「店長、どうですか?」
「いやぁ、想像以上に問題児だわ(笑)」
「もうプロダクションの方に連絡入れちゃいましょうよ」
「んー。まだお客さんにも案内してないしなぁ。お客さんからのクレームがあり次第、ってことで」
こんな女、間違いなくクレームが来るに決まってる。そう確信していた私は、早いとこ客をつけようと、さっそくメルマガで宣伝を開始した。
【Hのプレイは…】
予想していたとはいえ、AV女優であるHへの反応はかなり良いものだった。
AV女優として活動している名前と、出演している作品のパッケージの使用許可が出ていたのが大きい。女優名や出演作品は一切出せないというケースも珍しくないのだ。
AV女優としての価値を顧客にアピールする場合、これらの要素は大きく、Hは両方を満たしていることで集客効果は目に見えて高かった。
だが、問題は接客面だ。顧客の前であの横暴な態度を取れば、一発でクレームが来るだろう。私はHがサービスを終えた一人目の顧客に電話を入れた。
「お世話になっております。(店の名前)です。○○様、本日はご利用ありがとうございました。新人アンケートへのご回答にご協力をお願い致します」
当時、新人のキャストがサービスをおこなった際、アンケート電話に応えてもらうことで割引するサービスがあった。
もちろん女性の前では答えにくいということもあり、キャストが退室したのを確認してからになる。
「いや~今回のHちゃんもイイ娘だったよぉ~。さすがAV女優って感じだねぇ!」
思わず耳を疑った。
まさか、完璧に接客をこなしたというのか…。
「そ、そうですか…。特に気になった部分などはありませんでしたか?」
「ないない。言葉遣いも接客も完璧だし、なにより美人さんだったから大満足よ! 強いて言うなら、値段くらいかなぁ。あははは!」
とにかく上機嫌な客に「ありがとうございました」と伝え、私は受話器を置いた。
電話を切った瞬間、隣からこちらの様子をうかがっていた先輩が話しかけてくる。
「お客さん、なんだって?」
「文句のつけようがないくらい良かったらしいですよ…」
「マジかよ!」
そう、まさに「マジかよ!」だ。事務所での態度を知っていれば、これが当然の反応なのだ。
結局、Hは事務所に戻ってくることなく8時間で5本もの仕事をこなし、そのすべてのお客様から高評価を得た。