鏡に映った自分を撮影したのか、相変わらず顔は見せてくれない。首から下を撮った写真だった。
淡いピンク色のシャツを腰のベルトで締め、ジーンズ生地のショートパンツで脚を出し、素足にスニーカーを履いている。十代か二十代前半の若い女の子でないと似合わない格好だった。スタイルがいいんだなと思いつつも、こんな若い女の子と話が合うかなあと少し心配になってきた。
約束の時間に合わせて渋谷の道玄坂に向かい、待ち合わせのカフェに向かった。ちょっとオシャレな雰囲気のカジュアルなカフェで、店内に入ると誰もがソファやテーブル席に座って思い思いに時間を過ごしている。
待ち合わせの時間より少し早く着いたが、店内を見回すと、店の奥の方のソファ席に、もらった写真と同じ服装の女の子が座っているのが見えた。近づいて、声をかける。
「アスカちゃん?」
スマホを見ていた女の子が驚いて顔を上げる。
「あれ、たけしさん? 早かったですね。時間ちょうどくらいに来るのかと思ってた」
「うん、ちょっとだけ早く着いちゃったから」
平静を装いながら、私は彼女の向かいのソファに座った。アスカはアイドルグループのA◯Bとか○木坂のメンバーの一人と言っても違和感のないような可愛らしい女の子だった。
髪を肩くらいまで伸ばし、うっすらと化粧をしている自然のままの可愛らしさ。送ってきた写真の通り、ピンクの薄手のシャツにショートパンツを着こなしている。パンツから伸びた健康的な生脚がなまめかしい。
アスカは私に会っても全く臆するところがなく、なんでこんな子が出会い系サイトをとも思ったが、それを聞くのは野暮だと思いやめておいた。聞いた年齢よりもずっと大人びた口調と雰囲気で、年齢を偽ってるんじゃないかと思えるほどだった。だが話をしていると、どうやら本当に大学1年生のようだった。
「今日って時間は大丈夫だったの? あんまり遅くなれないみたいだけど」
「うん、夜バイトのシフトが入っちゃってるんです。ホントはご飯とかも行きたかったんだけど」
アスカはファーストフードのチェーン店でバイトをしているそうで、夏休み中にお金を貯めて、後期から始まる授業の教科書を買わなければならないそうだ。真面目な女子大生なのだ。
「今って大学一年生なんだよね? 勉強は大変?」
「うん、わかんないこともいっぱいあるけど、楽しいよ。高校の時より、ずっと自由だし」
「こうした出会いもあるし?」
「そうだね。いろいろな人とも知り合えるし」
そうアスカは笑う。
「飲み物を飲んだらいこうか」
「カップで持ってくから大丈夫ですよ。行きましょうか」
「う、うん」
立ち上がると、スリムな体型がよけいに際立った。身長は160センチくらいだろう。アイドル並みに可愛い顔立ちで、渋谷の109などで買い物をしていたらスカウトされたりするようなタイプの女の子だった。
円山町のラブホテル街を歩くときも、アスカは怯えたりすることなく堂々としている。近くのラブホテルに入るときも、全く自然な感じだったので、かえって恐縮してしまったほどだ。