確認し合いながら、ゆっくりとモノを挿入していく。それは根気のいる作業だった。梨香のことを考えなければ、そのまま奥まで一気に入れることもできただろう。だが、ここにたどり着くまでに僕は梨香と2回デートをした。カラオケで笑っている姿、居酒屋で楽しそうに話している姿が脳裏にチラつき、わずかな情が僕を優しくさせる。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫そう」
「狭いね」
「…ごめんね」
あ、この顔、見たことがある。あれは、2回目のデート。僕が梨香にしゃぶって欲しいと頼んだ時。
罪悪感にまみれたような顔。梨香、今はそんな顔をしなくていい、と思った。狭くてうまく挿入できないことを、申し訳なく思わなくていい。だって僕は梨香を抱きたくてここに来た、セックスが終わった後のことなんか考えていない、答えが出ていない程度の男なんだから。
梨香の純粋さがあらわれた瞬間だった。楽しい時は楽しい、申し訳ない時は申し訳ない。本当に梨香らしいと思った。
「もうすぐ」
「うん…」
モノがアソコの中をかき分けていくのがわかる。僕はもう抑えきれなくなって、勢いよく奥までモノを突き刺した。
「あああぁあああ!」
梨香が叫ぶ。それは快楽に浸っているようにも、痛がっているようにも聞こえた。
「大丈夫?」
「なんとか…大丈夫」
中がこんなに狭いと思わなかった。
「じゃあ、腰振ってみるね」
「うん…」
僕はゆっくり腰を振る。だが、モノが骨に挟まれているように感じて痛い。気持ち良さよりも痛みが勝る。もしかして、あまり濡れていなかったのだろうか。いや、触った時はすごく濡れていたし、たくさん舐めていた時も濡れていたのに。
梨香は目をつぶっていた。それは気持ち良いというよりも、何かを耐えているような表情だった。
このまま腰を振っていて大丈夫なのだろうか。
僕はそんな不安を消したくてキスをした。舌が絡まり合うが、どこかぎこちない。さっきまでしていたあのねっとりとしたキスではない。どうする。
僕が腰を振るたびに、ベットの軋む音がなる。
ミシッ、ミシッ、ミシッ。その音はまるで、不穏な空気をまとった怪物の足音のようだった。
心の中に生まれたわずかな不安が、その音と同じように少しずつ大きくなっていく。
(文=隔たり)