新大久保の大久保通りでは、韓国系やイスラム系の雑貨屋で、連日マスクが大量に売られていた。4月初めは50枚3800円もしくは3500円で、人だかりや行列ができるほど売れていた。次第に雑貨屋だけでなく、飲食店やホテルまで店頭でマスクを売り始めた。大久保通りでは、「歩けばマスク販売に当たる」ほど、あちこちでマスクが乱売されていた。大久保通りは「マスク通り」と化していた。毎日見ていると次第に見飽きてしまうほどであった。
新大久保のマスクは5月に入ると値崩れを起こしはじめ、50枚が3000円、そして2500円に。次第に2000円、1500円となり、6月末現在は最安で850円まで値下がりしている。まだまだ値崩れが続きそうな勢いである。
GW開けの5月7日から、徐々に店が営業を再開しはじめた。歌舞伎町の風俗店も同様で、ヘルスやソープが営業を再開していた。ピンサロの中には入口の扉を開けっ放しにして換気をしながら営業したり、期間限定で半額割引を実施している店もあった。
新宿駅南口の老舗ヘルスは「平日限定、朝9時開始、先着5名様まで、40分7000円」という先着割引を実施していた。歌舞伎町の老舗ヘルスは、激安のオナクラコースを作って、1500円というのぼりを上げていた。どこも集客に必死であった。
6月に入ると、ストリップ劇場が営業を再開。老舗のソープやピンサロも復活し、街に賑わいが戻ってきた。大型のガールズバーや案内所も再開。外国人観光客の姿も見えはじめ、現在、歌舞伎町はコロナ前のように回復しつつある。
緊急事態宣言中の歌舞伎町を取材していたとき、ふと東日本大震災の時を思い出した。あの時もソープが休業した。ネオンが消えて、夜の街は薄暗くなっていた。しかしまだ活気は残っていた。
今回は人の姿が全くなかった。歩いていて怖くなるくらいであった。休業していた風俗店やストリップ劇場を見て、営業が再開したら絶対に行こうと思った。普段当たり前のように思っていたことが、実はこんなに価値にあることだったと、改めて思った。
「平凡な日常の素晴らしさ」「平和な生活の尊さ」は、失ってみないと分からない。コロナ禍の日々に、このことをつくづく実感させられた。そして、これからも現場記者として、定期的に取材に出て、新宿の街をウォッチしていこうと思った。20年近く住んでいるこの街の定点観測を続けていこうと、胸に誓ったのであった。
(取材・文=生駒明)
【生駒明(いこま・あきら)】
『俺の旅』元編集長。徹底した現場取材をモットーとし、全国の歓楽街を完全踏破。現在はフリーの編集記者として活動中。さまざまな雑誌やウェブサイト、ツイッター等で『俺の旅』を継続している。ペンネームはイコマ師匠。公式Twitterはコチラ