【ニッポンの裏風俗】愛媛・道後温泉:今はもうない「ネオン坂」と呼ばれた街

 吉原、高知とちょんの間旅館ネタが続いたので、高知からの流れで今回は、愛媛の道後温泉にぷらっと寄ってみようと思う。

 愛媛県松山市には、四国を代表する遊郭街があった。それが「ネオン坂」と呼ばれた街。今はもうない。

 松山市の中心部・大街道から路面電車で10分ほど揺られて到着するのが、夏目漱石の「坊ちゃん」で有名な道後の街。有名な日本最古の温泉の街で、象徴となっている「道後温泉本館」の歴史ある建築物は、皆の「どっかで見たことある」記憶フォルダに入っているに違いない。

前回、前々回“ちょんの間旅館”の記事は↓↓↓

 最近は、若い女性の間で遊郭がブームになっているようです。中でももっとも人気が高いのが、東京の「吉原」。言わずもがな日本一のソープ街です。とはいえ、知らない人もいるかもしれないので軽く説明すると、吉原のソープ街は、昔は遊郭でありました。

 前回、ソープ街の吉原にあったちょんの間旅館のこと(※)を書きましたが、同じようなちょんの間旅館や一発屋旅館は全国にあり、今でも残って営業しているところもあります。

道後温泉の裏風俗

 遊郭は、その温泉本館の裏側にあった。しかも、つい最近まで。

 夜、その坂道を訪れると、毒々しいほど真っ赤に輝く「ネオン坂歓楽街」とデザインされたネオンサインのアーチが出迎えてくれる。

 その赤い毒は、近くの建物の壁だけでなく、看板の下のアスファルトまでも毒色に染め、その先には坂道に沿って街路灯と小さな「ネオン坂」の看板が輝いているのだった。

道後温泉「ネオン坂歓楽街」のゲート
今はなくなってしまった道後温泉「ネオン坂歓楽街」のゲート

 筆者は、フリーランスになった2001年以降この坂を数回訪れているが、それらしき客とすれ違ったのは多分1回きり。「歓楽街」のネオンは、閑散とした歓楽街を、ただ虚しさと過去の栄光のみをひけらかしているようにも見え、その派手さも相まって、一層寂しく感じたものでした。

 ネオンサインのアーチの下から伸びる緩やかなのぼり坂の両側には、古びた建物のスナックが並び、“そういう目”で見ると、

一見スナックだが…

「そのスナックで飲みながら女性店員を値踏みし、気に入ったコが見つかれば、二階の小部屋にしけこんで…」


 という流れに思えてしまうが、それはほぼ正解だった。

 

 筆者が入ったスナックも、そんな店のひとつでした。ただし、店のカウンターにいたのは女のコではなく、店のママ。五十路のおばちゃんである。

 筆者はテーブル席に座り、この手の店ではもはや標準小売価格である1000円の瓶ビールを飲みながらおばちゃんの様子をうかがっていると、おばちゃんはおばちゃんで初めて見る筆者の様子をうかがっていた。

 

「ここは遊べる店ですか? どんな女のコがいるんですか?」


 口火を切ったのは筆者の方でした。


「今日いるのは、30代のコがふたりですね」


 おばちゃんにお願いすると、顔見せしてくれるという。

 初めて遊ぶ店で顔見せは非常に大切である。飲みかけのビールを残し、二階に続く階段の下で待っていると、階段の下の扉が開いて1人目の女性が軽くお辞儀してきた。

 それは一瞬のことで、暗さもあって女性の顔はほぼ見えなかった。2人目もそこから出てくるのだろうと、その扉をジッと注目していると、女性が顔をのぞかせたのは、階段から。まるで、不意打ちのように一瞬で終わってしまったのでした。

 結局、筆者が遊んだのは2人目の女性で、年齢はアラフォー。が、スタイルが良く、筆者が東京から来たと知ると、当時でさえ、もはや手垢まみれのネタとなっていた「愛媛のポン道」(※)の話を自慢気に話してくれたのでした。もちろん、「ウソ」だと知ってましたが(笑)。

※水道のように蛇口からポンジュースが出るという話。

 


 時間は30分程度、料金は1万5000円とビール代。そのビールは、遊び終わるまでおばちゃんが瓶の中の飲み残しを取っておいてくれ、一発後に残りを一杯グビリとやって店を後にしたのでした。

ビジネスホテルでも…

 ネオン坂には、スナックの他に旅館やホテルもあり、そこで遊んだこともある。最初に入ったのは、入り口に客引きのおばちゃんがいるビジネスホテルでした。

 客引きおばちゃんに話すと、古臭い客室に通され、待っていると現れたのは20代後半と思しき女のコ。意外な若さに驚きつつ、そのコと刹那の逢瀬を。言葉から察するに、九州出身の女のコのようでした。

 意外だったのは、そのビジネスホテルは一般客も泊めていて、その夜は、多勢の高校球児がいたこと。対外試合にでも来たのだろう球児たちが大人になり、自分たちが泊まったホテルがそんなところだったと気づけば、今度は遊びに来たくなるに違いない(笑)。

 

写真指名できるホテヘルも

 そしてまた、こんなことも。

 道後温泉本館の先にある、四国唯一のストリップ劇場の近くで女性のポン引きに声をかけられ話を聞くと、本●ありのホテヘルだという。しかも、写真指名できるというのだ。

 ネオン坂の反対側でそんな店があるとしたら、新しい風俗街の店だろう。そう思っていると、店の男が運転して来たクルマに乗せられ、どこをどう走ったのか、着いたのはネオン坂にあるホテルの前だった。

 そのホテルには、風俗店のような待合室があり、そこでも女のコの写真が見れるようになっていた。どんな女のコを指名したのかは覚えていないが、案内された客室に後からやって来たコを見て、「本当にこのコか?」と思ったことは覚えている。

 その後、2008年にネオン坂を訪れた時には、ネオンサインはすでに撤去されてしまっていた。近くの商店のおばちゃんに聞くと、前年の夏に撤去されたという。

 さらにその4年後に訪れた時には、スナックがあった場所の多くは更地になり、まるで段々畑のように。坂道の一番先にあった歴史ある検番の建物さえも、駐車場に変わっていた。ネオン坂の最期を見送ったちょんの間は、坂道の一番下にある「R」だった。

 

 今、道後のネオン坂は、ストリップ劇場の先にあるピンク色の坂道の風俗街に代わっている。

(写真・文=松本雷太)

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