十分過ぎるほど可愛いルックスで、会話中もよく笑う人当たりの良い性格。スタイルは特別いいわけではなかったが、男性が好きな“抱き心地が良さそう”な感じではあった。
「うん。Nちゃんなら絶対売れると思うよ。採用で!」
そう伝えると、Nは嬉しそうに何度も「ありがとうございます」と言った。
男の心を簡単に射止めてしまいそうなその笑顔を見て、彼女が“化ける”ことを確信。看板嬢になるに違いないと思うのだった。
…
……
彼女が頭角を現し始めたのは、お店がオープンしてわずか1カ月後。いつも通りの営業日に来た、何の変哲もない一本の電話だった。
「もしもし! お電話ありがとうございます」
「あー。この間、Nちゃんと遊んだ○○って者だけど、Nちゃんって明日予約とか入ってる?」
「○○様ですね。ありがとうございます。明日はまだ予約はありませんよ。お取りいたしましょうか?」
「うん。何時から出勤で退勤は何時だっけ?」
「夕方5時からの出勤で、受付終了は夜中1時となっております」
「わかった。じゃあ、それで予約しといて。ホテルはまた明日連絡する」
「あっ、えっ!? 何時からのご予約でしょうか?」
「いやだから、夕方の5時から夜中の1時までだって」
「えっ、えぇっ!?」
自分の店で“貸し切り予約”を受ける日が来るなんて、思ってもいなかった。
このことをスグにNに伝える。
「Nちゃん! この間遊んだ○○さんってお客さんが、明日貸し切りの予約入れてくれたよ!」
「私もいま連絡来たぁ。ほんとに呼んでくれると思わなかったなぁ…」
「いきなりこんな太客捕まえるなんてすごいね!」
「えへへ~。頑張ってきまーす」
Nはニッと歯を見せながらガッツポーズで応えた。