「あ、はじめまして。なんだか変なことになってしまってすいません」
「レナがお世話になってまして。おかしなお願いをして申し訳ありませんでした」
娘をめぐって話をする父親同士のような会話だったが、実際にはレナとセックスをしただけの赤の他人なのだ。私の向かいのレナの隣に座った田中は深刻そうな表情で言った。
「ご存知かと思いますが、レナとは毎月のお手当を渡して付き合っています」
「はい、聞いています。私も以前、レナさんとは何度か関係したことがありますが、今日会うのは久しぶりでして…」
一応話を合わせるように言った。そして、うな垂れるように田中が口を開く。
「実は私には妻も娘もいるんですが、家に帰っても娘からは疎まれて、妻との会話もなくて…。だから、今の私にはレナだけが生きがいなんです」
「そうだったんですね」
「でもこんなに好きなのに、最近あっちの方がダメなんです」
「こんなことを言うのは失礼ですが、セックスのしすぎなのでは?」
「欲求はあるんです。朝から晩まで、レナのことを抱いていたいと」
「少しお休みになって精力を貯めた方がいいんじゃないですか」
「もし、レナが誰か他の男性に抱かれているのを見たら、また新鮮な気持ちになれると思うんですよ」
「いやあ、それはどうでしょうか」
田中は、レナが誰かに抱かれているのを見れば興奮して激しく求めることができるはずだ、と自説を繰り返す。
私はさすがにセックスをしている様子を見られるのは恥ずかしいと固辞した。だが田中は、自分が興奮してオチンチンが勃つようになったら交代してもらえばいい、それまでは普通にセックスしてくれて構わないから、と引かなかった。
「あなたとレナさんがいいとおっしゃるなら、私でよければ協力しますが…」
けっきょく根負けしてしまった。
「ありがとうございます。実はせっかくなのでハプニングバーに行ってみたいんです」
「えっ、ホテルでエッチするわけではないんですか?」
「いえ、近くのハプニングバーに一緒に行ってみませんか。そこでレナのことを弄んでみたいんです」
「他の人もいるんですよ。いいんですか?」
「はい、ぜひ」
レナは男性二人の話を黙ったまま恥ずかしそうに聞いていた。もしかしたらそんな状況に興奮しているのかもしれない。
なんだかおかしな展開になってきたなあと思ったが、目の前にいる田中という男は少なくとも悪人ではなさそうだ。私を騙そうという魂胆があるようにも思えない。変態には違いないがレナを任せても心配はなさそうな人物だな、などと父親のような気持ちになっていた。
3人で軽く夕食をとると、田中が言った。
「それじゃあ行きましょうか」
私はハプニングバーに行ったことがなかった。乱交パーティに参加して複数の女性とセックスをしたり、女子大生やOLと並行してセフレになったりと、エッチの経験はある方だったが、他人のセックスをわざわざ間近で見たいとは思わなかったのだ。
だが、田中という男とレナがどんなセックスをするのか少し興味があったし、もし期待以上であれば別のセフレを誘ってハプニングバーに一緒に来てみようか、という下心も出てきた。