「こんにちは。メールありがとうございました。私でよかったら、仲良くしてくださいね。一度お会いしてお酒とかも一緒に楽しめたら嬉しいです」
「ありがとうございます。大人の関係でのおつきあいで大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。でもケイコさんがどんな方かもう少しわかると嬉しいんですが…」
「クラブのスタッフをしていて、ちょっと派手めな雰囲気なんですが、いたって真面目です。身長は163センチで痩せてます。容姿性格等は問題ないと思います。同年代の男性には興味がなくって、年上の方とお話をしたかったので、たけしさんに声をかけさせてもらいました。お酒を飲むのが好きなので、よかったら昼飲みとかにも付き合ってもらえると嬉しいです」
相変わらず写真はもらえなかったが、クラブで働いているという女性とは会ったことがなかったので、ちょっと話をしてみたいなあと思い、
「それだったら、昼飲みして、その流れでエッチしませんか? あるいはエッチしてから飲みに行くとか?」
と送ってみた。
すぐにケイコから、「どっちでもいいですよ、楽しそう」と返信が来た。
お酒を飲みすぎると感度が鈍ってモノが勃ちにくくなるのと眠くなってしまうので、セックスの前はあまり酔っ払わないようにしている。なので、先に会ってエッチしようと提案してみた。
「じゃあ、ホテルでちょっと飲んでエッチを楽しんでから、飲みに行きましょう」
とケイコ。
よっぽど飲みたいんだ、とおかしくなったが、まあ業者が釣っているんだったら、こんな風に飲みに行きたいとは言わないだろうなと思い、仕事や忘年会、他の女性たちとのデートのスケジュールを調整してケイコと会うことにした。
お互いに会うのに便利かつ飲み屋がたくさんあるということで、新宿の歌舞伎町の入り口にあるドンキホーテで待ち合わせをした。まだ夕方早い時間だったが、12月ということもあって日は落ちかけていて、歌舞伎町にはどんどん人が流れ込み、にぎやかになっていた。
写真をもらっていなかったので、派手めというのがどんな感じなのか不安ではあったが、まあとりあえず会ってみようと、ケイコを待った。
待ち合わせ時間ちょうどくらいになって、背の高いきれいな女性が声をかけてきた。茶髪がきれいにカールしていて、カラーコンタクトで目はぱっちりとしていてまつ毛は長く小顔。パッと見は「女性がなりたい顔ランキング」でいつも1位を獲得している美人女優か、最近人気のビキニ姿でセクシーなダンスを披露する”ビキニダンサー集団”に所属していそうな、スレンダーで派手めなギャル系の美人だった。ぽってりとした唇に濃いルージュで、真冬にもかかわらずきれいに日焼けしていた。歌舞伎町に入るところで待ち合わせをしていたこともあって、一瞬キャバクラの呼び込みに声をかけられたのかと勘違いしてしまったほどだ。
「たけしさんですか?」
灰色の質のよいコートに赤いマフラー。小さなバッグを肩からかけ、高いヒールのパンプスを履いていたので、聞いていた身長よりもずっと長身に感じた。
「ケイコさん?」
私はちょっといぶかしみながら聞いた。
「プロフィール写真通りなんですね。すぐにわかりました」
「うん。こういう出会い系サイトで会うのは女性の方が不安だろうから、なるべく正直に書こうと思ってるんだよねぇ」
「よかったです。会えるかちょっと不安だったんですよ。あたし、写真を送ってなかったから、本当に来てくれるのかなあって」
「いやいや、それはこっちの方だよ。こんなにキレイな女性に声をかけられて、ビックリしちゃった」
「えー、お世辞でも嬉しい」
お世辞ではなかった。歌舞伎町に行けば、ちょっと派手めな化粧をした女性がキャバクラや風俗店で大勢働いていて、男に財布を開かせようと虎視眈々としているが、そういう男心を誘う女性たちと比べてもケイコはピカイチだった。
「歌舞伎町って来たことなかったから、なんだかすごいところでビックリしちゃった」
「えっ、初めてだった? こんな所の待ち合わせでごめんね」
「ううん、いつもバイトの後はすぐに家に帰っちゃうから」
「そうなんだ」
「にぎやかなところに来れて、なんか楽しい」
服装や容姿から判断すべきではないのはわかっているが、なんだか意外だった。
「立ち話もなんだから、行こうか。最初にお店でちょっと飲んでもいいよ」
「せっかくだから、コンビニでお酒を買って、ホテルで話しませんか? そのほうがゆっくりできそうだし」
私としては願ったりだったが、歌舞伎町の裏道を通ってホテルに向かう途中も、急に男が出てきてぼったくり店に連れ込まれたりする美人局なんじゃないかとビクビクしていた。それくらいの美人だったのだ。
だが、そんな不安をよそに、ケイコは近くのコンビニに寄って、缶チューハイ2本とビールとおつまみを取り、私が支払うと「どうもありがとう」と丁寧に礼を言った。