桜子は当時20歳。背が小さくて、リスみたいな可愛い顔をした女のコでした。そんな彼女とファミレスに入り、ハンバーグを食べながら、まずは話を聞いてみたんです。一体、どうしてネカフェ住民になってしまったのか、どうしたって気になるじゃないですか。すると彼女の口から語られたのは、
(しょうもない理由で家出中のヤリマン女子なんじゃないの)
なんて邪推したことが申し訳なくなるような内容だったのです!
「人生なんとかなるもんですよ。あっ、でも…私が女だから言えるのかもしれませんね」
秋田で生まれ、シングルマザーの母親に育てられたという桜子。しかし、その母親が前年9月に、急な脳溢血で前触れもなく他界してしまったらしいのです。聞けば、亡くなった母親はひとりっ子で、すでに祖父母も他界。遠縁の親戚は付き合いがなく、まさに正真正銘、天涯孤独の身になってしまったとか。
「私の家って相当貧乏で、ママと住んでたアパートも家賃が払えなくて追い出されちゃったもんで、年末を目前にして身ひとつで上京したって話なんですよね。ねぇ、かわいそうでしょ、私って(笑)」
ずいぶんと気の毒な話じゃありませんか。でも、彼女ときたらまるで他人事のように、笑いながら身の上を告白するんです。もしかしてバカ? いや、ポジティブな性格なんでしょう。彼女のように、どん底にいても明るく笑える女性の話には、きっと生きるヒントが隠されているに違いない、なんてことまで考えさせられました。
「ママも貯金なんてできる生活状態じゃなかったから。上京するときに私が持っていたお金は5万円くらい。家にあった家具とか電化製品をリサイクルショップに売ったお金と…あと、秋田で1回援交して作ったお金(笑)」
その5万円と、バッグに衣服と下着だけを詰め込んで上野駅に降り立った桜子。12月半ばの寒い夜だったそうです。
「とりあえずはネットカフェを探しましたよね。で、家出掲示板的なサイトで援交してくれる人を探そうと思って。家出じゃないんだけどね(笑)」
上京前に秋田で、そして東京でも同様に援交してお金を稼ぐつもりだったんなら、風俗で働こうって気にはならなかったのか。