セックス体験談|ライブのあと、広島の夜、彼氏のいる女と…#2

隔たりセックスコラム連載「ライブのあと、広島の夜、彼氏のいる女と…#2」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。ペンネーム「隔たり」は敬愛するMr.Childrenのナンバーより。


隔たりセックスコラム連載「ライブのあと、広島の夜、彼氏のいる女と…#1」 隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも


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※イメージ画像:Getty Imagesより

 部屋に入った瞬間に頭の中に湧き上がったのは「和洋折衷」という言葉だった。

 ソファと大きなテレビが置いてある洋室の部屋と、ベッドが置いてある和室の部屋。ふつう洋室の部屋にベットで和室の部屋にテレビなのでは、と思ったが、たしかに和室にソファを置くのも変だ。ソファ基準で家具の配置が決められたのだろうか。

 広島駅から歩いて約10分のラブホテルの部屋の中、僕は今日出会ったばかりの小夏さんといる。

 東京にあるラブホテルは壁が白くてビジネスホテルのような部屋が多い印象があった。それに比べると、ここはまるで旅館、いや、おばあちゃんの家のようだった。だからか、あまり緊張しない。むしろ安心感があって、セックスの匂いがまったくしない。

 

「ふぅ。疲れた」

 

 小夏さんがソファに座り、被っていたキャップ帽を脱いだ。髪の毛を後ろでひとつ結びしていて、おでこがむき出しになっていた。生え際が少し汗で濡れている。その濡れている感じは艶っぽくもあるが、おでこを出している姿はどこか幼い。大人と子どもが混じり合っているという、不思議な感想を覚えた。

 ライブが終わった後、小夏さんと外で合流した。スタジアムの外には、人がうじゃうじゃといた。前が見えないほど、たくさんの人が多くいた。

 ここから駅に向かうにはバスに乗らなければいけないのだが、そのバス停は近くにひとつしかない。つまり、ここにいる人のほとんどがそのバス停に向かっているということになる。そのせいか、列がぜんぜん前に進まなかった。まるで、土日のディズニーランドの人気アトラクションに並んでいるような気分だった。

 携帯を開くと、すでに22時を過ぎていた。周りの人たちの「これバス乗れるの?」「終電間に合うかな?」という不安そうな声が、ちらほらと聞こえる。

 そんな中、横にいる小夏さんはものすごく浮かれていた。興奮が身体中から放たれていた。楽しそうに、今日のライブの感想を話している。その姿を見ると、終電なんかもうどうでもよくなってくる。もともと終電で帰る気なんてないのだが。

 楽しそうに話している小夏さんを見ながら、僕は先ほどお気に入り登録をした「広島 ラブホテル」の検索ページを思い出す。ああ、このライブの興奮のまま、小夏さんと興奮するセックスができたらいいなと思った。日常からかけ離れた非日常の空間が、妄想を飛躍させていた。

 そうして案の定、僕と小夏さんは終電を逃した。バスに乗れた頃にはもう、小夏さんの終電は無くなってしまっていた。小夏さんは急いで近隣のホテルを探していたが、どこもほとんど満室のようだった。今日は土曜日だから、ホテルは繁忙日だ。空いてるのはどこも高い部屋ばかりだと、小夏さんは満員のバスの中で僕にだけにしか聞こえないようなか弱い声で呟いた。

 

なら、一緒にホテルに泊まりませんか?

 

 そんな誘い言葉が口から出そうな瞬間だった。

 

「隔たりくんは泊まるところ大丈夫?」

 

 小夏さんが不安そうな目でそう聞いてきた。僕のことを心配してくれているのか、それとも助けて欲しいとお願いされているのかわからなかった。僕は「一緒にホテルに泊まりませんか?」という言葉を飲み込み、「実はホテル予約するの忘れちゃって」とおどけてみせた。

 

「駅の近くに満喫とかあったら、そこに泊まろうと思ってて」

 

 そうだよね、と小夏さんは呟いて携帯をいじり始めた。駅前の満喫を探しているのかなと思ったが、ちらりと見えたのはラインのメッセージの画面だった。誰とやりとりしているのだろうか。

 けっきょく行き先も決まらず、ふあふあとしたままバスは駅に着き、とりあえずそのまま電車に乗って広島駅に着いた。改札を出た後、小夏さんは「どうしよう」とそわそわ歩き回っていた。

 

「ねぇ、隔たりくんはどうするの?」

 

 小夏さんが不安そうな顔を見せる。出会ったばかりの時は「美しい」と思った大人の表情も、今は少女のようだった。急に幼さを出してきたそのギャップに、少しドキドキしてしまった。

 僕はどうしたいのだろうか。小夏さんの顔を見る。確かなことは、まだ小夏さんとお別れしたくないということだった。

 僕はずっと隠し持っていた弾を、ここで撃ち放つ。

 

「提案なんですけど」

 

 おそらくもう、僕らに残された選択肢はこれしかない。

 

 

「近くにホテル…というか、ラブホテルがあるみたいなんですけど、そこに泊まるのはどうですか?」

 

 ラブホテル、という言葉を発した瞬間、気のせいか小夏さんの体が一瞬びっくと動いたような気がした。

 

「え、今なんて言った?」

 

 小夏さんの声は少し震えていた。目も泳いでいるように見える。

 

「ラブホテルって言いました」

 

 僕は冷静にそう言った。そして、いまラブホテルに行くことが最善の選択肢であるということを説明する。

 

「ここから歩いて約10分くらいのところにラブホテルがあるみたいで、宿泊でだいたい8000円くらい。ふたりで割れば、ひとり4000円くらいですみます。今空いてるホテルの部屋、安くてもひとり1万超えちゃうじゃないですか。だったら、時間的にも経済的にもラブホテルがいいかなって。どうですか?」

 

 説明を聞いた小夏さんが「確かに」と呟く。

 

「それに」

 

 意識して微笑みを作った。下心を隠すために。そしてラブホテルに行くために。

 

「まだ、小夏さんとライブの話いっぱいしたいなって。だから、早く部屋に入ってゆっくりお話したいです」

 

 この言葉が決め手になり、小夏さんの了承を得て、僕らは今ラブホテルにいるのだった。

 

「隔たりくんはもうお酒飲む?」

 

 小夏さんが袋の中からお酒を取り出し、机の上に置いた。ホテルに入る前にコンビニで買ったやつだ。ライブの話をするならお酒を飲みながらした方が楽しいのではないかと、僕が提案した。

 

「それじゃあ、乾杯!」

 

 レモン味のチューハイ缶で乾杯する。飲むと、炭酸とアルコールの苦味が勢いよく喉を通った。疲れた体に酒はよく染みた。快感だった。

 小夏さんはあまりお酒が強くないと言っていたのだが、僕と同じペースで楽しそうに飲んでいた。そして、楽しそうにライブの感想を話していた。その顔はほんのり赤くなっていた。

 小夏さんとは今日会ったばかりなんだよな、と不思議な気分になった。東京から広島のライブに参加して、そこで知り合った女性と、その夜にラブホテルでお酒を飲んでいるという状況。これだけでも十分な出来事なのだが、やはりここまできたら、と欲望が湧き上がる。

 ちょうどお酒を飲み終えた頃、小夏さんがシャワーを浴びたいと脱衣所に移動した。

 机の上の缶を片付けていると、浴室に入る前の小夏さんに声をかけられた。

 

「のぞいちゃダメだからね」

 

 小夏さんがいたずらに笑う。その表情を見て、この空間を楽しんでくれてるのだと嬉しくなった。なので、僕も同じように笑い返す。

 

「え、のぞこうと思ってたんですけど」

「だめ。のぞいちゃだめだからね」

「でも、ここラブホテルですよ?」

「それは関係ないでしょー」

「関係ありますよ。ラブホテルと言ったら…」

「もー変態!」

「でも、僕らの好きな歌手もけっこう変態アピールしてませんか?」

「まあ、確かに。でも、あの人は特別!」

「その特別な人に憧れてるんで、僕も変態になりたいじゃないですか」

「何言ってるのもう。とりあえず、のぞいちゃだめだからね」

「はあい。じゃあ、テレビでAVでも見てます」

「うんうんうん。それがいいと思う」

 

 ライブの興奮の名残かアルコールの酔いのせいか、「ラブホテル」「AV」という言葉が自然に出てきた。小夏さんがそのワードに対し嫌がるようなそぶりは見せず、むしろ楽しそうに対応してくれたので嬉しかった。しかも「のぞいちゃだめ」と自ら言ってくるなんて、それはのぞいて欲しいというフリなんじゃないか、とドキドキもした。

 浴室からシャワーの音が聞こえる。裸の小夏さんがそこにいる。さて、どうしようか。

 さすがにのぞくのはまずいか、と考える。言葉では冗談のように言えても、いざ行動となるとやっぱり難しい。さすがにここでのぞくのはリスクが大きすぎる。仕掛けるなら、やはり寝る前が安全だろうか。

 そんなことを考えながら、テレビの電源をつけた。さっき小夏さんに言ったことを真実にするためだ。チャンネルをアナログに移動させると、画面には画質の粗いAVが映った。今ではこんな画質の悪いAVなどない。よく昔はこの粗い画像でヌいてたよな、と懐かしい気持ちになった。

 AVを見ていてもつまらなかったのでテレビの電源を消し、携帯を開く。そして、既読をつけていなかった真知子さんからのメッセージを確認した。

 

「隔たりくん、ライブは楽しかった? 今日は広島に泊まるのかな。実は私、今出張で東京にいるの。バタバタしてて言いそびれてた。それにしてもすれ違いだなんてタイミング悪すぎだよね」

 

 浴室からシャワーの音が聞こえる。

 

「そうなんですね。真知子さんに会いたかったです」

 

 裸の小夏さんがそこにいる。

 

「私も隔たりくんに会ってみたかったなあ」

 

 時間はすでに0時を過ぎている。

 

「ひとりで泊まってるんで寂しいです。真知子さんと一緒に居たかったです」

 

 シャワーの音が止まり、ガチャっと浴室のドアが開いた。

 

「ひとりで泊まりは寂しいよね。私もひとりだから、少し寂しい」

 

 ドライヤーの音が鳴る。

 

「寂しいですよね。ちなみに、明日は東京にいるんですか?」

 

 真知子さんから「寂しい」と返ってきて、僕の心は震えた。すぐそこの洗面所に小夏さんがいるというのに、今すぐ真知子さんの寂しさを埋めてあげたいと思ってしまう。

 

「うん。東京にいるよ」

 

 ドライヤーの音が止まった。

 

「明日、会えますか?」

 

 そう送った瞬間、小夏さんが洗面所から出てきた。

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