「初めまして、セイラと申します。よろしくお願い致します」
「あ、あぁ、どうも初めまして、店長の小鉄です」
初対面でも一発で分かる、所作や立ち振る舞いから滲み出す品の良さ。
茶道の先生のような凛とした雰囲気は、これまで数多く面接をこなしてきた私でも動揺してしまうほどだった。
このまま気圧されるわけにはいかない!
と心の中で自分を奮い立たせ、面接を続ける。
「セイラちゃんはどうして風俗に?」
「実は、前々からこうした業界に興味があったんです」
「風俗で働いてみたかったってこと?」
「そうですね。好奇心と言いますか、興味本位と言いますか…」
少し照れ臭そうに話すセイラ。
雪のように白い肌のせいか、頬が赤くなっているのが分かった。
お嬢様というのは、本当によく分からない生き物だ。何不自由ない生活を送っているはずなのに、興味があるというだけで風俗で働くなんて…。
(親御さんが知ったら卒倒するだろうな…)
そんなことを考えながら質問を続ける。
「ちなみに、どういうことをするのかは知ってるよね?」
「も、もちろんです! 御社の求人ページは熟読しましたので」
御社って(笑)。風俗の業界ではなかなか聞かない言葉に、少し笑ってしまう。
「あ、な、何か変なこと言っちゃいましたか!?」
「ううん、大丈夫。俺が勝手に笑っただけだから」
「そ、そうですか…」
ホッとした表情になるセイラ。
見た目も悪くないし、なにより、普通の風俗嬢が絶対に持ち合わせないお嬢様の雰囲気は大きな武器になる。そう考え、さっそく彼女に採用の旨を伝える。
「良かったです! ありがとうございます」
「いえいえ。これからよろしくね」
風俗の面接に受かっただけなのに、まるで難関大学に合格したような喜び方だった。
いつもなら、このまま講習で頂いてしまうところだが、この時、珍しく本気でこの子を売れっ子に育ててあげたいと思った。
そのため、講習では自分の欲望を優先せず、しっかりと接客の基本とテクニックを叩きこんだのだった。