実はこの取材の日は、長らく続いていた新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が終了して間もない週末で、やたらと接触するのは憚られる雰囲気。であるにもかかわらずだ…。
言いたい文句をグッと抑え、チップ制の清潔なトイレに入り、洗面台で肘から指先まで入念に洗い流した。
普段よりひと気の少ないニュー新橋ビルを後にして、SL広場の向こう側にある飲屋街路地に移動すると、少し先の裏路地にも1軒の店舗型ヘルスの看板が煌めいている。
この辺りにはカラオケ店やパチンコ屋もある。パチンコ屋は営業中だが、カラオケは営業しているところ、閉店のところまちまちな状況。土曜日だが、さすがに昼から居酒屋はやってないだろうと思ったら、西口商店街奥の路地では、浅草のホッピー通りよろしく、テーブルと椅子を出してハミ出し営業しているのだった。
休憩がてらそこで1杯飲んでいるときに思い出したのは、10年以上前に、一度だけ入ったことのある西口のオカマバーだった。噂では、人妻系との出会いがあると聞いて入った店だった。
結果的には確かにエロい人妻がいて、パンツの中に手を入れてシコってはくれたのだが、問題はオカマのマスター。飲み放題のはずなのに、3杯くらい飲んだら急に当たりが強くなり、「早く帰れ」的な雰囲気になってきたので、アタマにきて店を出てしまったのだった。
そんな店なので、もうないかと思って行ってみたら、ちゃんと看板がかかっている。意外にファンは多いようだ。
西口に並ぶキャバクラは、看板に「臨時休業」の張り紙がある店もあれば、そろそろ開店の準備を始める店もありと様々。ピンサロのネオンはチカチカきらめいていた。
次に向かったのは、港区で最もきらびやかな街・六本木。以前はSM色の濃い街だったが、今はどうなのか?
20年ほど前の六本木には、SMクラブやSMパブが複数あり、ショーウインドーに堂々とSMグッズが飾られている店もあった。有名なパブの常連には、大企業のトップたちが名を連ねていたものだ。
六本木にSM愛好家が集まる理由をパブのママに聞いたことがある。するとママは、
「有名なあのラブホテルがあるからよ」
そう、教えてくれた。「あのラブホ」とは、X十字架にギロチン、サスペンション、檻などの設備のほかに、ムチやアイマスク、ロープなどの備品がひととおり取り揃っている『アルファイン』のこと。だが、果たして人が先かホテルが先なのか?
筆者の想像では、六本木周辺位には外国の在日大使館が多いことから、その辺りから西洋文明であるSMが流出したのではないかと考えるのだが…。
ウインドウにSMグッズが並ぶパブは無くなってしまったが、風俗店は1軒だけ残っていた。アマンドの裏あたりにあるのは、SMクラブではなく、20代の女の子がいる普通のファッションヘルスだ。以前、六本木にはもう1軒ファッションヘルスがあったが、いつのまにか閉店してしまったようだ。