ふと振り返ると「あの店も違法店だったのか」と思うことがある。当時はそんなことはまるで考えずに取材したり遊んだりしていたが、平成10年頃はそんなヘルスが全国の歓楽街に必ず1軒ある時代だった。
筆者がとても気になっていたファッションヘルスは、錦糸町の歓楽街のすぐそばを通る首都高速道路の、ほぼ真下といってもいいくらいの場所にあった。
そこは『スーパークイーン』という店だった。
当時のヘルスは、今のようにまだ細分化されてはおらず、ファッションヘルスと性感ヘルス、イメクラに別れる程度だった。その店は性感ヘルスだったと記憶している。
ヘルスブームの当時、フードルブームも同時進行していて、人気風俗嬢の中には歌手としてCDデビューした女の子もいる。『P・R・S』はそのひとつで、都内にある別々の人気風俗店に勤めるフードル3人がユニットを組みデビューしたのだった。
そのメンバーのひとり、Lisaが筆者のオキニだった。
そんな彼女が働いていた店が錦糸町のスーパークイーン。ブラック編プロで働いていたときに、何度か取材にも行ったことのある店だった。
が、当然、人気嬢のLisaは指名なしの取材では筆者の前に立つことはなく、結局、実物の彼女を目の前にできたのは、予約をして遊びに行った時だった。
キリッとした顔と抜群のスタイルの女のコだが、そのプレイスタイルまではわからない。どんなテクニックを見せてくれるのかと思うと、鼻血がでそうなほどだったのを覚えている(笑)。
果たして、実際はどうなのか。初Lisaとご対面の10分後には、風俗のルーチンによって、全裸で抱き合い、乳首を舐められていた。
気になったのは彼女独特の乳首舐めの「音」だった。
普通なら、乳首を吸う程度なら、小さく「チュパ」くらいの音しかしない。だが彼女の場合、けっこう大きな音で「チウ、チウ」という音が響く。「ヂウ、ヂウ」でもいいくらいだ。
当然、わざと音を立てているのだろう。しかしこれがアエギ声と同じ、「官能的な愛撫の音」と彼女が捉えているのだとしたら、違和感を覚えずにはいられなかった。
だた、違和感があったのはそれだけじゃなかった。シックスナインで憧れの女の子にチ●ポをしゃぶられ、オマ●コを舐めあった末の賢者タイムのあと、彼女に手を引かれてシャワーを浴びに行く時、他の個室から聞こえて来たのは、彼女と同じ「チウ、チウ」音だったのだ! しかも、こっちの個室からもあっちの個室からも…。
どうやら、人気嬢のテクを他の女の子が真似して、それが全員に広まったのだろう。おかげでそれ以降、この店のイメージは、「チウ、チウ」音になってしまった。
結局、憧れのLisaとはその一度しか対戦できなかったが、同じ店で取材したことのある別の女のコと、数年後に小岩の本●デリヘルでご対面することになる。
もちろん、彼女は筆者のことは覚えていなかったが、雑誌にも出ていた子なので、錦糸町の店のことを聞くと、当時のことを話してくれた。
筆者が想像したとおり、「チウ、チウ」音はLisaを女の子たちが真似したものだった。
それと、
「一度、Lisaチャンとお客さんがプレイ中に、間違って部屋のドア開けちゃったことがあるの。慌てて閉めたけど、びっくりしたぁ」
「あそれ、多分オレ」
実はLisaとの対戦中、彼女が上に乗ってる時にいきなりドアを開けたのだ。びっくりしたのはこっちの方だ(笑)。
その女の子とはもちろんズッポシいかせてもらったが、楽しい思い出が蘇るひとときだった。
ラブホを使うデリヘルが主流の現在、他の女の子の技を音だけで盗んだり、ましてや、プレイ中の部屋のドアを開けるなんてアナログなハプニングはありえない。そういった意味なら、もはや風俗の遊び方もデジタル化しているのだろうか…。
〈写真、文=松本雷太〉