ある日、いつものようにコンビニに向かっていると、突然後ろから声をかけられた。
「店長さん♪」
「うわっ、びっくりした!」
振り向くと、そこには私服のカズミが。
いつもコンビニの制服を着ていたせいか、とても新鮮に感じた。
「お買い物ですか?」
「うん、ちょっと小腹が空いてね。カズミちゃん、今日は非番?」
「そうなんですよ! でも特にやることなくて(笑)」
「やることなくて自分の職場近くをウロウロするって、相当だね」
「あ、ちがうんです! 私、家がそこのマンションなんですよ(笑)」
彼女が指さした先は、100mほど先のマンションだった。
「近いね(笑)」
「ですよね(笑)。ちょうど私もご飯買いに行くところだったんです」
「それじゃあ一緒に行こうか」
「えへへ、はい♪」
楽しそうに笑うカズミの可愛らしさにドキッとした。
買い物しながら、疑問に思っていたことを聞いてみた。
「最近シフト増やしたのって、なんでなの?」
「あははー。恥ずかしながらお金が必要で…」
「あらま、なんかあったの?」
「私、離れて暮らしてる弟がいるんですけど、大学に行かせてあげたくて…」
「あー、その学費ってことか」
「そうなんですよ。ウチお母さんしかいなくて家計が大変で」
「仕送りか何かしてあげてるの?」
「そうなんです。でも、大学ってお金が思ったよりかかるみたいで」
いつも笑顔の彼女が、少しだけ暗い表情になった。
私はダメ元で聞いてみた。
「よかったら、ウチのお店見てみる?」
「えっ…えっと、デリヘル…でしたっけ」
「うん。とりあえず事務所で雰囲気見て、お仕事の詳しい内容を教えてあげるから、無理だと思ったら入店しなくていいし…」
カズミは少し考えるように下を向いた。
そして、しばらく悩んだ末に
「一度見学させてもらえますか?」
と、不安そうに言った。