隔たりセックスコラム「元カノとのエッチの正体」
隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにて連載コラム「セックス物語」を寄稿中。「隔たり」というペンネームは敬愛するMr.Childrenのナンバーより。 |
ある日、別れた元カノから急に連絡が来た。
「ねえ、今何してる?」
元カノのかおり(仮)とは、1年ちょっと付き合って別れた。
彼女はバイト先の後輩だった。
「何って、別に何もしてないけど」
別れた原因に「これ」と言えるほど確かなものはなかった。気がつけば、かおりが急に冷めた態度を取り始め、その何カ月か後に僕はフラれた。
「何もしてないとか、つまんない男」
「つまんない男でごめんよ」
「ほんと隔たりって変わんないね。すぐ謝る」
「ごめんって」
ひとつ原因をあげるとすれば、僕の家に遊びにくる予定をすっぽかして、かおりがクラブに行ったことだろうか。あの日から、僕らの関係は崩れていったように思う。
その出来事を経て冷めた態度をとるようになったのは、僕ではなくかおりだった。僕はドタキャンした彼女を責めず、許したにもかかわらず。
「ほら、またすぐ謝る。相変わらず変わんないね」
「まあね」
「そういうとこだよ」
「え、何が?」
「私が嫌だったとこ」
「えっ」
「すぐに謝って、考えてること何も言ってくれないとこ」
「ごめん…」
いま思えば、かおりは不満が溜まっていたのだろう。その不満を言葉で伝えるのではなく、僕との約束をすっぽかすという行為で伝えてきた。だから、その日から彼女は冷めた態度をとるようになった。
そんなふうに、冷めた態度を示すかおりに僕は何もしなかった。クラブに行ったことは責めず、素っ気ないラインについても触れず、明らかに目の前で不機嫌な態度をとりはじめた彼女に、僕は何もしなかった。
少しづつ離れていくかおりの心に、僕は気づいていた。
でも何をすれば、どうすればいいかなんて分からなかった。怒ることも、問いただすこともできない。そんな僕にできることは、あの出来事がまるでなかったかのように過ごすことだけだった。
予定をすっぽかされた翌日、何もなかったように彼女を迎え、僕らはセックスをした。
怒らなければセックスができる。そう思っていたから、僕は怒らなかったのだろう。
「ほら、また謝った」
「ごめんごめん。で、何の用?」
「…実は、いまの彼氏とあんまりうまくいってなくてさ」
「そうなんだ。何かあったの?」
僕と別れて約3カ月後、かおりにはもう彼氏がいた。直接は言われてないが、彼女のSNSを見れば、彼氏ができたことは容易にわかった。
だが、新しい彼氏と付き合って、まだ2カ月しかたっていない。
自分からフった男に新しい彼氏とうまくいってないことを相談するなんて、単純に凄いなと思った。相手が嫌な気分になってしまうかもしれないのに。
でもかおりは知っているのだろう。そういった状況での相談も、僕が受け入れてしまうことを。なぜなら、僕らは1年間付き合っていたから。互いのことは、何となく分かる。
「ちょっと幼稚っていうか、束縛してくるっていうか。私のこと好きなのは伝わるんだけど…ちょっとね」
「好きでいてくれるのは嬉しいけど、束縛されるのはしんどいよね」
かおりと付き合っていたとき、僕は彼女の行動を制限したことはない。つまり、束縛をしたことはなかった。彼女が会いたいと思ってくれれば僕にあってくれるだろうし、他の男と遊ぶのならば、それはそれで仕方ないと思っていた。
だから、かおりが僕との約束をすっぽかしたときも「あぁ、そういう感じか」と、妙に冷静だったのを覚えている。
そんな僕だから、今さら連絡が来たところで、彼女に対して思うことは何もない。
「うん、しんどい。隔たりと付き合ってた時のほうが楽だった」
「まあね。優しくしたつもりだし」
「うん、優しかった。あのときはなかなか気づけなかったけど、凄い優しかったんだね」
「今さら気づいたのかよ」
「ほんとだよね。今さら気づいたよ」
僕はかおりと付き合ってるとき、真摯に彼女と向き合ってきた。彼女が機嫌が悪くなったときも、自分のできることを精一杯やった。たしかに、すぐ謝ってしまうことはあったけど、関係を維持するためにできることは、全てやった。
だから、かおりとの関係に未練はない。
自分ができることは全てやった。それでも別れてしまった。それは仕方のないことだ。
もし仮に、この連絡が復縁を迫るものだとしたら、僕は断るだろう。やりきった関係を、再び復活させようとは思わない。お互いが大きく変わっていない限り、同じ過ちを繰り返すだけだ。
「ほんとそう。今さら気づいた」
かおりはなぜ僕に連絡をしてきたのだろうか。わからない。ただ愚痴を聞いて欲しいだけなら、もうこのやり取りをする必要はない。
「だから、懐かしくなっちゃって」
かおりからのラインが連続で投稿される。
僕はもう、このラインを終わらそうと思った。
元カレの僕に今カレの愚痴を吐く元カノ。そんな曖昧なやり取りを終わらせるためのキラーワードを、僕は送った。
「そうなんだ…とりあえず、セックスする?」
翌日、僕の家にはかおりがいた。久しぶりに彼女を見て、なんか付き合ってた時のほうがかわいかったな、と思った。
「隔たりの家来るの、めっちゃ久しぶり」
「そうだね、ちょいちょい来てたもんね」
「最後に来たのは…」
「あれだよ。あの日。かおりがクラブいったかなんかの翌日」
あ、とかおりがバツの悪そうな顔をする。クラブに行った日のことを思い出したのだろうか。
「ごめんね」
「いいよ、いまさら」
「まあ、私もそんな悪いことしたと思ってないし」
「なんかそんな感じだったよね。まあ、そのあとセックスできたからいいよ」
「今日も、セックスできるからいいかって感じ?」
「そんな感じだね」
「変わらないね」
昨日、とりあえずセックスしない?と送ったあと、かおりからはすぐに「いいよ」と返信がきた。だから彼女は僕の家にいるわけだが、なぜすぐにセックスを了承してくれたのかは分からなかった。
「なんで今日来てくれたの?」
「なんでって?」
「いや、セックスしよって言って来てるわけだから」
「あぁ。そうだったね」
「うん」
「…思い出したんだよね」
「思い出した?」
「別れた後にさ、隔たり言ったじゃん」
「あ」
「とりあえず、最後に1回セックスしない?って」
僕とかおりは直接ではなく、ラインで別れた。
何も言わずに、仲良かった時のように接する僕に対して、かおりの方から「別れよう」と送ってくれた。それで僕らは別れることになった。
でも、僕らはバイトの先輩と後輩。別れたとはいえ、シフトが一緒ならもちろん会わなければならない。
別れてから始めてシフトが重なったとき、たまたま終わりの時間が一緒になった。更衣室は僕とかおりのふたり。気まづいなあ、と思っていた僕に、かおりは声をかけた。
「なんかウケるね」
かおりの方を見ると、彼女は笑っていた。その笑顔を見るのは何カ月ぶりだったろうか。その笑顔を見ることができたなら、僕たちが別れたことは正解だと思った。
「最後にさ、送ってよ」
いいよ、とすぐに返事をした。
かおりがそう言ってくれたことが、僕には嬉しかった。
僕とかおりの家は近かった。だからバイト終わりにかかわらず、彼女と会った日は必ず家まで送っていた。
僕はそんなあの道が、大好きだった。かおりを送った後にひとりで歩く道。かおりとの記憶がつまった思い出の道。彼女と付き合ったのも、家まで送ったことがきっかけだった。
その道をかおりとふたり、横に並んで歩く。おそらくこれがふたりで歩く最後の日だろう。昔の記憶を思い出しながら、忘れぬように、ゆっくりと歩く。
僕らはたくさんの思い出話をした。どこにデートに行ったとか、どんな喧嘩をしたとか。別れる前、あれほどお互い話せなくて、会えば険悪なムードになったのに、別れた途端に友人のようにたくさん話せる。不思議だった。とても楽しかった。
「送ってくれてありがとう」
家の前に着き、かおりが振り返りながらそう言った。優しく微笑む彼女を見て、これで最後なんだと急に悟る。僕は最後の想いをかおりに伝える。
「最後に、ハグしていい?」
いいよ、とすぐに答えるかおり。そして僕らはハグをした。少しふれるかふれないかの、それでいて安心感のある、優しいハグだった。
「ありがとう」
そう離れると、かおりと目が合う。僕らは何も言わず、一度だけ口づけを交わした。一度だけ。
「こちらこそ、ありがとう」
そう言うかおりの表情はなぜか泣きそうな顔だった。後悔してるのだろうか。分からない。分からないけど、その顔はやめてくれ、と思った。僕らはもう戻れない。
そんな空気や寂しさを壊したくて、もう戻れないと自分に言い聞かせたくて、僕はかおりに言った。
「さ、キスもしたことだし、とりあえず最後に1回セックスする?」
かおりは一瞬驚いた顔を見せたあと、大きな声を出して笑った。ツボに入ったのか、腹を抱えて笑っている姿をみて、思わず僕も笑う。
「ほんと変態だね」
「まあな」
「最高だったよ。笑った」
「なら、良かった。で、いつする?」
「しないよ!(笑)」
「しないんかい」
「逆によくできると思ってるよね?(笑) まあ、私がどうしてもセックスしたくなって、誰も相手がいなかったらいいよ」
「え、マジで?」
「多分そんな日は来ないと思うけどね!」
最後にかおりを家に送った日、切ない空気に耐えられなくてふざけて言った、あの一言。それをかおりは、ちゃんと覚えていたのだ。
「え、ということは、そんな日が来たってこと?」
「まあ、そういうことだよね」
「でも、彼氏いるじゃん」
「あいつとはしたくないの」
「そうなんだ。俺とならいい、と」
「うん、ぜんぜんできる」
「なんかありがとう」
「だから…」
かおりが急に僕の目を見る。その表情は最後に家まで送った日の寂しそうな表情に似ていた。彼女の言葉に耳をすます。
「今日だけ…。今日だけ私のこと、たくさん抱いていいよ」
この一言で、僕の理性は吹き飛んだ。
とりあえずセックスしない?と言ったとはいえ、彼氏のいる元カノとセックスをしてはいいものなのかと悩んだ。
おそらく、ここでセックスしてしまったら、この思い出が強く残ってしまう。一緒に楽しく過ごした思い出よりも、別れた後にセックスをした、そんな曖昧な関係としての記憶が残ってしまう。
だから、本当にセックスできると期待しつつも、僕の中では半信半疑だった。かおりがやけくそになっているだけなら、都合よく僕を使うなら、しない方がいいのではないかと思った。
セックスしなくたって、言葉だけで充分満足できた。「今ならセックスできるよ」、その言葉だけで充分だった。別れても、抱かれてもいいと思える彼氏。そんな魅力を持てたんだと、ちゃんと彼女の中にセックスとしてのいい記憶が残っているのだと、そう思えるだけで満足だった。
セックスの前がいちばん興奮する。射精してしまったら賢者モードがおとずれて、けっきょく虚しくなってしまう。それを分かっていたから、僕は理性を保っていた。
でも、どうなのだろうか。僕は自分の家にかおりを呼んだ。その行為は、やはり「セックスできる」と期待してのものではなかったのか。セックスしてもいいよ、という女性と家に2人でいて、僕は我慢できる男なのだろうか。
答えは決まっていた。
1年付き合った元カノに誘われる。結果、僕の理性は吹き飛んだ。
かおりを抱きしめると、彼女も強く抱き返してきた。
キスをしようと、彼女の顔を見る。あんなに簡単に、たくさんキスしたはずなのに、緊張でどうキスすればいいのかわからなかった。そう戸惑っていると、かおりは言った。
「いいよ」
そう言って、かおりは目をつぶる。覚悟はできた。
彼女の唇に、自分の唇をゆっくり重ねる。今まで何度も触れたかおりの唇。何度も触れたはずなのに、初めてキスしたような、ものすごく甘い味がした。
重なった唇が強く交わりあい、キスがどんどん深くなって行く。かおりの薄い舌を、僕は口を開けて受け入れる。かき回すように絡めてくる彼女の舌の動きに、ただ身をゆだねる。僕の中に、付き合っていた時の記憶を掘り起こすような、そんなキスだった。
ベッドに移動し、かおりの服を脱がす。
ほっそりとした体、控えめに盛り上がったバスト、丸くて小さな乳首、綺麗に整えられた下の毛、すらっと伸びる細い足。
久しぶりに見たかおりの体は、昔と一緒のはずなのに、なぜか違う体に見えた。こんなにほっそりしていただろうか。初めて触るような気持ちで、上から下へと向かい、手で、舌で、ゆっくりとなぞっていく。
「いい…」
かおりの左の太ももを舌で撫でながら、右手人差し指で彼女のアソコをなぞる。上からゆっくり下ろすと、滑り台のように、濡れた道を通って膣口までたどり着く。そのままゆっくりと、人差し指を入れた。
「ああ…」
かおりに初めて手マンをした日、よくわからず適当に動かしたことで、彼女を痛がらせてしまったことを思い出す。少し指を曲げながら、彼女の中にある膣壁を撫でたり、つついたりする。徐々に漏れる彼女の声が、僕らの歴史を物語っていた。
「舐めたい」
「えっ」
「…舐めたい」
「いいの?」
「うん、いいよ」
付き合っているとき、かおりから一度も「舐めたい」と言われたことはなかった。だから驚き、僕は聞き返してしまったのだ。
このかおりの変化は、僕らが別れた月日からだろうか。
かおりのアソコから指を抜き、ベットの上で大の字になる。かおりが僕の股の間に体を入れ、チンコを持つ。はじめてのモノを見るかのように、チンコの周りをぐるっと一周見た後、彼女はそれをパクリとくわえ始めた。
「んっ、んっ、んっ、ぷはぁっ」
激しく吸ってから、一度口を離す。そして再び激しくしゃぶってから、口を離す。かおりはそれを何度も繰り返した。
付き合っていた時、かおりはこのようなフェラをしなかった。いま付き合っている彼氏に教わったのだろうか。分からないけれど、僕らの関係も、互いの中身も、変わってしまったことを悟る。
「入れよっか」
そう言ってかおりを寝かし、ゴムをつけて、アソコに当てがう。
念のため、もう一度かおりに聞く。
「入れるけど…いい?」
かおりは恥ずかしいのか、自分の目を腕で隠しながら、コクリと頷く。硬くなったモノを彼女のアソコになぞらせると、吸い込まれるように、中へ入っていった。
声が出ないように、かおりは口を手でおさえる。と同時に、体を大きく反らして僕のモノを奥へと誘導する。久しぶりの彼女の感触は、気持ちが良いのか悪いのか、全く分からなかった。
「キス、して」
かおりの体に覆いかぶさるようにして、僕はキスをした。首の周りに彼女の手がかかり、優しく引き寄せられる。そういえば、付き合っていた頃はよく、キスをしながら交わっていたことを思い出した。
かおりと付き合いたての頃、僕にはあまりセックスの経験がなく、挿入前に緊張して勃たないことがよくあった。なんとか大きくして挿入しても、彼女の中で少しずつ萎んでしまうこともあった。でもキスをしながらすると、彼女の中でどんどん大きくなった。だからキスをしながら交わる、というのが、僕とかおりのセックスだった。
昔と同じようにキスをすると、かおりの中でモノは大きくなっていった。それに合わせ、彼女の中がまとまりついてくる。目をつぶって激しく舌を動かす彼女を見ながら、僕は腰を振った。
「ねえ、あの体位しよ?」
かおりが目を開けて、そうねだってきた。僕は彼女を抱きしめて起き上がらせる。そして座った状態になり、強く抱きしめたまま、激しくキスを交わす。付き合ってたとき、これほどキスをしたことがあったろうかと、ぼんやり思う。その座った状態のまま、かおりが腰を前後にグラインドし始めた。
「ああっ! これやばいっ! 動いちゃうぅ!」
かおりの激しい腰の動きに合わせて、ベッドが軋む。何かをこらえるような表情が、ものすごくエロかった。繋がっている部分、そしてその周りがじっとりと暖かくなっていく。座位になるとかおりはいつも、狂ったようにセックスに没頭していった。
僕のモノのカタチとかおりの中のカタチ的に、座位の相性がいいのだろう。
たしかに正常位や他の体位よりも、座位の方が「繋がっている」ことを実感できた。隙間なく、違和感なく、ぴったりと繋がっている。射精感に襲われるのは当たり前だった。
「やばい、もうイキそう」
「イキそうなの?」
「うん、そんなに、動かれたら…」
「だっ、だって、勝手に、動いちゃうぅ、からあ」
「やばい、イクよ?」
「うん、きてえぇええ!!」
僕はかおりの腰を持って前後に動かす。かおりは僕を覆うように強く抱きしめ、キスをしてきた。
かおりのアソコの中も、口の中も、ぐちゃぐちゃになるほど混ざり合いながら、天に打ち上げるように、僕は射精したのだった。
「エッチしちゃったね」
「うん、しちゃった」
「かおりは…気持ちよかった?」
「うん、めっちゃよかったよ。隔たりは?」
「…うん、気持ちよかった」
別れてからかおりとしたセックスは、この1回だけだった。それから何度かご飯には行ったけれど、セックスしようという流れにはならなかった。
別れたあとにする、元カノとのセックスはとても不思議だった。互いの体は大きく変わってないから、相性なんて変わらないはず。実際、かおりとのセックスは変わらずに気持ちよかった。
それでも、付き合ってる時と別れた後のセックスは、全くの別物だった。
それは、外から見たら変わらないけれど、箱の中に存在していたものが無くなってしまったような、体温の在るものから体温がなくなってしまったような、そんな感覚だった。
その消えてしまったものは一体何なのだろう。
おそらくだが、僕らは付き合ってるとき、セックスでコミュニケーションをとっていたのだと思う。
「大好きだよ」
「愛してるよ」
「かわいいよ」
「かっこいいね」
そういった気持ちを、言葉だけでなく、セックスでも交わし合っていたのだと思う。互いの愛情を伝え合い、共有し、愛を深める。そのために、僕らはセックスをしていた。
それ伝えたい気持ちというものが、このセックスには無かった。
ならば、別れたあとにした僕らのセックスは、何のためのセックスだったのだろう。
伝えたい気持ちがないセックスは、ただの性欲処理と同じなんじゃないかと思った。
そう、それはオナニーと、何も変わらない。
気持ち良かったけれど、終わったあと空虚感に襲われた。満たされたという感覚よりも、吐き出してしまったという感覚に近かった。
かおりがどう感じたか分からないが、別れたあとにしたセックスは、僕にとってオナニーと一緒だった。
愛を深め合うセックスから、ただの性欲処理のためのセックスになる。
相手は同じなのに、関係性でこうも変わるなんて本当に不思議だった。それと同時に、コミュニケーションとしてのセックスと、性欲処理としてのセックスには雲泥の差があると思った。
おそらく、かおりに誘われても再びセックスしなかった理由は、そういう気持ちからきているのだと思う。オナニーなんて、ひとりで出来るから。
毎日、世界では多くの男女がセックスをしている。
多くのカップルが、多くの夫婦が、セックスをしている。
その中で、愛を深め合うためのセックスをしている男女は、どれくらいいるのだろうか。
分からないけれど、そういう男女が多いことを願わずにはいられない。
少なくとも僕は、そういう気持ちを心がけたいと思う。
相手が誰であれ、ちゃんとコミュニケーションのとれたセックスをしていきたい。
なぜなら、そういう心構えからすでに、「セックス」が始まっていると思うから。
(文=隔たり)