“死体洗い”のアルバイトがあるという話は聞いたことがあるだろうか。
大学の医学部で解剖実習用の死体(献体)をホルマリンのプールに漬けていて、その死体を洗ったり、浮いてくると棒で突いて沈めるというものだ。報酬がとんでもなく高いらしい。都内の大学病院には、年に何度かこの死体洗いに関する問い合わせがあるという。
にわかには信じられない奇妙なアルバイトだが、本当に存在するのだろうか。
闇の高額バイトとして有名なので、話に聞いたことがある人はいるかもしれない。しかし、実際に体験したことがあるという人には会ったことないはずだ。
それもそのはず。
死体洗いなんてバイトは存在しないのだ。というのも日本では死体の取り扱いには「死体解剖保存法」や「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」などで厳しい制限と法理が課されている。素人に管理させ洗わせるなんてことは絶対にありえない。
ではなぜ死体洗いのアルバイト話が出回ったのか。一説には大江健三郎の小説『死者の奢り』が発端だとか、ベトナム戦争時の遺体安置所でそういった仕事があったとか、諸説ある。
さて今回は、この実際には存在しない死体洗いのアルバイトを都市伝説そのままに採用し、エログロホラーとして異色を放ち、鬱ゲーとしても名高い『肢体を洗う』のエロアニメ版を紹介しよう。ピンクパイナップルからリリースされている。
以下があらすじである。
医師を志望する聖治は、とある病院の副院長千草のはからいによって、「死体洗い」のアルバイトをすることになる。千草に性の実験体として弄ばれ、さらに「死体」と接することによる恐怖も手伝って、聖治の精神は徐々にその均衡を失ってゆく。
千草はさらに聖治に淫らな性を強要し、薬物投与を投与していく。
聖治はついに精神崩壊し、聖治に密かに思いをよせていた病院事務職員の美和子を献体と思い込むようになる。崩れた顔面、こぼれ落ちる内臓……膣からあふれ出るホルマリン液。壊れた聖治を救おうと看護師の真魚が暗躍するも、逆に聖治に汚されてしまう。病院内は既に淫らな薬物で侵され、死臭と狂気で満たされていた。
真魚の先輩である悠紀は事態を俯瞰して見ていたが、狂気の宴に終止符を打つべく自身を犠牲にしてその肢体を晒す。しかし欲望のままに聖治に辱められ、メチャクチャに貫かれ、彼女も狂い始めていく。
誰が血なまぐさい性の狂宴を止めることができるのか。聖治の精神は元に戻ることができるのか。狂宴を裏で操っているのは誰なのか――。
エロアニメ版『肢体を洗う』は全3巻構成だが、『肢体を洗う THE ANIMATION ゴールドディスク』として1本にまとまっているバージョンも存在する。物語冒頭や主人公とヒロインたちの関係性こそ原作を踏襲しているものの、ほぼオリジナルストーリーと言ってよい。原作でも話題だったグロテスクな描写については、エロアニメ版のほうが圧倒的に多く、グロ度200%増といったところだ。
主人公・聖治は副院長の千草によって薬物漬けにされることで性玩具になれはてるのだが、彼は生きた女性が腐敗した献体に見えてしまう。その献体の描写が、筋張った肉塊やどろりとした内臓、飛び出た肋骨など実にグロテスクだ。薬物で意識のないヒロインを暴行するシーンがあるのだが、聖治目線だと死姦だったりする。
ヒロインの胸を切除したら、体内からぬいぐるみが出てきたり、昆虫が具材の精液スープがあふれ出てきたり、腹をさばいたら奇怪な蟲が出てきたりと、とにかく狂っている。その狂いっぷりはホラー映画でいうところの『ザ・ギニーピッグ マンホールの中の人魚』や『LSD -ラッキースカイダイアモンド-』に近いかもしれない。
だが一方で、グロに負けずエロシーンは豊富だったりする。ただし、全体を通してもエロシーン自体がグロかったりするので、それで興奮するかどうかは別だ。
かなり人を選ぶエロアニメではあるが、エログロホラー作品としては一級品である。リリース年代的にクラシックな作品になってしまうが、作画も安定しているし鬱アニメが好きな方にはぜひともおすすめしたい隠れた名作である。
(文=穴リスト猫)
【視聴はこちらをクリック!】
『肢体を洗う THE ANIMATION CASE.1 「性死」』
『肢体を洗う THE ANIMATION CASE.2 「性魔」』
『肢体を洗う THE ANIMATION CASE.3 「性薬」』