もちろん、さくらのようなロリ系の女のコや、物珍しさを狙った奇抜なファッション系の女のコだって数は少ないものの働いており、彼女がめちゃくちゃ珍しいというわけではない。
「でも…ほかのみんなは、本指名すごく返してるみたいで…」
「え? さくらも本指名はいただいているよね?」
「はい…でも3人だけです。ほかのみんなは10人とか、ランキングの人なんて出勤の度に予約が全部本指名で埋まる人だっているじゃないですか…」
目を潤ませながら、そう訴えるさくら。
入店当初から、彼女が頑張り屋な性格であることは分かっていた。
講習でも大切なことは一言一句逃さずメモを取り、分からないところがあれば徹底的に聞く。そんな仕事に対するストイックな姿勢が、ここに来て裏目に出てしまっていた。
「なるほどね。それで、どうしたらいいか分からないと」
「はい…。自分では精いっぱいやってるつもりなんですが、全然お客さんからの反応が返ってこなくて」
「それで、周りのみんなに近づくために、とりあえず服装や雰囲気から変えてみた…と」
「でも、やっぱりダメでした」
さくらは目に見えて落胆した。
確かに彼女のようなタイプは、ウチみたいなコンセプトの店よりも、ロリ系や素人系に特化した店で働く方が圧倒的に人気が出やすい。
しかし私は、その話を聞いて「はいそうですか」と別のお店を教えてやるほどお人好しではない。それどころか、この状況と彼女の気持ちを利用しようと考えた。
そもそも、私がさくらの入店を許可した理由は、ずばりルックスだ。
18歳という若さは、ウチの店では大した強みにはならない。幼児体型であることもマイナスポイントだろう。だが彼女には、それらを補って余りある可愛さがあった。
大きくパッチリした二重の瞳に、小さく形の整った薄めの唇。テレビで活躍しているモデルや女優級のルックスで、
なぜこんなコが風俗で働きたがっているのか
と疑問に思うほどだった。
理由はどうあれ、これほどの女の子をコンセプト違いで手放すのは惜しいと考え、すぐさま採用した。
「さくらは本気で売れたいって思ってる?」
「は、はい! もちろんです!」
「それじゃあ、もう一度講習しよう。今度はもっとお客さんが取れる方法を教えてあげるから」
「ほ、本当ですか!? 頑張ります、お願いします!!」
普通に考えて2回目の講習なんてありえないのだが、業界経験がなく、良き相談相手としていつも話を聞いてもらっている私に対して、彼女はなにも疑わなかった。
その日の仕事終わりに、彼女と近くのラブホテルで落ち合う約束をした。