「たけしさんですか?」
「そうです」
「ああ、よかった。メールでやりとりしていた山田です。どうもよろしくお願いします」
山田という男性は、パンチパーマに柄モノの洋服を着ていて、クラッチバックを抱えていた。パッと目には筋の良くない人のように感じられ、ここに来たことを一瞬後悔した。
だが、いざ話してみるとそんなことはなく、いたって普通の男性だった。もともとデリヘルの経営をしていたが安定せず、副業として大人のパーティを月1回ほど運営しているという。
参加する女性は、デリヘルの伝手で来てもらっている人もいるが、単純に興味があって参加している人も多いという。ただ、飛び入り参加するようなケースは稀らしく、女性の参加者はだいたい常連ということだった。
私は誓約書に署名をして、身分証明書を山田に見せた。
「すいませんねぇ。こうやって身元の確認をしないと、会を運営していけないので」
「いろいろ大変なんですね」
「そうなんですよ。儲かってるんじゃないかって聞かれることもありますが、会場を借りたり、女性に参加のお礼をしたりしていて、カツカツなんです」
「そうなんですね。ちなみに、会場はどちらなんですか?」
「このホテルの上の方ですよ」
まさかこのホテルの上だとは。私は驚いたが、こうしたホテルの方が借りやすいのだという。
しばらく雑談をしていると、山田は時計に目をやって言った。
「ちょっと会場の準備があるので、集合時間になったら、お伝えしたようにエレベーターまで来てください」
指定された5分前に集合場所のエレベーターのあたりに行くと、10人ほどの男性が集まっていた。年齢はさまざまで30代から40代が多かったように思う。みな、普通の男性に見えた。
時間になると山田がきて、集まった人たちに会釈した。どうやら私と同じように、それぞれ面接済みのようだった。