどり着くと、目が合った。


「隔たりくん、触ってる」

「あ、ごめん」

「いいよ、触って」

「いいの?」

「うん」

「分かった、触るね」

「あっ…」

「もう濡れてたんだね」

「たぶんキスしたから…」

「お風呂の中でも、濡れてるって分かるんだね」

「恥ずかしい」

「ものすごくヌルヌルしてるよ」

「わたしも触る!」

「あっ」

「隔たりくんも勃ってるじゃん」

「まあね」

「どんな感じが気持ちいい?」

「普通に優しくシコシコしてくれたら」

「こう?」

「うん、そんな感じ」

「あんっ。そこは感じちゃう」

「やっぱりクリは気持ちいい?」

「うん…」

「…キスしよっか」

 

 僕らはお風呂の中で、互いの性器を触り合いながらキスをした。キスはだんだんと激しくなり、汗が身体から溢れ始めた。のぼせてしまいそうだったので、お風呂から出てベッドに移動した。


「じゃあ、攻めるね」


 麻里子をベッドに寝かせて、覆いかぶさるようにキスをする。触れるか触れないかのキスをしながら、両手を彼女の顔に添える。顔全体を包み込むように。力の抜いた舌を、ゆっくりの彼女の口の中に落とす。ゆったりとねっとりとしたキスを繰り返した。

 唇を離して麻里子の目を見つめる。女の顔だ。おでこにそっとキスをしながら、両手を首から肩にかけて撫でるようにおろす。それについていくかのように、唇を這わせながら胸の膨らみを目指す。

 両手で麻里子の身体の全体を撫でながら、唇は胸の膨らみに登るように円を描く。時々舌を出しながら、ゆっくりと動かしていく。頂上にたどり着きそうになると、また膨らみの下までおろし、さらにゆっくりと登っていく。

 もう片方の膨らみは左手で包み込み、頂上には触れず、高級な骨董品を扱うかのように愛撫していく。麻里子が吐息を漏らし、身体をムズムズさせたところで、舌を頂上へ。


「はあぁぁんん…」


 ねっとりとゆっくりと、決して焦らず、手と唇と舌を使って胸を愛撫する。同じように、首、鎖骨、腕、手、腹、腿と愛撫し、アソコにたどり着いた。


「キレイだよ」

「やだ…恥ずかしい」

「すっごく、濡れているね」

「うん…」

「嬉しいよ」

「嬉しいの?」

「うん、すっごく嬉しい」


 アソコの周りを円を描くようにキスをする。そしてゆっくりと、ゆっくりと、中心に向かう。手、指先、唇、舌。彼女に触れることが出来るもの全てを使うつもりで、全神経を研ぎ澄ませる。


「あぁぁ。気持ちいし、すごいドキドキする…」


 嬉しかった。

 僕は勉強したから。

 年末年始、僕は暇だったから、勉強したんだ。

 どうすれば女性に喜んでもらえるか。

 シュミレーションもした。

 前戯で女性を喜ばしたかった。

 テクニックも勉強した。

 でも、大事なことはこれなんじゃないかと、勉強していて思ったんだ。

 女性の体を大切に扱うこと。

 これが大事なんじゃないかって。

 敏感でデリケートな女性の体。それを喜ばせるには、大切に大切に扱うことが1番大事だと。

 例えば、安い壺だったらずっと置きっぱなしにしてしまうかもしれない。でも高級な壺だとしたら、持ち運びにも管理にも徹底的に気を遣う。

 なんだか分からないけど、女性を愛撫するということは、高級な壺を扱うことと等しいと思った。それが「愛すること」なのかもしれないとさえ、思った。

 その「愛する」という行為を、付き合ってもいない麻里子にしているというのは、少し不思議だった。でも、目の前の女性を大切にできない男が、本当に好きな人を目の前にしたときに大切にできるのだろうか。だから僕は、麻里子の身体を真剣に愛する。


「隔たりくん、もう入れて。欲しすぎて、やばい」


 僕は自分で買ってきて、あらかじめ枕もとに置いておいたコンドームをつける。ネットで調べた結果、おそらく女性のことを1番に考えて作られたコンドーム。麻里子に合うか分からないが。


「じゃあ、入れるね」


 ゆっくりと麻里子の中に侵入していく。時間をかけて奥にたどり着くと、彼女の中が僕のモノに馴染むまで、抱きしめながらキスをした。


「動くよ。痛かったら言ってね」


 麻里子の身体全てを味わうように、少しづつ腰を動かしていく。くちゅくちゅと、結合部から卑猥な音が鳴る。相当濡れているのかもしれない。嬉しかった。麻里子は僕を抱きしめたまま離さない。そして不意に、耳元で囁いた。


「隔たりくん、生がいい」


 思わず声が出てしまう。


「えっ、生?」

「うん。私…生の方が好きなの」


 昔なら、飛びつくように喜んでいたことだろう。でも今は、妊娠とか、その先のことを考えてしまう。言い訳のような言葉が、口からこぼれる。


「でもいいの?…ほら、今日初めて会ったばかりだし」

「そうだけど、隔たりくんのが生で欲しいの」


 麻里子はどんな気持ちで、生挿入を欲しがっているのだろうか。心臓の鼓動が早くなる。


「でも…。生でしたことあんまりなくて、ちょっと緊張する」

「中に出さなければ大丈夫だよ」

「それが緊張する理由なんだって」


 中で出すか出さないかは、ほとんど男の意志に託されている。なのに、女性の方から「大丈夫」というのは、ものすごく不思議だった。

 そうやって悩んでいるうちに、中に入っているものが萎み始める。生を断って、そのままセックスをすればいいのに、僕は悩んでいた。

 生で欲しいという麻里子の願いを叶えてあげるのか。生ですることによる妊娠や性病などのリスクを避けるか。生の快楽を味わうか。どれも正しい欲求に思えて、僕には決められない。

 そんな僕を見て、麻里子はふと、不思議なことを言い出した。

 

「大丈夫だよ、隔たりくん…めでたいから」

「めでたい?」

「年が、明けた」

「ああ」

「だから、新年の1回目は生でしたい」


 新年1発目の生は縁起が良い。ものすごく無理矢理な頼み方に思えたが、妙な説得力があった。どうしても生でしたい、という麻里子の気持ちが伝わってきた。


「すごい発想だね」

「ほら、隔たりくん。もう我慢できない。早くいれて?」


 ここまで言われたら、もう断ることができなかった。麻里子の欲求に流されてしまう自分。こうやって人は、浮気や不倫などの危ないことに、足を踏み入れてしまうのだろうか。


「…分かった。それじゃ、生で入れるね」

「うん」


 生で入れる自分を正当化しようと、冗談が口を出る。


「じゃあ、あけおめっていうことで、失礼します」

「なにそれ、面白い。ふふ」

「まぁまぁ。じゃあ、いれるよ」


 ゴムを外して、麻里子の中に挿入する。剥き出したモノたちが絡まり合う。ものすごく暖かい。


「うん…あ、ちょ、あっ、やばい、入ってくるの気持ちよすぎ」

「やばい、生やば」

「もっと奥まできて…」


 ここまできてしまったら、後はただ快楽に身を委ねるのみ。


「うん、いくよ」


 そして麻里子が喜んでくれたら、それでいい。


「はあぁぁぁああっ!!!」


 奥に達したとき、自分自身と目が合った。ベッドの枕側の壁、そこを彩る模様の一部。その部分が鏡となって、僕を映している。向こう側にいる僕と目が合った。

 ラブホテル、僕、裸、セックス、今日初めて会った女性、生挿入。今ある情報が、客観的に目に飛び込んでくる。何をしているんだろうという冷静さと、セックスをしているという事実が、ぐちゃぐちゃに混ざり合い複雑な感情を生む。気づいたら、腰の動きが早くなっていた。


「あぁん! あぁん! あぁん!」


 僕は麻里子の顔を見ず、反射した僕自身をずっと眺めていた。僕は女性の股に体を何度も入れていた。その行為をしたくて、僕はここに来た、はず。


「気持ちいぃぃよおぉ」


 でもなぜ、その行為がしたかったのだろう。なぜ、女性の股に自分の体を入れたかったのだろう。なぜ、そういった欲求に毎日振り回されていたのだろう。なぜ、いまここにいるのだろう。

 分からない。でも自分の股間は暖かく包まれ、快楽は絶頂を迎える。


「イくよっ」


 僕はモノを引き抜き、麻里子の身体に放出した。年末年始で溜められた液体は、新年を祝うかのように大きな弧を描き、彼女の胸元まで到達した。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 僕と麻里子の呼吸を整える音だけが、虚しく響き渡る。先程まで響いていた打ち付け合う音、交った粘着音、甲高いよがり声は一瞬で姿を消した。そこにはただポツンと、僕と麻里子がいるだけだった。

 僕はティッシュを取って、麻里子の身体の上の液体を拭く。そして彼女の手をとり、浴室に入った。

 汗などの液体を流すためだけに入ったつもりだったが、僕らはそこでもう一度交わった。前戯もなく、ゴムもつけず。前戯をしている時にあった「女性に気持ちよくなってもらいたい」という想いは、性的欲求という快楽を求める化物に簡単に呑み込まれてしまった。

 セックスをすると自分が分からなくなる。セックスを前にすると、何か大きなコントロールできないものに支配されている気がする。浴室でのセックスは僕の望むものではなかったけど、唯一の救いは、麻里子が満足そうだったことだ。

 立ちバックの体勢で麻里子のお尻に放出した後、シャワーで液体を流し、部屋に戻る。内容のない会話をしながら服に着替えて、ホテルを出た。


「隔たりくん、また会おうね」


 別れ際、そう笑った麻里子と、もう二度と会うことはなかった。

 年末年始、僕と麻里子は互いの暇を潰し合っていた。

 そしてお互いの好奇心が高まった結果会うことになり、溜まったものを吐き出すように僕らは交わった。

 暇な時間に調べていた前戯のやり方を僕は実践し、麻里子は自分が好きだからという理由で生挿入を求めた。

 そして僕は生で挿入し、そこからは止められない欲求に支配された。

 その日以降、麻里子とは連絡を取っていた。でも年末年始の時に比べ、やり取りは少しづつ減っていった。

 会おうともしても大学やバイトが始まって予定が合わず、自然消滅のような形で、麻里子とのやり取りが終わった。僕らはそれぞれの、当たり前の日常に戻っていった。

 今はもう、麻里子の顔は思い出せない。

 僕の日常に、彼女はいない。

 それと同じように、麻里子の日常に僕はいらない。

 それでも僕は、麻里子とのセックスを覚えている。

 麻里子は今年も、1発目は生でしているのだろうか。

 またひとつ、年が明けた。

 (文=隔たり)

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