「もしもし」
「もしもし。梨香です。今ついたんですけど、どこにいますか~?」
緊張している僕をよそに、梨香は友達と話すときのような軽い砕けた口調で電話に出た。跳ねるような明るい高い声で、僕は「いい声をしているな」と反射的に思った。
「改札出てまっすぐいったところにいるよ。梨香さんは?」
メッセージしたての頃、僕は「梨香さん」と呼んでいたのだが、梨香から「タメなので呼び捨てがいい」と言われたので、呼び捨てで呼ぶようになった。会ったときも呼び捨てがいいと、そのとき梨香は言っていた。
「今改札出ました。どこですか~?」
僕は今改札から出てきた人混みをじっと見つめる。その中に、耳に携帯を当てている小柄な女性がいた。梨香だ。
「あ、見つけた」
「え、どこですか?」
僕は手をあげる。
「改札の正面だよ。今ね、手あげてる」
梨香は耳に携帯を当てながらキョロキョロしていた。その姿が可愛らしかった。
「どこ~?」
「まっすぐいったところだよ。そう、そこ! そのまままっすぐ」
そう言うと、キョロキョロしていた梨香が止まった。どうやら僕を見つけたようだ。
「見つけた! 今行きますね!」
梨香が小走りでこちらに近づいてくる。嬉しそうなその足取りに、こちらも嬉しくなった。
白のTシャツにショートパンツ。むき出しになった生足は細くはないが、程よくむっちりとしていた。小走りでこちらに向かうとき、胸が少し揺れていた。梨香は肉感のある抱き心地が良さそうな体つきをしていた。
梨香は僕の目の前に着くと、開口一番「暑いですね」と言って、Tシャツをつまみパタパタとあおいだ。
「暑いね」
「めっちゃ暑いですよ。こんな暑い中待たせちゃってごめんなさい」
「全然大丈夫だよ。俺もさっき着いたばっかだし」
梨香が話しかけてくれるが、僕の視線は梨香の胸元にいってしまう。梨香は想像よりも小柄だった。身長はおそらく150センチもないだろう。僕の身長は170センチくらいなので、20センチ以上も差がある。だから、どうしても梨香を見ようとすると、胸元が目に入ってしまう。
梨香がTシャツをパタパタするたび、チラチラと谷間が見える。そして水色の下着も。
「それじゃあ、カラオケ行きましょうかっ!」
そんな僕の視線に気付くこともなく、梨香は歩き始める。汗をかいているせいか、梨香の背中にTシャツがくっついていた。そのせいで、ブラがくっきりと透けて見えた。この子はもしかしたらけっこう無防備なのかもしれないと、僕の股間は今日の気温のように熱くなった。
カラオケ屋に入ると、涼しい風が一気に体を包み込んだ。横を見ると梨香は嬉しそうな顔をしていた。
「涼し~い」
「ね、涼しいね」
「私暑いの苦手なんですよ」
「そうなんだ」
梨香を見ると、確かに顔に汗が流れていた。梨香はまたTシャツをパタパタさせる。思わず、胸元に目線がいってしまう。谷間が見えたわけではないが、そこに汗ばんだ乳房があると思うとドキドキした。