セックス体験談|女と男の駆け引き#3

隔たりセックスコラム「女と男の駆け引き#3」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。ペンネーム「隔たり」は敬愛するMr.Childrenのナンバーより。

▼これまでの「女と男の駆け引き」▼

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隔たりセックスコラム「女と男の駆け引き#2」 隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。

 目が暗闇にだんだん慣れていくのとは対照的に、僕の心には真っ暗な感情が広がっていく。

 部屋の中にひとり取り残され行き場を失った僕は、とりあえずソファに座った。手を置いたソファの表面にかすかに都さんの体温を感じた気がしたのは、僕が寂しいと思っている証拠だった。

 

都さんはなぜ外に出て行ったのだろう。こんな深夜に。

 

 僕が性的な欲望を向けてしまったのがいけなかったのだろうか。だが、キスは受け入れてくれた。キスは大丈夫だけどそれ以外のことはしたくない、ということならまだ納得ができる。そうだとしても、外に出る必要はないじゃないか。

 そんな怒りにも似たような感情が込み上がってくるが、それはすぐに不安に変わってしまう。都さんは携帯を持って出て行った。もしかしたら、誰かに連絡してるのかもしれない。友達? それとも…警察?

 警察、というワードが反射的に頭の中に出てきて、驚く。もし、都さんが警察に電話をしていたとしたら。襲われました、男が家に入ってきました、だから外に出て逃げました。そう言われてしまっても、不思議ではない状況だ。ということは、もしかしたら都さんは僕をはめるためにわざわざ…?

 最悪な想定が頭の中に広がっていく。僕は電気をつけることもなく、ただただ恐怖に怯えていた。考えれば考えるほど、それが事実だと思えてならない。都さんは今のこの状況を誰かに伝えている。となれば、僕は悪者扱いされているだろう。もう、終わりだ。

 そんな想像を繰り返しているうちに、家に帰りたくなってきた。家に帰って安心してぐっすり眠りたい。ここに居たら恐怖に押しつぶされてしまう。もう帰ろう。いや、逃げよう。そう決心し、僕は散乱した毛布を畳み、ソファの上に置いた。そして、携帯を開いて時間を確認する。

 時刻は深夜2時半。始発の時間を調べると5時半と出た。つまり、始発まで3時間もある。どこか時間を潰せるようなネットカフェみたいな場所はないかと、24時間営業をしてそうなお店を検索にかけたが、望んでいるようなお店は見つからなかった。仕方ない。とりあえず駅に向かって、その後考えようと決める。

 都さんの家を出るのは、正直辛い。僕は都さんに会いたくて仕方がなくて、そしてここにきた。都さんの家の中に入ることができて嬉しかった。キスもできて幸せだった。なのに、こんな深夜に都さんの家を出ることになるなんて。あと、もう少しだったのに。

 深夜に都さんの家を出るなんて、当たり前だが、想像していなかった。こんなことになるくらいなら、今日セックスをした女性と食事に行けばよかったと後悔する。食事に行っていれば、もう一度再会してセックスできたかもしれない。

 その子とのセックスはもう、都さんのインパクトによって薄れてしまっているが、2回セックスをしたということは気持ち良かったのだろう、と他人事のように思う。だが、もう断ってしまった。食事を断った時のその子の不服そうな顔を思い出す。

 もう、その子とはセックスできないだろう。今日、僕はどこから間違ってしまったのだろうか。僕はふたりの女性に嫌な気持ちを与えてしまったのだろうか、と罪悪感に襲われる。

 難しい。僕は女性に喜んで欲しいと思って生きている。セックスをするときは、楽しくセックスをしたいと思っている。なのに――。

 セックスが楽しかったとしても、セックス以外の人間関係が難しい。僕はどうすればよかったのだろうか。いつもセックスをした後、いや、セックスする前も間違った行動をしている気がしてならない。2回セックスした女性も都さんも、僕が何をしたら喜んでくれたのだろうか。2回してしまうほどのセックス、相性のいいキスだけでは喜んでもらえないのだろうか。

 そんな悩みは次第に真っ暗な部屋の中に溶け、消えていく。いくら自分を責めたところで都さんは帰ってこない。むしろ、もし僕の想像が当たっていたとしたら、ここの家に居続けることはさらに自分を追い詰めてしまうことになる。もう、ここにいても何にもならない。都さんとのセックスなんて夢のまた夢だ。僕は諦め、立ち上がる。

 真っ暗な部屋を歩き、玄関で靴を履いた。振り返って都さんの部屋の中を眺める。始めにこの部屋の中を見たときはワクワクと期待で胸が膨らんでいて、大げさに言えばホテルのスイートルームのように輝いて見えた。

 電気がついて明るかった部屋は今は真っ暗で、夜の病院のような静けさを漂わせている。同じ部屋なのに、ひとつの出来事でこんなにも印象が変わるのかと、僕は不思議に思った。

 さあ、家を出よう。そして、都さんが家に帰ってくる前に早く家を出よう。

 意を決して部屋を出ようと鍵を開け、ドアノブに手をかけた時、あることに気がついた。

 

あっ。鍵がない。

 

 僕はドアノブから手を離し、開けたばかりの鍵を閉めた。このまま僕が家を出たら、都さんの家には鍵がかかっていないことになる。それは、危ないことのような気がした。

 もし僕がこのまま鍵を開けっぱなしにして家を出たとしたら、空き巣が入ってしまうかもしれない。そして、その空き巣が何か物を盗んでいったとしたら、それは鍵を閉めなかった僕のせいになる。

 さらに、そこに都さんが帰ってきたとしたら。物が取られていて、居るはずの僕が居ない。その状況を見れば、都さんは僕が何かを盗んで逃げたと思い、警察に連絡するだろう。そしたら僕は…。

 空き巣が入ってくる可能性なんて低いかもしれないが、僕には鍵を開けっぱなしにするまま家を出る勇気はなかった。八方塞がりだった。家にいるのもダメ。外に出るのもダメ。僕にはもう成す術がない。こんなはずじゃなかったのに。

 本当はうまく都さんをセックスへと誘導したかった。ここに来る前に会っていた女性をホテルに誘ってそこから2回のセックスへともっていったように、都さんを誘導したかった。セックスしたいと思わせたかった。

 でも都さんの前では、今までの誘い方は何も通用しなかった。僕はただ餌を待つだけの動物みたいに、都さんからのリアクションを待つことしかできなかった。都さんとの主従関係が無意識のうちに出来上がってしまっていた。都さんはずっと僕に主導権を渡すことはなかった。全て都さんの手の中で僕は踊らされている。

 もう大人しく待つしかないと諦め、僕は部屋に戻り、床に正座した。なぜ正座をしたかは自分でもわからないが、その方が気持ちが落ち着いて楽だった。

 

 少し寒くなった。どんな季節でも夜は寒く感じる。鼻がムズムズしてきたので、僕はティッシュを探した。

 

「あった」

 

 誰もいないのに、つぶやいてみる。寂しさや恐怖を少しでも紛らわすために、これが日常であると思うために。

 

「あれ、ゴミ箱は…と」

 

 鼻をかみ終わったあと、ゴミ箱を探した。ぱっとは見当たらない。電気はつけていないが、暗闇に目が慣れているので、ちゃんと部屋の中が見える。少し部屋の中をうろつくと、ソファとベットの間にゴミ箱があった。

 

「あ、ここか」

 

 ティッシュを捨てようとした時、ゴミ箱に入っていたものに僕は意識を奪われた。

 

「あれ」

 

 気のせいだろうか。僕はゴミ箱の中を覗き込む。

 

「あ、これは…」

 

 僕は恐る恐る手を伸ばす。鼻をかんだと思われるティッシュの下にそれはあった。「0.03」と書かれている、破かれた銀色の四角い袋が。

 

「コンドーム…」

 

 僕が手にしたのは封が空いているコンドームの袋だった。ビリビリと破られており、中には何も入っていない。

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