隔たりセックスコラム「アプリで出会った読者モデルとエッチ」
隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにて連載コラム「セックス物語」を寄稿中。「隔たり」というペンネームは敬愛するMr.Childrenのナンバーより。 |
※これまでのリアル童貞卒業物語:第1章/第2章/第3章/第4章
「へえ~。隔たりの家ってこんな感じなんだね」
平日の昼間。僕は学校をサボって家にいる。
昨日の朝まで、この部屋には、付き合っている彼女がいた。しかし、いま目の前にいるのは、彼女でもなんでもない関係の女の子、玲だ。
「あんまり物色しないでね。恥ずかしいから」
付き合ってない女の子を家に呼ぶのは初めてだった。
「はーい。とりあえず立ってるのもあれだから、ここに座るね」
玲はソファに座る。そこは昨日まで彼女が座っていた場所。自分で意図して作った状況とはいえ、頭がついていかない。
「なんで隔たりはずっと立ってるの?」
と玲が笑う。
「あぁ。玲に見惚れてた」
嘘つけ、と玲が再び笑う。確かに嘘なのだが、その通り、とは言わない。
「男の人の家って初めてきた」
玲はこの状況を楽しんでいる。その純粋さに、僕は心を痛めた。
僕は彼女と付き合う前、玲とキスをした。胸を触り、アソコに指を入れた。
僕と玲は「彼氏」「彼女」という特別な関係ではない。けれども、付き合ってないのにそこまでしたということは、ある意味特別な関係なのかもしれない。
「あれ、彼氏の家とか行ったことないの?」
「うん、ないかな」
「へー。そうなんだ」
「だから、ちょっと緊張してる」
「え、そんな緊張することないでしょ」
「するよー」
「俺の家なのに?」
「隔たりの家だから緊張してるんだよ」
玲の言葉にドキッとする。この曖昧な関係に、しっかりと輪郭を与えてしまうような発言。僕にとって、それが1番怖いことだった。
玲は僕との関係をどう思っているのだろうか。キスはしたが、付き合ってはいない。付き合っていないが、家には上がる。この曖昧な関係を、玲はどう捉えているのだろうか。
僕はこの関係を曖昧なままにしておきたい。なぜなら、僕には彼女がいる。今日玲に会ったのは、彼女とうまくセックスするための練習をしたいと思ったからだ。僕にとって玲は、そのための存在でしかない。
「隔たりはさ」
玲の声のトーンがひとつ落ちる。何か言いづらいことを言われるような雰囲気を感じた。
前に会った時、僕は玲に「好きだよ」と言った。そう言えばキスをできると思ったから、言っただけだった。特に深い意味はない。
僕の言った「好きだよ」について、玲は深く追求してこなかった。その日からもう、約1年近く経っている。
もし、玲がその言葉を覚えていたとしたら。この曖昧な関係をハッキリさせたいと思っていたら。僕はなんて答えればいいのかわからない。
だから、言わせてはダメだ。言われてしまったら、罪悪感に押し潰されてしまう。
「玲」
この曖昧な関係は後に僕を苦しめるだろう。だからといって、もう戻ることはできない。もう、踏み出してはいけない場所に足を踏み入れてしまっているのだ。そして踏み入れた途端、どんどんと沈んでいってしまっていることにも気付いている。
結果はどうなるかわからない。それでも自分の欲求に従って、進まなければならない。
「私のことを…」
玲の口をキスでふさぐ。彼女の唇は今日も渇いていた。
キスで互いの相性が分かるというのなら、僕と玲の相性は良くない。いや、最悪と言っていいのかもしれない。玲とのキスはぎこちなくて、イライラしてくる。
でもなぜだろう。僕の下半身は熱くなり、大きくなっている。不思議だった。気持ち良くないキスでも、僕のモノは反応してしまう。
おそらく、キスが僕を気持ち良くさせるのではない。キスをしているから、興奮するわけでもないのだろう。
キスをしていると思うから、気持ち良く感じるし、興奮するのだ。
舌で強引に玲の口を開け、中にねじこむ。イライラを解消するかのように、玲の口内をかき回した。
玲の舌は硬く佇んだままで、僕の舌には絡まない。舌が当たっても密着度は薄く、舌と舌の間には空気を感じる。隙間なく絡まり合ったねっとりとしたキスではない。呼吸の合わないダンスのように、ただ舌と舌がぎこちなくぶつかるだけだった。
ふと、彼女とのキスが好きだ、と思った。
彼女とのキスは、ねっとりとした密着度の高いキスだった。彼女とのキスだったら、何時間でもしていられる。
対して、玲とのキスは苦痛だ。工夫しても、いっこうに良くなる気配がない。他の女とキスをすることで、彼女との相性の良さを知るなんて、なんて皮肉なことなのだろう。
口を離して玲の顔をみる。玲は目をつぶっていた。キスをするときに、ちゃんと目を瞑るタイプなのだろう。中身は純粋で愛おしいが、それは体の相性とは別のようだ。
顔を見ても、彼女の方がかわいい、と思った。いったい、自分は何をしているのだろう。キスも顔も彼女の方が断然良いではないか。
しかし、玲のアソコには、俺の指が入る。
たったそのひとつのことが、僕にとっては大事なのだ。
彼女とラブホに行った時、アソコに指を入れようとしてみた。だが、全く入らなかった。
玲のアソコには簡単に入ったのにと、僕は本当に驚いた。簡単に入ったからこそ、彼女のアソコにも簡単に入ると思っていた。
玲のアソコにすんなり入ったあまり、僕はどうすれば指が入るかということを全く考えていなかった。指が入るほどの穴が、女性のアソコにあるのだと勘違いしていた。僕は自分の考えが間違っていることに気づかず、入らない指を、無理やり彼女の中に入れようとしてしまった。
「痛い?」
「ちょっと痛いかも…」
「痛い?」と優しい雰囲気は出したけど、彼女が痛いからといって、僕にはどうすれば分からなかった。
「もう少し入れてみるね」
「…痛い」
けっきょく指が入ることはなかった。
玲のアソコに入ったのに、彼女のアソコには入らなかった。僕にはそれが、不思議で不思議でたまらなかった。
その謎を知りたい。
だからいま、玲に会っている。彼女とセックスするための、練習として。
「玲」
そう呼ぶと、玲は目を開けた。小動物のようなクリクリした目。その目からは、玲が喜んでいるのかどうかはわからない。
「玲、好きだよ」
玲に問われてしまう前に、自分から「好き」と言う。そうすれば、自分の中の「好き」の意味を決めることができる。
この「好き」には、「練習させてね」という価値しかない。
玲の顔が明るくなった。玲は「好き」と言うと素直に喜ぶ。喜ぶと知ってるから、喜ばせれば思い通りに事が進むから、僕は言ってしまう。
キスをすると、玲は再び目を瞑った。
キスの相性は良くなくても、目の前にキスをして良い権利があるのならば、する。純粋にキスをすることは楽しい。少しづつ相性が良くなるといいなという願望を少しだけ抱きながら、キスを続ける。
「玲、触るよ」
そう言って、玲の胸に手を当てる。口はキスで塞ぎ、回答はさせない。そのキスを受け入れたことを、玲が肯定したという風に勝手に捉える。
玲の胸は僕の彼女よりも少し大きい。柔らかい感触が、手に伝わってくる。円を描くようにしながら、大きく玲の胸を揉んだ。
「あっ…あっ」
玲が口を離して、下を向き、声を漏らす。目を開けると、今度は自分からキスをし始めた。
玲の感じる姿はとてもエロく、僕の心を刺激した。そして、玲からキスを求めてきた瞬間は、たまらなく興奮した。
やはり、キス自体が興奮するものではない。キスを求められるから、興奮してしまうのだ。そのキスが良い悪いに限らず。
胸を触っていた手を、下におろす。スカートの中に手を忍びこませ、下着の上から触る。玲は何も、抵抗しない。
スカートを履いてきたということは、触られたかったということなのだろうか。
都合よく解釈し、ふくらみを指で押す。
粘着質の液体が指先につく。
もう一度指を当て、下着をなぞる。
下着が、玲の愛液でどんどん湿っていく。
玲は特に反応しない。
もう少し強く押し当てながら、小刻みに動かす。
下着を割れ目の中に食い込ませる。
ぐしょっ、という感覚が指先に伝わる。
すごい。
彼女とは全く違う。
渇いた彼女のアソコとは、全く違う。
「…ダメ…」
指を止める。
玲はそれでも動かない。体をズラすなり、僕の手を押さえたりもしない。
僕は指をズラし、下着の横から中に指を入れる。
温かい。
それでも玲は、何も動かない。
そのまま割れ目に沿うように指を動かす。
玲の愛液が、アソコ全体に広がっていく。
まるで、キャンパス全体に絵の具を塗っているようだ。
指先に、穴の入口が当たった。僕は玲の顔を見る。玲は、スカートの中に忍び込んでいる僕の腕を、ただ見ていただけだった。
前回会った時、玲のこの雰囲気が怖くて仕方がなかった。何を考えているか分からず、見下されるように感じて、その日はやめてしまった。
しかし、今日は何も感じない。怖さや見下されている感覚もない。
前回と違うのは、今は僕に彼女がいるということ。
彼女がいるという事実が、恐怖から解放してくれているのだろうか。
人が浮気に手を出してしまうのは、もしかしたら、恋人がいるという安心感があるからかもしれない。
目の前の女性に拒絶されたとしても、受け入れてくれる彼女がいる。
そういった思考で、恋人を失うというリスクではなく、むしろ、その状況を「安心」と錯覚してしまうのかもしれない。
恋人を失うことには、恐怖が付きまとう。しかしそれは、恋人が目の前にいるときだけだ。
恋人が目の前にいないとき、そして、目の前にいるのが浮気相手の場合、「恋人」という存在は浮気失敗の保険になってしまう。
玲に嫌われたって、僕には彼女がいる。
その安心感が、皮肉なことに、僕に勇気を与えてくれたのだ。
指をゆっくりと、玲のアソコへ入れていく。今日はもう、いけるところまでいくつもりだ。
僕の指はすっぽりと、玲のアソコの中へ飲み込まれてしまった。温かさを感じるが、はじめて入れたときのような感動はない。今日は、その先へいく。
指先を小刻みに動かす。玲は反応しない。
次に指を手前に曲げてみる。すると、指先にブツブツしたものが当たった。Gスポットだ。
ブツブツを指先で撫でてみる。玲の反応は、何もない。今度は強く押してみる。
「あっ」
玲は体を縮こませるように反応した。これが気持ち良いのかもしれない。僕はその動作をひたすら繰り返す。
「あっ」
喘ぎ声とはまではいかない。だが、玲が反応を見せてくれたことは、純粋に嬉しかった。
玲にキスをしながら、思うがままに指を動かしていく。エロいことをしているという状況が脳を狂わせていく。
「玲、触って」
玲の手を取り、自分の股間にもっていく。玲はズボンの上から優しく撫でてくれた。
耐えられなくなった僕は指を引き抜き、ズボンを脱ぐ。そしてパンツの上から、玲に触らせた。
「直接触ってくれる?」
こくり、と玲がうなずく。
僕は玲にキスをしながら、自分のパンツを脱いだ。そして、モノを握らせる。手は冷たかった。
玲は手を上下に動かす。ぎこちない動きだけれど、気持ち良いのには変わらない。触られているというだけで、ものすごく嬉しくなった。
彼女の手コキとは違う。その新鮮さに、より興奮が増す。
僕はソファから立ち、玲の前に立った。
「舐めてほしい」
「いいよ」
玲は躊躇することなく、モノを口に含んだ。躊躇わなかったのは、とても意外だった。
僕は玲のことを「受け身」の女の子だと思っていた。玲はキスなどは受け入れるだけで、自分からは動かない。僕の言いなりになってしまう。だから自分から積極的にしゃぶりついたのは、とても意外だった。
しかし、冷静に考えれば、これは僕がお願いしたことでもある。玲自身が積極的に舐めているように見えて、これも受け身ゆえの行動なのかもしれない。
「もっと唾出して、くわえながら舐めまわしてほしい」
玲は僕の言葉を素直に聞き、口に含みながらねっとりと舐めまわしてくる。彼女にお願いできなかったことが、玲には素直にお願いできてしまう。
彼女に伝えられない理由は、僕は自分の欲求を相手にぶつけることはエゴなんじゃないかと思っているからだ。彼女の意見を尊重することが大事だ、フェラしてくれるだけで嬉しいんだと、思い込んでいた。
そう思えば思うほど、彼女に「こうしてほしい」と言えなくなっていった。まるで彼女を自分の快楽のための道具にしているようで、何も言えなかった。僕は、彼女に嫌われたくないのだ。
対して、僕は玲に嫌われていいと思っている。嫌われても、そこでサヨウナラをすればいいことだ。長い関係でないと知っているから、欲求を素直にお願いできる。
皮肉なことに、玲のフェラはどんどん気持ち良くなっていった。嫌われていいと思っているとはいえ、このフェラをずっと味わいたいという思考が生まれる。
今日でサヨウナラのつもりだったけど、フェラをお願いしに、また連絡しようかな。
玲は音を立てながらしゃぶり続けている。
エロい音だ。
女の子に性器をしゃぶられている。
なんて卑猥で美しい光景なのだろう。
「どう?」
玲が口を離し、上目遣いで言った。
自分は攻められてる時に何も言わないけど、僕が気持ち良いのかは確認してくれるんだな。
「気持ち良いよ。もっとしゃぶって欲しい」
「うん、わかった」
玲は奥まで飲み込むようにしゃぶる。
頭が前に行きすぎて、くわえている部分が見えない。髪の毛が吸い込まれてしまいそうなつむじをじっと見つめる。快感はどんどんと増していく。
「やばいっ」
思わず声が漏れる。玲に気持ち良くさせられるのは、正直不本意だ。付き合っていないのに、弄ばれているような感覚になってしまう。
それでも、快感には逆らえない。
「出そうっ」
玲はモノを口から離し、上目遣いで手コキを始めた。
僕は玲から目をそらし、自分の快感に集中する。
そして、昨日彼女とのんびり座ったリビングのフローリングに、白くて生温い液体を放出した。
「でた…ね」
玲は満足そうな顔をしている。その顔を殴りたい怒りと、気持ち良くしてもらった感謝がぐちゃぐちゃになって、僕は何も言えない。
ティッシュを取り、液体を拭き取る。ゴミ箱に捨てた後、自分の威厳を保つように、玲の前に立った。
「もう一回だけしゃぶって」
玲は一瞬驚いた表情を見せたが、何も言わず、再びチンコをくわえた。
フェラでヌかれたのは、人生で初めてだった。何なら、女性にヌいてもらうこと自体が初めてだった。彼女とは前戯を楽しんだだけで、射精までは至ってない。なのに、玲のフェラで射精してしまった。
自分の方が優位であるはずなのに、相手が思い通りに動かない、また、相手が上のように感じてしまうと、人はイライラしてしまうようだ。僕は練習相手として玲を見下していたのに、玲にヌかれたことによって立場が逆転してしまった。
その立場を戻すため、僕が優位であると再認識するために、玲にお掃除フェラをお願いした。
つまり、情けない、しょうもないプライドを守るためだ。
玲は何も言わずしゃぶっている。少しくすぐったい。
しかし、時間が経つと、だんだんと冷静になってくる。しょうもないプライドで、玲にお掃除フェラをお願いしたことが、なんだか申し訳なくなってしまった。
感情の起伏が激しい。
それは、いま感じていること全てが、初めて体験する感情だからだろうか。
「玲ありがとう。もういいよ」
「いいの?」
「うん、ありがとう。気持ちよかった」
「それなら良かった」
「…」
「どうしたの?」
「…時間的に、そろそろ誰か帰ってくるかも」
「そっか、じゃあ外でる?」
「いや、この後、予定あるから、ここでバイバイかな」
「そうなんだ…わかった」
玲は乱れた服を直し、カバンを持って出る支度をする。僕も服を着て、玄関まで玲を見送る。
「じゃあ、帰るね」
「うん。帰り道わかる?」
「多分大丈夫だと思う。道わかりやすかったから」
「そっか。じゃあ…また」
「うん、またね」
玄関から出た玲の背中を少しだけ眺め、扉を閉める。僕にこの後、予定なんてない。今日は玲との練習をしたかっただけだから、外に出るつもりなんてなかった。
玲のフェラで射精した後、僕はとてつもない虚無感に襲われた。玲に触れたいなんていっさい思わなくなった。早くひとりになりたい。その思考だけが頭の中を埋め尽くしていた。
不思議だった。
キスしたい、胸を触りたい、フェラして欲しい、アソコに指を入れたい。そんな欲望は射精した後、一瞬で消え去った。
欲望って、いったい何なのだろう。
継続しない欲望に、いつも振り回されて生きているような気がする。
童貞卒業しても、この感覚を味わうのだろうか。
部屋に戻ってソファに座り、今日の玲との出来事を振り返る。
指はちゃんと入った。穴の位置も確認した。キスをして、胸をさわれば、アソコが自然に濡れることもわかった。
やり残したことは他にない。あとは、挿れるだけだ。それ以外は全て終わった。
僕はセックスがしたい。彼女とセックスをして童貞を卒業したい。そのために、彼女以外の女性と練習まで行った。
やれることは全てやった。
あとは本番を迎えるだけ。
これで、大人になれる。
携帯を取り出し、彼女にラインを送る。
すると、いつもゆっくりと返事をする彼女には珍しく、短文でのメッセージが返ってきた。
「昨日のお泊まり楽しかったね」
「楽しかった。また一緒に泊まろうね」
「うん。一緒に寝るのすごい幸せだった」
「俺もすごい幸せだったよ」
いつもは長文でのやりとりが基本だったので、短文で同じ時間に送り合うのは新鮮だった。
「今度はいつ寝れるかな?」
「泊まりじゃないけど、今度の平日の昼に家来るじゃん? その時、寝ようよ」
玲からのラインは来ていない。
「いいね! 楽しみにしてる」
「早く会いたいな」
僕の頭からはもう、玲との記憶は消え去っているようだった。
「あのね、思ったことがあるんだけど」
今はもう、彼女しか見えていない。
「裸で抱き合うのって、意外といいね」
そのラインを見て、胸が爆発しそうになった。
かわいい。
愛しい。
好きだ。
早く会いたい。
抱きしめたい。
抱き合いたい。
僕は無性に彼女に会いたくて仕方がなかった。触れたくて、抱きしめたくて仕方なかった。
「他人」がいるから「自己」が認識できる。「他人」がいなければ、自分がどういう人間なのかを理解することは難しい。「他人」という存在と「自己」の違いをすり合わせて、初めて自分という存在を理解できるようになる。
それと同じように、僕は「他の女性」と触れ合って、初めて彼女への「愛情」を認識できたのだ。
「うん。だから今度、裸で抱き合おうね」
彼女と共に、大人になるんだ。
「うん!」
卒業するんだ。
「それじゃ、また」
携帯の画面を閉じて、机の上に置く。
そのまま立ち上がると、モノのポジションが変な方向にずれていた。
パンツの中に手を入れて、元の位置に戻す。
何気なく手の匂いを嗅ぐと、肉食の生臭い匂いが鼻を刺激した。
玲のフェラ顔が頭に想い浮かぶ。
力の抜けていた下半身は、立ち上がる戦士のように、少しづつ大きくなっていった。
それと同時に、玲ともセックスできたらな、という淡い欲が少しづつ湧いてくる。
僕はその欲を取り払わず、保険として、こっそりと胸の中にしまった。
※※※※
「玲、久しぶり」
けっきょく、彼女とのセックスはうまくいかなかった。
「久しぶり」
だから僕は、玲に連絡をしたんだ。
「…ホテル、行こうか」
大人になりたいから。
「うん」
僕は玲とラブホテルの中へ入った。
童貞卒業まで、あとわずかー。
※いよいよ佳境! 第6章は↓↓
夕方5時、渋谷、道玄坂、ラブホテルの一室。季節は夏。日はまだ明るい。だが、その光は密閉された部屋の中には届かない。まるで世間から隔離されたような空間。薄いピンク色をした壁に、鏡を使った不思議な模様が描かれている。
(文=隔たり)