平成19年、その店があったのは、盛岡八幡宮の門前町。明治の頃には参道の周辺に遊郭があったとされている街です。現在も、メインストリートと並行して走る、道幅が一間ないくらいの極細路地には、やっているのかいないのか不明のスナックや居酒屋の看板がポツポツと出ていますが、その中にこの店もあったのでした。
「O」という看板の店がソレだという情報を掴んで取材に出向いてみたものの、夜目にもあまりにオンボロな佇まいは、怖気付いてしまうほど。でも、こんなオンボロ裏風俗街は他にもたくさんあった。徳島の栄町のちょんの間街しかり、尼崎のかんなみ街しかり、函館のせきせんしかり…。
これらの裏風俗街には、女のコなり客なりがいて、先人の評価という安心感で担保されていたから入れました。しかし、ここにはそれが何ひとつない。入り口の扉を開けたら怪獣が現れて、ひと口でパクッと食べられて一巻の終わり…なんてこともなくはない雰囲気なのでした。
入り口扉の前に立つと、ドアノブを握る手も震えます。勇気を振り絞ってドアを開け、「こんばんは~」と店内に入ると、目の前にひとりの女性が現れます。
「いらっしゃいませー」
怪獣どころか、花柄のワンピースをまとった、まだ30代のスリムな美女じゃないか!
ひょっとして、本物のスナックに入っちゃった!?
そう思いつつも、
「遊べますか?」
と聞くと、美女はすんなり、
「はい、大丈夫ですよ」
にこやかにそう言います。
やった! この美女がお相手ならサイコーだぜ!!