美しい花には棘がある――。誰もが備える多面性を表現したこの言葉。特に男を惑わす美女には危険な一面がある、という男の自戒的な意味を表しているわけだが…。勝手に舞い上がって棘が刺さってしまうのは男のせいとも言える。美女には美女の悩みがあるものだ。AV女優・美咲かんなも悩み多き美女のようで…。美しくもどこか陰のある彼女が、素直な気持ちをふしだらに綴る。
美咲かんなエッセイ:ふしだらな気持ち「性欲について本気出して考えてみた」
世の中は相変わらず某感染症が猛威を振るっており、日々不安と闘いながら生活している。自分の健康面に関してはもちろんだが、感染症というのは「自分さえよければ」が通用しない。人と関わることは元々少なく、帰属意識というのも強い方ではないが、こんなことで社会との繋がりを感じてしまうとは実に皮肉だ。
収束したらどんな風に過ごそう…と、希望をもちながら耐え忍んでいる人たちも多いことだろう。先の見えないトンネルの中で想像を巡らせては、あれもしたいこれもしたいとブルーハーツ状態になっている人々…私もそのひとりなのだ。
人間の欲求の話をする場合、三大欲求といわれる「食欲」「睡眠欲」「性欲」の3つがよく挙げられる。勘違いしている人もいるかもしれないが、三大欲求と生理的欲求はイコールではない。生命を維持するために満たすべき生理的欲求は多く、食事や睡眠の他にも適切な排泄や衛生管理など、挙げればキリがないほどだ。全ての人が同じ感覚ではなく、欲求の強さやバランス、解消の方法は人によって全く異なると思う。
例えば性欲について考えてみよう。性交渉をしたいという欲が強い人もいれば、自慰でないと欲求が解消されづらいという人もいるだろう。また、性の対象には触れず、射精や絶頂を伴わずとも満足できるという人も存在するのではないだろうか。性欲は三大欲求の中で1番生命維持と遠いように思えるが、バラエティの豊かさならダントツではなかろうか。
この仕事を始める前はSNSというものを利用していなかったため、見ず知らずの人の意見を見聞きするという機会はあまりなかった。良くも悪くもいろんな意見が目に飛び込んでくるので、新しい発見もあれば心を痛めることもある。そんなSNSでたまに見かける「アダルト業界で働く女性を救おう」とか「AVは害だ」という論には本当に驚かされる。
AVが害だとか不必要なものだとするなら、映画やドラマ、テレビ番組など映像作品は全てそうではないだろうか。
盗みや殺人を取り扱う映像作品を観て「真似しよう!」と思う人がいない(実際は少数存在するのかもしれないが)のに、AVは女性への暴力や差別を助長していると決めつけてしまうのはあまりにも短絡的な気がする。
十数年前は同じような攻撃の矛先がテレビゲームに向いていて、人格形成に与える影響を根拠もないまま危惧していた人も少なくはなかった。アニメが白い目で見られていた時期もあった。人格形成に関して問題視しているわけではないだろうが…令和の時代でもテレビゲームのプレイ時間を厳しく取り締まろうとするところもあるらしいですわよ、奥さん。
さて、AVや風俗などアダルト業界というものがこの世からごっそり消えてしまったら、性的な欲求をどう解消すればよいのか。見て楽しめるセクシーな映像作品もなければ、物理で癒してくれるお兄さんお姉さんもいない、そんな世の中を想像したことがあるだろうか。
性的な欲求が湧かなくなるくらい仕事やスポーツ、勉学に励めばよいのか。もちろん心身共に余裕がないとか、元々性的な欲求が強くない人もいる。そのような例を除いて、日常的に性欲を感じる人が性欲を感じなくなるまで追い込むことが健全とはとても思えない。
極論、肉体だけの面なら「去勢」することもできるだろう。それによって変化はあるだろうが、完全に精神面や欲求までコントロールするのは難しいのではないか。行き場を失った性欲がどんな問題を引き起こす可能性があるか、真剣に一度考えてみてほしい。批判するのは自由だが、欲求の解消について自分以外の多くの人の意見を聞いた上での結論なのかどうか、話を聞いてみたい。
とはいえ「人類の健全な暮らしを守るため!」なんて大義名分を振りかざす気はないし、「アダルト業界がよりポピュラーになればいい」なんてことも思ってはいない。アダルト業界はアンダーグラウンドなくらいが丁度いい。もっと表立って他の芸能と同じくらい目立つ業界だったら働きたいと思わなかったかもしれない。
ただ、多くの人に知られていない秘密めいた部分が、望まない仕事をさせられてしまうなどの被害に繋がってはいけないと思う。声を上げて助けるべきはそういう被害者であり、純粋に頑張っている業界の人を頭から否定するのとはまた別問題だ。実際業界にも色んな人がいる。付き合う人は自分の目で見て頭で考え選ぶべきだが、それは他の業界や世の中全てに共通していえることだ。
ちなみに私は「性」の部分に関しては「シチュエーション」と「相手」を重視する派である。なんて、そんなことはどうでもいいか。食欲も睡眠欲も性欲もどれもこだわってしまう我儘レディなので、生きづらいし、人生一筋縄ではいかない。でもそんな自分を少しずつ受け入れられるようになってきた今日この頃。あれもしたいこれもしたいと液晶を眺めては欲望にまみれ、今夜も眠りにつくのだ。
美咲かんな
【美咲かんな】
生年月日:1994年7月3日
スリーサイズ:T158・B85・W58・H88(cm)
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美しい花には棘がある――。誰もが備える多面性を表現したこの言葉。特に男を惑わす美女には危険な一面がある、という男の自戒的な意味を表しているわけだが…。勝手に舞い上がって棘が刺さってしまうのは男のせいとも言える。美女は美女で悩むことも多いのだ。AV女優・美咲かんなも悩み多き美女のようで…。美しくもどこか陰のある彼女が、素直な気持ちをふしだらに綴る。
6月某日、私は第3回目のエッセイの内容をどうするか悩んでいた。連載が始まってひと月も経たないというのに、既にスランプ気味である。どうにか絞り出した文章を打っては消し打っては消し、思い悩んでいると突然テレビから「うどんは青春の味」という力強い言葉が聞こえてきた。
気温が30度を超える日も多くなった東京は、いよいよ夏本番という雰囲気である。外出自粛もまだ心掛けてはいるが、仕事で外に出る機会は増えた。プライベートでは家族で出かけることがほとんどで車移動も多いが、時間の管理と駐車場に困らないという理由から仕事や用事で動く場合は公共交通機関を主に利用する。以前は環境問題の観点からか「公共交通機関を使いましょう」という呼びかけをよく耳にした気がするが、最近は感染症対策もあって、真逆の風潮である。