『A KITE』これほど悲しい殺人者はいただろうか…切ないラストに胸を打たれるハリウッド化エロアニメ

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A KITE/グリーンバニー

 日本が誇るアニメ『機動戦士ガンダム』の実写映画版をストリーミング配信大手Netflixが制作すると発表した。日本発のコンテンツとしては、『攻殻機動隊』も『ゴースト・イン・ザ・シェル』として実写映画化された。

 過去には大人気ゲームの『バイオハザード』や『トゥームレイダー』などが実写化し、成功例がある。つい先月は『モンスターハンター』までもが実写化され、スマッシュヒットを飛ばしている。その一方で、『ドラゴンボール・エボリューション』や『ストリートファイター』のように珍作・怪作になってしまった例も多々あり、実写化の発表がなされる度に賛否両論が湧き起るのが常だ。

 上記で挙げた作品は、観たことやプレイしたことがなくてもどこかで一度は聞いたことがある作品だろう。しかし、比較的最近の2014年に日本アニメがハリウッド映画化されたのを知っているだろうか。それが『カイト/KITE』である。

 『カイト/KITE』は人気アニメーターだった梅津泰臣氏が原作・監督を務めたアニメ『A KITE』を原作にしたものだ。この作品はグリーンバニーよりリリースされたOVAであり、厳密にはエロアニメなのである。

 しかし純粋なエロアニメかというより、「セックスシーンのある」OVAといったほうが近い。世界観は近未来を感じさせる日本で、それこそ『攻殻機動隊』に世界観は近く、内容はすこぶるハードボイルドだ。迫力のある銃撃戦、目を覆いたくなるゴア描写が連発される。その一方で、悲哀と哀愁に満ちたヒューマンドラマの側面も持つ。特にラストシーンは屈指の切なさであり、トラウマともなりうる。個人的には『A KITE』は激しくも切ない仏米映画『LEON』に近い作品と考えている。

 以下あらすじだ。

 女子校生と殺人請負人。まったく別のふたつの顔を持つ美少女、砂羽。

 砂羽は幼い頃、両親を惨殺されるという暗い過去を持っていた。警察でありながらが、彼の裏の顔は殺し屋という赤井のもと、砂羽は赤井の指示に従って日々自身の手を血に染めていた。両親殺しの犯人が赤井と知りつつも。

 そんなある日、砂羽の前に音分利というひとりの青年が現れる。実は彼も赤井の殺人請負人であった。

 砂羽と音分利は急接近し、お互い唯一心を許せる存在となり、プラトニックに惹かれあっていく。

 そこに赤井から砂羽に新しい指示が下された。それは「音分利を始末しろ」というものだった……。

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ヒロインの砂羽。非常にクールな殺人者だ。

 『A KITE』を名作たらしめる要因のひとつに作画クオリティの高さにある。演出もすばらしく、ゴアシーンの血しぶきや血の海の広がかり方など、血液が本来持つ粘り気やドロドロした重みまでも感じさせる。

 世界観もすばらしい。日本が舞台であるものの、アメリカのスラム街のような描写があったり、アジアならではの混沌とした市街が描かれたりすることで、ここは日本でいて日本ではないような無国籍さを感じさせるのだ。それがかえってリアルに日本の未来を暗示しているかのように思えてならない。

 加えて、砂羽や音分利が殺人に使用する特殊な銃が非常に斬新である。その形状もさることながら、弾丸が着弾してから間を空けて爆発するなど、実にクールだ。デザインも『PSYCHO-PASS サイコパス』に登場する「ドミネーター」に引けを取らない。

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『A KITE VOL.2』より

 エロ描写はOVAの各巻ごとにそれなりにシーンは描かれているものの、無くてもストーリー上は全く問題ない。それもあってか、海外版の「インターナショナルバージョン」ではエロシーンは最低限に抑えられている。

 OVA全2巻、約50分という尺の中で、混沌とした世界に身を置く主人公たちの生き様を暴力と切なさで描き、衝撃のラストに向かって静かに収束させていく様は圧巻だ。
(文=穴リスト猫)

【視聴はこちらから!】
■『A KITE VOL.1
■『A KITE VOL.2

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