セックス体験談【最終回】僕にとってセックスとは?

 たくさんセックスをしているのに、僕は「幸せ」ではなかった。かつて童貞だった自分の夢を叶えてあげられたのに、セックスをすればするほど、何のためにセックスをしているのかわからなくなっていた。

 そんなふうに悩みながらもセックスを繰り返す日々の中で、僕はメンズサイゾーで連載されているトコショーさんの「ネットナンパ」の記事を読んだ。出会い系で出会った女性たちと気持ちよさそうにセックスをしているトコショーさんがただただ羨ましかった。セックスがしたい。女性を気持ち良くさせたい。その純粋な気持ちでセックスを続けているトコショーさんが本当に羨ましかった。

 トコショーさんのメッセージを真似したり、愛撫やクンニの真似もしてみた。楽しかったが、やはりセックス後の自己嫌悪が消えることはなかった。僕とトコショーさんは何が違うんだろう。そんな想いを抱えながらネットナンパのバックナンバーを読み漁っていたある日、僕は出会ったのだ。

 「エロ体験談」に。

 衝撃だった。そこに書かれている素人の性体験は、僕にとって衝撃なものだった。複数プレイや青姦、風俗での本番行為や人妻とのセックス。誰もが僕の想像以上の性体験をしていた。

 気づけば、僕はエロ体験談のすべての記事を読んでいた。それは僕にとって、実際にセックスをすることと等しい興奮があった。AVを見るのとはまた違った興奮だった。僕の知らないセックスの世界はこんなにもたくさんあったのだと驚いた。

 読んでいるうちに、僕も書いてみたくなった。みんなのような衝撃的な体験ではないかもしれない。でも、書いてみたかった。セックスをすればするほどセックスというものがわからなくなっていくこの気持ちを書いてみたかった。どれだけエロいセックスをしても、幸せよりも悲しみが残ってしまうこの気持ちを書いてみたかった。だから、僕は書き、投稿した。

 初めて投稿した話は「美容師さんとのセックス」だった。この話がエロ体験談の賞金レースで2位なった。嬉しかった。自分の性体験を知られる恥ずかしさよりも、自分の感情を記した文章を読んでもらえたことが嬉しかった。

 恋愛において、「2番目に好きな人と付き合うとうまくいく」という格言みたいなものを聞いたことがある。1番好きな人と交際しても、いつまでも自分をよく見せようと無理をするため続かないが、2番目に好きな人の前だとありのままでいられるからうまくいく、ということらしい。この言葉をエロい意味で実感したことがある。

 嬉しくて、僕は体験談の投稿を続けた。掲載される度に、悩み続けていた自分の性体験が肯定されていくようで嬉しかった。だから僕は今日まで、自分の性体験を書き続けてきた。

 たくさんのセックス体験談を書いてきた。当時のセックスの景色を思い出し、興奮しながら、反省しながら今日ここまで書いてきた。

 僕にとってセックスとはなんなのだろう。それを考えることが、この連載のテーマだった。

 だが、書けば書くほど、セックスというものがわからなくなっていった。セックスとはこういうものではないか、と定義した瞬間にそれがセックスでなくなってしまうような、そんな感覚を抱くようになった。掴んだと思ったら離れている。セックスとは実体のない、もはや空っぽの概念なのではないか、とさえ思うようになった。僕はセックスに振り回されていた。セックスをしている時も、そして体験談を書き続けている時も。

 でもニュースを見た時に、セックスに振り回されているのは僕だけじゃないのかもしれない、とも思うようになった。

 不倫をして築き上げた地位を失う芸能人もいる。性欲が抑えられずに痴漢をしてしまって捕まる人もいる。それを考えれば、みんなセックスに振り回されているようにも思えた。

 人間はセックスをする。それは当たり前のことなのに、そんな当たり前に存在するセックスのことをみんなよくわかってないのではないか。僕だけではなくて。

 だから僕は、こうやってエロ体験談を書くことで「セックスってこうだよね?」と確認したかったのかもしれない。

 遡れば、小学生の時にはみんな覚えたての下ネタをよく言っていた。あれは、「これに興奮するのは自分だけではないよね?」と確認したかったのかもしれない。

 そして、大人になってもセックスの話をしているのは、大人になったのにセックスのことがよくわからなくて不安だからなのかもしれない。「自分に性欲があることっておかしくないよね」「こんなセックスって普通だよね」と、周りと一緒であることを確認したいのかもしれない。不安を解消するために。

 みんなセックスがわからないのではないだろうか。だからこそ、わからないからこそ、みんなセックスをしているのかもしれない。

 恋人ができたらセックスをする。恋人以外の異性と気軽にセックスする人もいる。AV女優、AV男優のように自らセックスしている姿を見せる仕事もある。風俗のように、性体験を提供する仕事もある。そんな性サービスを使う人もいる。僕のようにネットで出会った人とセックスする人もいる。会社や学校など、身近な関係性の中でセックスしまくる人もいる。恋人がいるのに、配偶者がいるのに、他の異性とセックスする人もいる。それによって築き上げた地位、家庭を失う人もいる。繁華街にはラブホテルがたくさんあって、ほとんどの部屋が埋まっている。街を歩いているカップルのほとんどはセックスをしている。そしてほとんどの人が、親のセックスによって産まれているという事実。

 僕らの身近なところに、セックスはある。

 そんなふうに、身近すぎるからわからないのかもしれない、と僕は思った。家族などの身近な人間関係が1番頭を悩ませるように、セックスが身近にあるからこそわからないのかもしれない。シンプルなセックスなどはなく、そこには必ず何かしらの人間関係や感情が絡んでくる。それがセックスをわからなくさせ、僕が悩んでしまう原因になっているのかもしれない。

 セックスには様々な種類がある。人の数だけセックスはある。同じセックスなどひとつもない。そんな当たり前のことを、僕は最近やっと気づいた。

 僕にとってセックスとはなんなのだろうか。この連載でずっと考えてきたテーマ。

 今、何となくであるが、ひとつの答えが僕の中にある。それは、僕にとってのセックスとは「心の変化を感じること」という答えだ。

 セックスを通して、自分がどのような気持ちになったか知ること。ただの快楽を味わうだけの行為ではなく、その行為に付属している感情を味わうこと。セックスをするまでの過程、セックスをする相手との関係性や交わした会話。行為中の繋がっているという感覚。セックスを終えた後に抱いた感情。そういったセックスを通して得た「心の変化」を味わうことが、僕にとってのセックスなのかもしれない。

 これに気づいた時、僕は笑いたくなった。なぜなら、セックスが身近にあるように、「セックスとはなんなのか」という答えも身近にあったからだ。

 この「エロ体験談」で書いてきたことこそ、僕がセックスを通して得た「心の変化」ではないか。

 僕は今まで、自分にとってのセックスを書き続けていたのだ。

 今までたくさんセックスをしてきた。

 そのセックスの数だけ、僕はたくさんの「心の変化」を味わった。ほとんどがセックス後に襲われる自己嫌悪などの「負」の感情であったが、それを「心の変化」と感じるのであれば、その前に確実に真逆の心が存在していなければならない。

 つまり、性器がつながりあっている瞬間、ひとつになっている瞬間は、僕はプラスの感情になっていたということだ。

 セックスのすべてが素晴らしいわけではなかった。だが少なくとも、体を重ねている間だけは、僕は幸せだったのかもしれない。その瞬間だけは、僕の心は満たされていたのかもしれない。

 もしかしたら、人はその一瞬の体の重なり合いの中に生まれる心を満たす「何か」を感じたくてセックスをするのではないだろうか。

 これからも僕はその「何か」を感じたいと願い、セックスを続けていくのだろう。その掴んでもすぐに離れてしまうようなセックスの中で、重なり合う瞬間に生まれる確かな感情を味わうためにセックスをしていくのだろう。

 このコラムを読んでくださったみなさんにも、それぞれに体験したセックスがあるはずだ。それがどんなセックスであれ、体を重ねている瞬間だけはみなさんが幸せであることを願いたい。それは回り回って、僕が今までセックスをしてきた女性たちに向けた願いでもある。

 どうか、セックスが人を傷つけるものでなく、人を幸せにするものでありますように。

 セックスが人を傷つけるのではない。傷つけるのはいつだって「人間」だ。料理をするときは便利な包丁が人を殺める道具になってしまうように、セックスも扱い方次第で変わってしまう。

 今まで僕はセックスで人を傷つけてしまったかもしれない。でもこれからは、セックスで誰かに喜んでもらいたい。その体を重ね合う一瞬だけでもいいから、誰かを幸せにできるようなセックスをしていきたい。

 だから、これからも僕はセックスことを考え続けるだろう。

 そして、これからセックスをする女性の体と心を、大切に大切に愛したいと思う。

<終>

 隔たりにコラムはこれで終わりになります。最後まで読んで下さり本当にありがとうございました。

 最後に、ひとつだけ心残りがあるので、それについて書かせてください。それは連載が始まった時に「トコショーさんのように読者さんから連絡くるかな?」と期待していたのですが、まったく連絡がありませんでした。

 ないのは当たり前です。なぜなら、僕はトコショーさんのようにTwitterをやっていませんでした。

 なので、この文章の最後にメールアドレスを貼っておきます。そちらにメッセージをいただけたらとても嬉しいです。女性からの連絡は大歓迎です。女性でなくても、読んでくださった方の感想もお待ちしています。どんな人が読んでくださっていたのでしょうか。あなたのそのメッセージは、僕の連載の日々を彩るものになるでしょう。

 改めまして最後に、こんな素人の僕の連載を決めてくださったメンズサイゾーの編集長に感謝しています。本当にありがとうございました。

 そして、ずっと僕の文章を読んでくださった読者のみなさま、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。みなさんが素敵なセックスができることを、勝手にお祈りしています。

 隔たり

MAIL:hedatari0308@gmail.com

「えっと、あの、あ、お、おねぇさんもライブですか?」    ここにいるほとんどの人はライブに参加する人だ。そんなことはわかりきっているのに、戸惑っている僕はそんな質問を彼女にした。   「ええ。お兄さ

「もしもし」 「もしもし。梨香です。今ついたんですけど、どこにいますか~?」    緊張している僕をよそに、梨香は友達と話すときのような軽い砕けた口調で電話に出た。跳ねるような明るい高い声で、僕は「いい声をして

隔たりセックスコラム「女と男の駆け引き#1」 隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。

隔たりセックスコラム:恋人がいる寂しさ#1 隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現

隔たりセックスコラム「mixiで出会った女#1」 隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出

 久しぶりに見た観覧車は、昔見たときよりも優しい印象を抱いた。初めてお台場の観覧車を見たのは中学生の時だった。周りにたくさんの大人のカップルがいて、僕は人混みに埋れているような感覚だった。

 セックスとは愛の行為である。恋人や妻など、大好きな人とセックスをすることによってお互いの気持ちを再確認し合い、愛はより深まっていく。

 セックスとは愛の行為である。どうやったら子どもが生まれるかを知った日から、僕はずっとセックスをそう捉えていた。

 このカバンのブランドってなんだっけ。そう思ったとき、女の頬に涙が流れた。古い造りを誤魔化すようにリフォームされた、安いラブホテルの一室。壁はペンキが上塗りされてキレイになっているけれど、床や風呂にはまだ古さが残っている。まるでセックスをするためだけに整えられた部屋。その部屋の中で、女は泣いている。

 やや右に曲がりながらも、天に突き上げるようにまっすぐ勃ったモノに、女性の後頭部が被さる。後頭部、モノ、後頭部、モノ。そんな景色が、女性の頭が上下するたびに繰り返される。何度も後頭部が被されていくと、現れたモノはだんだんと女性の唾液でテカり始めていた。その規則正しい上下運動に、僕はただ見とれている。

 暖かさを感じるのは、寒さを知っているからだ。裸でベッドに寝転がっていると、肌に触れている部分が冷たく感じる。ベッドには体温がない。人の肌は、人の肌に触れた時だけ、暖かみを感じる。そして肌の奥にある、人の内側に触れると、そこは火傷しそうなほど熱い。今、下半身だけが、熱い。

 これまで出会い系サイトを使って女性たちと知り合い、セックスをするまでになった体験を掲載してもらった。これらは実際の体験談だが、すべての女性とその後おつきあいできているわけではない。1回エッチしたあとLINEがブロックされることもあれば、楽しくエッチしていのに急に音沙汰がなくなることもあれば、いまでも数カ月に1回会う仲の女性もいる。

 やっと今日、童貞を卒業できる。平日の昼間。僕の実家に、彼女とふたりきり。親は遅く帰ると言っていた。だから、時間はたっぷりある。ここに辿り着くまで、本当に長かった。

「巨乳と貧乳、どっちが好き?」男ならば、誰もが一度はされたことであろう質問。あなたは何と答えるだろうか。そして、「もっと胸が大きくなりたい」と、多くの日本人女性が悩んでいる。そんな悩みに対して、男はどのようなスタンスでいればいいのだろうか。

 ある日、別れた元カノから急に連絡が来た。「ねえ、今何してる?」元カノのかおり(仮)とは、1年ちょっと付き合って別れた。彼女はバイト先の後輩だった。

 「えっ、生?」「うん。私…生の方が好きなの」「でもいいの? ほら、今日初めて会ったばかりだし」「そうだけど、隔たりくんのが生で欲しいの」「でも…。生でしたことあんまりなくて、ちょっと緊張する」「中に出さなければ大丈夫だよ」

 ある女性とセックスした次の日の夜中。家に帰ろうと歩いていると、昨日セックスした女性から急に電話がかかってきた。

 「寂しい」という気持ちと、「セックスしたい」という気持ちは密接に関係している。寂しいから誰かにいて欲しい。寂しいから恋人が欲しい。恋人じゃなくても、寂しさを紛らわしてくれる存在が欲しい。寂しさを紛らわしてくれるなら、いっそのこと、誰だって構わない。

 「叩け!」中学校の女の先生に言われ、僕は思わず怯む。ものすごく天気のいい朝。先生はもう一度、大きな声で叫ぶ。「早く叩いて!」僕は人を叩いたことがない。イラッとしたときでも、何も言わずに我慢してきた。それなのに先生は、叩け、と言う。

 僕は女性が何を考えているか、全く分からない。女性の気持ちを考えてみても外れた記憶しかなく、けっきょく「違う!」ときれいに打ち砕かれてしまう。人の気持ちになって考えろと言うけれど、何度考えたところで、女性の気持ちは分からない。

men's Pick Up

オリジナルコンテンツ関連トピック