「男性の多くは、性交中に相手を支配する行為でさらなる性的興奮を得る」と、何かの本で読んだことがあるが、まったく同感だ。
バックでやっている時や、必死に男性器を咥えこんでフェラチオしている姿を見ると、心の奥がザワザワするような、興奮と支配欲とが混じった高揚感を感じる。
勘違いしてほしくないのは、レイプのようなシチュエーションに興奮するわけではなく、あくまでも相手と一緒に楽しめることが前提であるということ。「嫌よ嫌よも好きのうち」が正しい意味で使えるシチュエーションが好きなのだ。
今回は、私がスタッフとして働いていた頃に知り合った、真性Mっ子キャストとのお話だ。
【風俗嬢と体の関係~ユカリの場合~】
太陽がアスファルトを熱し、どんどん気温を押し上げていく8月初旬。
この時期、夏のボーナスが出たお客さんの財布は緩くなる。風俗業界において、夏季は売上を底上げする大切な時期だ。
そんな大切な時にもかかわらず、私のやる気は右肩下がりだった。
毎日うだるような暑さの中、スーツを着て出勤するのに嫌気がさしていたからだけではない。先の見えない仕事、なかなか上がらない給料、長い労働時間…。いくつもの要素が重なることで労働意欲はどんどん削られていた。
「あー、もうほんとに辞めようかなこの仕事…」
通勤中、毎日そんな独り言を口にするようになっているのに、どうしてこの仕事を辞めないのか。
変化を嫌う性格だったり、新しく仕事を探すのが面倒だったり、生活できるだけの給料が稼げるか分からなかったり…と理由はいろいろある。
だが、私が転職を躊躇する一番の理由は、風俗店のスタッフがそれなりに美味しい思いができるからだ。
「あー! 小鉄君、おはよー!!」
「ユカリちゃん、おはよ…って、うわ!」
事務所に到着するや、管理を担当するキャストのひとり、ユカリにぎゅっと抱きつかれた。
「ちょ、ちょっと、ユカリちゃん…」
「えへー、びっくりした(笑)?」
「恥ずかしいからやめてよー」
「本当は嬉しいくせにぃ」
にやにや笑い、離れようとしないユカリ。
その場から動けず立ち往生している私を見かねた店長が、デスクから声をかけてくれた。
「コラ! 小鉄が困ってるだろうが、さっさと戻らんか」
「うぇ~。てんちょー怖~い。じゃあ、また後でね、小鉄君!」
鶴の一声で、ユカリはすぐに待機所の方に戻っていった。