「あれ、なに?」
そう俺が聞くと、
「気になる? もしかして入りたいの?」
とニヤニヤしながら彼女が言ってきた。
このとき俺は、恵の意味深な笑みのワケに気づいた。しかし、わからないフリをして、「あの建物なんなの? 行ってみたい」と言う。すぐに「ラブホに違いない」と思ったが、あえてそれを言わずに、あわよくば恵と一緒に入れないかと考えたのだ。
ちなみに、恵は俺に好意を持っていたと思う。それがあったので、「ラブホへ行けるかも」と思ったのだ。
予想外だったのは、恵が、
「じゃあ行こう!」
とすんなりラブホ行きを決めたこと。俺は行き先を知らない子供のように質問攻めをしながら、彼女について行った。
入り口に着いたところで、「もしかしてホテル?」と聞く。すると彼女は、
「正解!」
と笑って、すぐにフロントへ。そして、「この部屋がいいかな」とギリシャ風の内装だという部屋に決め、チャックインした。