「小鉄君、そんなに気張らなくても大丈夫。今回のAV女優に対する保証金というのは、広告料のようなものだからね。
もちろん、保証額以上に稼いでくれたら言うことないけど、もともと保証を全額支払うつもりで今回の契約を結んでいるからさ」
店長の話を聞き、少し気分が軽くなった。
「とにかくいつも通り、新人が入って来たつもりで対応すれば大丈夫」という店長の言葉を信じ、そのAV女優が入店する日を待つことになった。
【やってきたAV女優は…】
ついにAV女優が入店する日がやってきた。
現れたのは、スラッとしたモデル体型の、一目で「イイ女」だと分かるタイプの女のコだった。
名前はHといい、AV女優の名前をそのまま源氏名として使うことになった。
面接のため店長室に通そうとすると、彼女は開口一番こう言い放った。
「この事務所、暑いんだけど。冷房もっと効かせてよ!!」
甲高くてヒステリックな声だった。
突然の出来事過ぎて、私は一瞬固まってしまった。
「あっ、すいません。のちほど温度下げますね」
「はぁ!? 今やってよ! 早く!!」
横暴な態度にさすがにイラッとしたが、下っ端スタッフである私がキレるわけにもいかず、とにかく頭を下げながら店長室に案内した。
「店長、あとはよろしくお願いします…」
「あはは(笑)。OK、任せて!」
店長は笑いながら状況を察し、私を早々に事務所に返してくれた。
「アイツ、やべーな(笑)。小鉄君、大丈夫?」
「いやもうマジで顔も合わせたくないんですけど…」
先輩が気をつかって声をかけてくれた。
「まぁまぁ。さすがにこれ以上ヤバくなったら、紹介してきた向こうのプロダクションに言えばなんとかなるって」
「…だといいんですけど」
最悪の場合、紹介元のプロダクションに言えば、さすがに態度を改めるかもしれない。
(っていうか、正直、今すぐ帰ってほしい…)
そんなことを考えていると、ちょうどHが店長室から出て、トイレの方に向かうのが見えた。
こちらにやってきた店長に話しかける。