セックス体験談|女と男の駆け引き#1

隔たりセックスコラム「女と男の駆け引き#1」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。「隔たり」というペンネームは敬愛するMr.Childrenのナンバーより。

 

 「今日の夜なら来てもかまわないわよ」というラインのメッセージを見たのは、セックスをした後だった。

 ラブホテルのソファの上で僕はスマホを見ていた。浴室からシャワーの音が聞こえる。僕は一度顔を上げて浴室の方を向いた。もうすぐ出てきそうな感じがしたので、僕は「ありがとうございます。今から向かいます」と打ち込んで返信をした。

 今浴室でシャワーを浴びている女性とはマッチングアプリで知り合った。アプリ内で何度かやり取りした後、ラインへ移行し、あることがきっかけとなり、僕は勢いでラブホテルに誘った。断られるだろうと思っていたが、女性は簡単に了承してくれた。そして僕らは待ち合わせをし、食事などをとることもなく、すぐにラブホテルに入り、2回セックスをした。

 ガチャっと、浴室の扉が開く音が聞こえたので、慌てて携帯の画面を閉じる。音の方を向くと、女性が体にタオルを巻いて、浴室から出てきたところだった。目が合ったので、僕はにっこりと微笑む。

 

「さっぱりした?」

「うん。さっぱりしたよ」

 

 女性も「ちょっと待ってね」と微笑み、こちらに背中を向けて着替え始めた。タオルが解かれ、背中やお尻が丸見えになっている。もうセックスを終えた後だから、裸を見せることに抵抗がないのだろう。僕はその後ろ姿を眺めながら、さっきまであの体を抱いていたのだなと、ぼんやり思う。気持ち良かったという感覚は残っているのだが、どんなセックスをしたのか、という具体的なことはもう記憶から薄れていた。

 女性が着替え終わった頃、ちょうど時間になったので、僕らはラブホテルを出た。

 

「この後、どうする? ご飯でも食べる?」

 

 女性にそう言われ、僕はスマホで時間を確認する。19時。確かに、ご飯を食べるにはちょうどいい時間だが、僕はさっきラブホテルの中で見た都(みやこ)さんのラインを思い出していた。

 

「ごめん。一緒に食べたいんだけど、この後、予定があって。また今度食べない?」

 

 僕がそう言うと、女性は寂しそうな表情を見せ、「わかった」とだけ呟いた。その声のトーンは暗く、このまま解散になることが不服そうであった。

 ああ、身体目的だと思われちゃったかな…。僕は申し訳ない気持ちになりながらも、振り返れば身体目的と思われても仕方ない行動をしたし、何よりその女性に会った一番の目的は身体だから否定のしようがなかった。頑張れば食事くらい行けるのかもしれないが、今日はしょうがない。僕は今から、都さんに会いに行かなければならないのだ。

 女性を駅まで送り、あっさりと別れた。女性の姿が見えなくなった後、僕は急いでスマホを開いて都さんが住む最寄りの駅までのルートを検索した。

 都さんは千葉に住んでいる。今僕がいる東京の駅から都さんの最寄りまで2時間かかると出た。僕はその旨を都さんにラインで送り、急いで電車に乗った。

 

「わかりました。お待ちしています」

 

 都さんとはマッチングアプリで知り合った。ちなみに、さっきまでセックスをしていた女性と同じアプリである。

 都さんは僕が今までやり取りをしたどの女性とも雰囲気が異なっていた。プロフィール画像やメッセージ、そのどれもが僕には異質に感じられた。

 たいてい、プロフィール画像は自撮りか友達と一緒に撮った写真を切り取ったのが多い。だが都さんのプロフィール画像は、右肩付近しか映っていなかった。どこで撮ったかも、なぜその写真を撮ろうと思ったかも分からないような写真だった。

 オフショルの服を着ていたのか、肩は激しく露出していた。そして何より僕の気を引いたのは、そこにかかっている髪の毛が濡れていたことだった。むき出しの肩に濡れ髪。妖艶でキケンな香りが漂っているように感じ、気付けばすぐにメッセージを送っていた。

 メッセージのやり取りが始まってからも、都さんは僕を魅了した。

 都さんのメッセージの口調は妙に大人っぽかった。その落ち着き様と妖艶なプロフィール画像から、僕は都さんは壇蜜さんのような女性なのではないかと想像した。想像すれば想像するほど都さんのことが気になって仕方がなくなり、僕はすぐに都さんに会いたいと思った。

 なので、僕は思い切って都さんに「会いませんか?」と誘った。すると都さんから、「わたしはあまり外に出ないのよ。ごめんなさいね」と返信が来た。

 外に出ないという断り方に違和感を覚えたが、不思議な魅力を持った都さんらしいなとも思った。ともあれ、僕はどうしても都さんに会いたかった。そうだ、都さんが外に出ないなら、僕が迎えに行けばいい。

 

「だったら僕が家に迎えに行きますよ」

「隔たりくんはどこに住んでるの?」

「東京です!」

「東京なのね。遠いわよ」

 

 家の場所を聞くと、都さんは千葉のとある駅の近くだと教えてくれた。僕はその駅名を聞いたことはなかったが、千葉なら余裕で行ける範囲内だと思い、どれくらいの遠さが調べるわけでもなく、すぐに「余裕です。その駅まで行きます」と送っていた。

 そこから2日、都さんからの返信が途絶えた。待っていたが、既読すらつかない。ああ、都さんに会えないかもしれない。悲しくなった僕はヤケクソで都さんと知り合ったアプリでやり取りをしていた違う女性を誘った。

 気付けば僕は女性とのメッセージの流れを完全に無視して、「ホテルに行かない?」と強引に誘っていた。断られると思っていたが、不思議なことにその女性はあっさりと了承してくれたのだった。

 そして今日その女性とセックスをしたのである。さらに驚くことに、その女性とのセックスが終わった後、都さんからのメッセージが届いたのだった。

※ ※ ※

 電車に揺られながら、都さんを想像する。僕の知っている都さんの見た目の情報は髪の毛と肩だけ。言葉遣いからして、お姉さん系の女性であることは確実に思えた。

 僕が家まで迎えに行きますという話だったのだが、夜来ていいよ、とはどういうことだろう。こんな夜遅くに迎えに行って、行く場所などあるのだろうか。もしかして、都さんの家の中に入れるのかもしれない、と気持ちが高ぶってくる。

 そういうことも期待していいのだろうか。もしそうであれば、さっき2回しなきゃよかったな、と少し後悔する。僕の頭の中は先ほどセックスしたことよりも、都さんとこれからセックスできるかもしれないという期待でいっぱいだった。

 にしてもなぜ、唐突に今、返信をして来たのだろうか。返信の時間帯も僕には疑問だった。

 都さんからメッセージが来るのは、たいてい21時以降だった。それはまるで暗黙のルールのように守られていた。僕は特に深くは考えず、仕事が忙しいのだろう程度に考えていた。だから、僕はいつも21時以降に都さんからメッセージが来るのが楽しみだった。

 しかし、「今日の夜なら来てもかまわないわよ」というメッセージが来ていたのは、18時頃だった。いつも21時以降なのに、今日だけなぜ18時頃に送って来たのだろうか。それに振り返れば、なぜ2日間連絡をくれなかったのだろう。忙しかったのかもしれないが、にしても大丈夫なのが「今日」だなんて唐突すぎる。

 都さんとは何度もやり取りをしたが、僕は彼女がどういう人物かまるでつかめていない。おそらく、都さんの中のミステリアスな要素がそうさせているのだろう。さっきホテルでセックスした女性は、やり取りをしている段階から常に僕に会いたがっているということがメッセージから透けて見えた。

 だが、都さんのメッセージからは何も読み取れない。都さんの感情が全く読めない。都さんはなぜ今日、僕と会おうと思ってくれたのだろうか。

 それでも、僕の心は浮ついていた。何がどうあれ、都さんに会えるのは嬉しい。僕は都さんのことで、頭がいっぱいだった。

 都さんのことばかり考えていたら、あっという間に駅に着いた。

 ホームに降りて改札を出る。聞いたことがない駅だったが、駅前には商業施設があったりと予想以上に栄えていた。

 都さんはここに住んでいるのか。

 スマホを開き「着きました」とメッセージを送る。

 周りを見渡すと、待ち合わせをしているらしき人がチラホラといた。その中に都さんがもういるかもしれない。ドキドキしながら、そこにいる人を眺めてみた。しかし、その中に都さんのイメージ像に合うような人はいなかった。

 スマホを見ると、都さんからの返信が届いていた。

 

「西口の階段を降りて真っ直ぐ歩いて。バス停があるから。目印はコンビニ。そこで待ってて」

 

 都さんはまだ来てないのか。それとも、すでに駅に着いていながら誘導しているのか。

 とりあえず僕は都さんの指示に従い、西口の階段を降りて、そのまま真っ直ぐ歩いた。少し歩くと、都さんの言う通りバス停があり、その近くにコンビニがあった。

 着いたが、近くに都さんらしき人はいない。どこで待っていればいいのかと迷い、僕は何気なくコンビニの方へ向かうと、その時、コンビニから一人の女性が出てきた。その女性は心なしか、ゆっくりと僕の方に近づいて来る。僕は足を止めた。

 その女性は僕の前で止まった。

 

「あ、あの…都さんですか?」

「はい」

「えっと、隔たりです」

「わかるわよ」

「そ、そうですか」

「こっち」

 

 都さんは背を向けて歩き始めた。僕は慌てて後を追う。

 僕は不思議な気分でいた。これが本当に都さんなのだろうか。想像していた姿と全く違って驚いた。

 まず、都さんは身長が小さかった。壇蜜さんのようなすらっとしたスタイルを想像していたが、都さんは真逆のタイプの小さいくて丸っこい、例えるならばクマの人形のような可愛らしいフォルムをしていた。髪の毛も肩にかかるくらいのミディアムで、プロフィール画像の都さんよりも髪がものすごく短くなっている。

 何より驚いたのは、都さんがパジャマのような姿だったことだ。可愛らしいワンピースのように見えなくもないが、ぺらぺらの生地と薄めの色はお世辞にも私服とは言い難かった。

 そしておそらくだが、都さんはすっぴんだった。

 目力のない細い目に、小さな鼻。唇はぽってりとしていて、顔は丸い。頬にそばかすがあって、それがすっぴんであることをより強調していた。

 マッチングアプリで使用している写真と、実際会った時の姿が違うことはよくある。もちろん今の時代は画像なんていくらでも加工できてしまうからそれは当然で、それを踏まえて会うべきなのだろう。

 だが、都さんの画像は全く加工されていないように見えたので、僕の感覚はあっているだろうと思い込んでいた。もちろん顔が出ていたわけではないのだが、それでも、ここまでイメージとかけ離れている見た目をしているとは思わなかった。切り取り方次第で、人のイメージはここまで変えることができるのか。

 おしゃれをして、化粧した状態であれば、プロフィール画像のような雰囲気になるのかもしれない。だがよくよく考えてみると、初めましての時にパジャマですっぴんという格好で会えてしまう異質さは、確かに都さんらしいなとも思った。

 そんなふうに驚いている僕をよそに、都さんはマイペースに歩いていた。後ろから見ると、まるで小さなゆるキャラが歩いているようで、ほっこりする。携帯で時間を確認すると、22時半を過ぎたところだった。

 僕は歩くスピードを速め、都さんの横に並ぶ。横顔を覗いてみたが、都さんは僕のことなんか気にせずに真っ直ぐ前を見て歩いていた。話しかけてもいいのだろうか、と少し迷ったが、無言にも耐えられないので僕は声をかけた。

 

「都さん、もしかしてもう寝るところでしたか?」

 

 都さんがパジャマだったので、僕はそう聞いた。都さんは「ええ」と僕の方を向かずに答える。

 

「だとしたらすみません、こんな夜遅くに」

「かまわないわよ」

「なら、良かったです」

 

 寝る前だったのに、男を家に招く。ということは、泊まってもいいということなのだろうか。

 しかし、都さんからはそんな隙が感じられない。見た目は自分の想像と違かったとはいえ、喋り方や言葉遣いはメッセージのままだ。正直、何を考えているかわからないような、腹の奥底が見えないような雰囲気を醸し出している。このまま都さんの家で1時間少し話をした後に、終電で帰れと言われてしまいそうな雰囲気もある。

 都さんのミステリアスな雰囲気に怯えた僕は声をかけた。

 

「あの…」

「なに?」

 

 こちらを向いた都さんの目線は鋭く、僕は一瞬たじろいでしまった。だが、それは睨んでいるのではなくすっぴんなので目が細いだけだ。僕はそう言い聞かせ、尋ねる。

 

「これは、都さんの家に向かっているんですよね?」

「ええ」

「都さんの家に行っていいんですか?」

「来ないの?」

「あ、いや、行きたいんですけど、時間が遅いので」

「それで?」

「終電もすぐなくなりそうだし、その…今日は都さんの家に泊まってもいいのかなって思って…」

 

 口調ははっきりしているが、都さんの声のトーンは柔らかい。なので、怒られているような気分にはならない。だが、その柔らかい口調で問いかけてくる感じが、余計に都さんの感情を読めなくさせている。

 都さんは足を止め、再びこちらを向いた。僕も足を止め、緊張した面持ちで都さんを見る。都さんの視線は僕を捉えていない。僕の奥底のやましい気持ちを見透かされているのではないかとドキドキしていると、都さんが言った。

 

「着いた」

 

 都さんの視線は僕ではなく、僕の後ろに注がれていた。振り向くと、そこには白色の綺麗なアパートがあった。

 

「えっと…」

「入るわよ」

 

 都さんがアパートの中に入って行く。僕も慌てて都さんの後をついて行った。

 

 ペースがつかめない。さっきからずっとドキドキしている。心が振り回されているような感覚だ。少しだけ都さんとのセックスを期待していたが、今は都さんにミステリアスな雰囲気を感じすぎていて、抱きたい、とかいう性欲的なものは全く感じていなかった。さっき2回セックスしておいて良かったなと、数時間前とは真逆のことを思う。

 都さんの家は1Kの一人暮らし用の部屋だった。部屋が綺麗に整えられていて、都さんの性格を連想させられる。部屋の奥の窓際にベッドがあって、そこを正面に右に小さなソファ、そして左にテレビがあった。壁は白く、家具は木材のタイプで統一されている。まるで新築の家のような綺麗な部屋だった。

 

「そこに座って」

 

 都さんにそう言われ、僕は小さなソファに座る。これから何か始まるのだろうか。そう思わせるような、都さんの言い方だった。僕は大人しくソファに座り、都さんの言葉を待つ。

 しかし都さんは僕に何も話しかけることなく、洗面所に消えて行った。僕はどうすればいいのかわからず、ソファに座りながら都さんの方へと耳を澄ます。おそらくではあるが、都さんは歯磨きをしている。ということは、キスをする前の歯磨きということか?

 僕ははぁーっと自分の手に息を吐き、吸った。おそらく匂いは大丈夫であるだろう。ホッとすると、洗面所から都さんが出てくる音が聞こえた。

 だが、都さんはそのまま部屋に戻るのではなくトイレへと入った。都さんはパジャマを着ていたので、おそらくもうシャワーを浴びているはずだ。でも、トイレに行くということは、セックスする前にもう一度シャワーを浴びるつもりなのだろうか。

 性欲が徐々に湧き上がって来るのを感じる。家に入ってふたりきりになれたことで、僕は都さんの行動はセックスへの準備だと、都合よく解釈し始めていた。

 ソワソワしながら待っていると、トイレの流れる音が聞こえ、都さんが出てきた。都さんは部屋に入った後、僕の前を通り過ぎ、窓際にあるベッドに座った。座ったのだが、都さんはぼーっとしてるだけで、何も言わなかった。僕を誘っているのだろうか。もしかしてトイレに行ったのは、アソコが綺麗かどうかを確認しただけなのかもしれない。となると、僕もベッドに移動したほうがいいのだろうか。

 都さんは何も言わない。それならばと、僕は立ち上がったが、

 

「そこに座ってて」

 

 と都さんに言われてしまった。突然の言葉に立ち上がって歩き始めていた僕は、漂う雲のように行き場をなくしてしまった。

 

「えっと、ソファに座っていればいいんですか?」

「そう」

 

 都さんは変わらないトーンで言う。柔らかな声をしているが、感情は読めない。

 

「わ、わかりました。ソファに座ってます」

「ええ」

 

 僕はソファに戻った。これから何が始まるのだろう。まさか、もうすでに始まっているのか? こういう焦らしプレイなのか?

 そのまま少し、時間が経った。都さんは動かない。

セックス体験談|女と男の駆け引き#1の画像1
※イメージ画像:Getty Imagesより

 どうすればいいのだろう。頭が混乱してくる。ベッドに座っている都さんを無理やり押し倒すこともできるのかもしれないが、彼女の凛と佇む雰囲気に、それができないと悟る。都さんからは押し倒され待ちという雰囲気は微塵も感じない。僕はただ、都さんを見つめることしかできなかった。

 僕はぼんやりと都さんを眺める。すると、都さんが顔を上にあげた。都さんの視線の方を見ると、そこには時計があった。針は23時半を指していた。もうすぐ日付が変わるな。明日は何日だっけ、とどうでもいいことを思う。

 

「じゃあ」

 

 そう言って都さんはベッドから立ち上がり、時計の下にあるテレビの電源をつけた。そして机の上のリモコンを手に取り、立ちながらテレビ画面を操作し始める。いったい、何が始まるのだろう。

 テレビの画面が変わり、映像が流れた。これから何が映るのだろうかと反射的に画面を眺めていると、都さんは部屋の電気を消した。真っ暗な部屋にテレビ画面が浮いて見える。そういえば、暗いところで画面を見ると目が悪くなると親によく怒られていたなと思い出す。今はそれを指摘する人はいない。こういうことを自由に選択できる大人になったのだと、どうでもいいことを実感した。

 都さんがリモコンを置き、僕の隣に座った。距離が近くなり、ドキドキする。僕の意識はあっという間にテレビから都さんの方に持って行かれた。

 横から見ると、先ほどまではあまり意識していなかったが、都さんの胸が目に入った。おそらくEカップくらいだろうか。小柄ながらに大きい。パジャマ越しに膨らんだ胸は、テレビのライトによっていやらしく照らされていた。

 都さんがゆっくりとこちらを振り向く。僕は慌てて胸から視線を逸らし、反射的に都さんの顔を見た。すっぴんだ、と改めて思った。そのすっぴんの表情はどこか無防備で、僕の男心を刺激する。

 

「映画見るわよ」

 

 ぽってりとした唇を開き、都さんはそう言った。その唇を猛烈にキスで塞ぎたくなったが、都さんに隙はない。しかし、夜ということ、そしてこの空間には二人しかいないということ、そして真っ暗だということが、都さんに触れたいという気持ちを増していく。

 

「わかりました」

 

 そう言って、僕はテレビ画面を見た。そこには名前の聞いたことのある、有名な洋画が流れていた。僕が見たことないやつだ。気になっていた映画だが、今はどうでもいい。都さんがなぜ映画を見ようと思ったがわからないが、僕の意識はもう隣の都さんにしか向いていない。

 手を伸ばせば触れられる距離にいる。タイムリミットはおそらくこの映画が終わるまで。この映画が終わるまでに、都さんとそういう雰囲気に持っていきたい。セックスを始めたい。

 男女の駆け引きが今、始まる。(続く――)

(文=隔たり)

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