「アリサちゃんは、なんで自分だけ新規が少ないかは分かってる?」
「…服装とか雰囲気でしょうか?」
「うん、その通り。ウチの店はスタンダードなデリヘルだから、アリサちゃんみたいな雰囲気の女のコはどうしても浮いちゃうからね」
はっきり言葉にすると、アリサはうつむいて下唇を噛みしめた。
アニメやコスプレ専門店なら、アリサは間違いなくナンバーワンを獲れる逸材だろう。
しかし、ここは高級デリヘル店だ。幅広くいろんなタイプの女性を雇用しているとはいえ、ランキングの上位は常に落ち着いた雰囲気やモデルのような「イイ女系」のキャストが並ぶ。どうしても、アリサのようなタイプのキャストの人気は下火になってしまうのだ。
「まぁ、他の専門店よりもウチの方が単価が高いから、ここで頑張りたいって気持ちは分かるけどね」
「やっぱり、私は辞めた方がいいんでしょうか…」
泣きそうな顔でこちらを見つめるアリサ。
「そんなことないよ。何も努力してない人間ならすぐに辞めてもらうところだけど、アリサちゃんは別だ」
「えっ、それじゃあ…」
「店長として協力させてもらうよ。でも条件がある」
「条件…ですか?」
「これから2カ月は俺の言いつけを守ること。今回はアリサちゃんをプロデュースするカタチで手助けするから」
やる気があるキャストをプロデュースし、より稼げる女性に変身させるのは店長の仕事だ。
女性の売り出し方を考えて新規顧客を集める術に関して、私には絶対的な自信があった。
幸いアリサには売れる要素がいくつかあった。彼女は自分自身の売り出し方を知らないだけなのだ。
「あっ、ありがとうございます! 頑張ります!!」
深々と頭を下げる彼女を見ながら、私はさっそく頭の中でプロデュース方法について考え始めていた。