大正、昭和を経て、平成の時代にまで生き残った歴史ある風俗街の中には、この15~20年の間に摘発によって壊滅したものも少なくない。
しかし、風俗街が消滅するのは摘発だけでなく、“時代の流れ”も大きく影響していることがわかるのが、横須賀にある安浦のカフェー街ではないだろうか。
神奈川県横須賀市にある「安浦」。千葉県の「浦安」と間違われやすいが、埋立地とファンタジーワールドという共通点はあるものの、昼と夜のエンターテイメントの違いで明暗も大きく分かれてしまうのだった。
安浦の歴史をざっと説明すると、始まりは明治時代にあるようだ。当時、横浜開港に伴い横須賀でも軍港の整備が進み、人口が急増していた。そこで、横須賀の海を埋め立ててできたのが安浦の街だった。ここに近隣遊郭や飲屋街が集められ、戦後は「カフェー街」という私娼街として残ってきたという。
筆者が初めて安浦を訪れたのは2001年で、当時の最寄り駅は「京急安浦」という駅だった。そこから国道を渡って一本裏手の路地に入ったあたりが、その街だった。
元カフェー街には民家が並び、子供が遊び、犬が戯れるのんびりした普通の住宅街にしか見えなかった。しかし、注意しながら歩くと、普通の住宅街ではあまり見かけないようなレトロな装飾の玄関だったり、かつては何らかの店舗だったのを改築したような民家があることに気づく。
そんな平和な街にちょっとした変化が現れるのは、夜になってから。近くで時間を潰して20時過ぎに戻ると、さっきまで子供や犬が遊んでいた路地に手持ち無沙汰そうなおばちゃんが立っていた。そして、スケベそうな筆者を見つけるや、スーッと近寄ってきた。