その日もナオはいつも通り出勤してきたが、こちらの挨拶を無視して、携帯を食い入るように見つめていた。その表情は、怒りとも悲しみともとれる微妙なものだった。
気になり後ろから少しだけ覗き込むと、チラリと見えたのは、掲示板のようなサイトだった。
…
……
営業終了後、店長にナオの様子について尋ねた。
「あの、店長。今日、ナオさん少し変じゃなかったですか?」
「あぁー。なんか掲示板に自分のこと書かれてて落ち込んでたみたい」
「掲示板ですか?」
「小鉄君、見たことない? こういうやつなんだけど」
そう言われ見せられた店長のパソコンには、各地域の風俗店のトピックが立つ某掲示板サイトが映っていた。
「へぇ~。こんなのがあるんですね」
「便所の落書きみたいなもんだから、気にする必要ないって言ったんだけどね」
実際にどういったことが書かれているのか気になった私は、仕事を終えたあと、その掲示板を覗いた。
「ナオおばさん、また出勤してるよ」
「スタッフに威張り過ぎじゃね、あのババア(笑)」
「元No1嬢らしいよ、あのおばさんw」
「香水臭ぇから来ないでほしい」
「店の女のコにめちゃめちゃ嫌われてんじゃんww」
まさに誹謗中傷の嵐だった。しかも、顧客からだけではなく、この店に在籍するコたちと思しきものも…。
「まぁ、あいつ昔からメンタル弱いから、もう来ないかもなぁ(笑)」
ヘラヘラ笑いながら店長が言っていたとおり、結局、この日を最後に彼女は音信不通、そのまま自然消滅となった。
※ ※ ※
私が受けた理不尽な仕打ちと、その風俗嬢たちの末路…いかがだっただろうか。こうした少し頭がアレな風俗嬢はかなり多いので、機会があれば、またご紹介したいと思う。
(文=小鉄)
【元デリヘル店長の回想録】バックナンバーはコチラ