アダルトグッズの中でも、とくに目覚しい進化を遂げたものとして、男性用オナニーグッズが挙げられるだろう。
商品としての男性用オナグッズの歴史は古い。中野栄三『性風俗事典』その他によれば、江戸時代前期の寛永3年(1626)年にはすでに江戸市中でアダルト商品の専門店「四つ目屋」が営業していた。この男性用グッズである「吾妻形」を扱っていたらしい。
だが、明治以降は商品として盛んに販売されていたような様子は見られない。一説に、戦前はアダルトグッズですら規制の対象となったため、商品として発達しなかったともいわれるが、詳細はわからない。
商業的なアダルトグッズが本格化するのは、戦後になってからである。当初は「大人のおもちゃ」などと称して温泉街や一部のショップなどで売られていたが、1970年代になると通販が急増する。そのラインナップの中に、男性用オナニーグッズも登場する。
当時の広告を見ると、ハンディサイズの男性用オナグッズがいろいろ並んでいる。「電動タコツボ」「イソギンチャク」「しびれふぐ」「ニタリ貝」「伸縮電気なまず」といったネーミングのほか、「精巧肉質名器」というストレートなものや、とくに商品名はなく「オナニーマシン」として売られていたケースなどさまざまだった。
外見は魚や貝などをデザインしたものから単純な円筒形などがあり、樹脂製のホールが設けられていた。価格は1000円程度のものもあったが、多くは3000円から5000円くらい。なかには1万円以上する商品もあった。
だが、この時期のこの手のグッズは、筆者が知る限り、優れた製品などひとつもなかった。実用部分は筒状のスポンジやプラスチックを取り付けた簡単な構造で、精巧でもなければ肉質でもなかった。なかには、素材のプラスチックがゴツゴツと硬く、気持ちよくないどころか痛みまで感じるような粗悪品まであり、とてもひどい状況だった。
また、「電動式」とアピールしている商品もよく見かけた。高性能のように感じられるが、実際にはホール脇にパールローターなどの小型バイブをあてがってあるだけだった。ただブルブルと振動するだけで、気持ちよくもなんともない、むしろ邪魔でしかない代物だった。