電話の翌日、神奈川県の某駅で待ち合わせると…。
「川田さんですか?」
目印にと雑誌の入った茶封筒を手に持った僕に声を掛けてきた幸恵さんは、クリーム色のスカートにベージュのセーターという出で立ち。少し白髪まじりで顔には相応のシワが刻まれおり、胸の位置なんかも年相応でだいぶ下がってはおりましたが(笑)、どこかお上品な印象を受ける熟女でした。
(何不自由なく幸せな生活を送ってる60代女性って感じじゃないですか。なんでこんな女性がエロ本モデルに興味を?)
そんなふうに思いながら挨拶します。
「あ、幸恵さんですね、よろしくお願いします」
「やだわ、お若いんですね。もっとお年の方がいらっしゃるんだとばっかり思ってました」
少し照れくさそうに笑う幸恵さん。話が話なので喫茶店というわけにもいかないし、実際の雑誌を見ながら話を聞いてもらった方が早いということで、カラオケボックスで面接させていただくことに。
「人目がないと少し落ち着きますね」
「答えづらいことも色々聞かなきゃいけないんで、よろしくお願いします」
「はい、覚悟してますんで、何でも聞いてください(笑)」
話を聞くと、幸恵さんの暮らしぶりが分かってきました。
まず彼女が、社員は十数名と規模は小さいものの物流会社の社長夫人だったということ。そして、社長であるご主人は8年前に病気で亡くなり、息子さんが会社を継いでいるとか。また、息子さんは結婚しており子どもがふたり。つまり、幸恵さんはふたりのお孫さんがいるお婆ちゃんでもあったわけです。
「息子の家族は別の場所に住んでいるので、私はひとり暮らしなんですよ」
ここらでエロ事情を聞いてみようと、冗談まじりに言ってみたんです。
「ひとり暮らしなら、気兼ねなくオナニーできますね」
すると、照れ笑いでお茶を濁すかと思いきや、話に乗ってきました。
「そうなんです(笑)。実はね…」
聞けば、1年ほど前からオナニーにハマってしまったとか。きっかけは、息子が家に来た際に「読み終わったから捨てといて」と置いていったスポーツ新聞。新聞をめくると、スポーツ新聞特有のエロ頁が出てきますよね、あれを見てからだそう。
「別に過激な記事が載ってるわけじゃないのにね。なんだかムラムラしてしまって(笑)」
ご主人と死別するずっと以前にセックスから遠ざかっていたという幸恵さん。ところが突然、彼女の中の「女」が蘇ってしまい、それ以来オナニーすることがクセになってしまったのだとか。そして、
(叶うことなら、もう一度セックスをしてみたい)
そう思ったときに、見つけたのがモデル募集の三行広告だったというわけ。