【ナツの講習当日】
約束の5分前にホテルに着いたのだが、ナツはすでにそこにいた。
「ナツちゃん! ごめんね、待たせちゃったかな?」
「いえ、私が早く着き過ぎたんです」
聞けば15分前にはもう到着していたらしい。
彼女が真面目な性格であることが、手に取る様に伝わって来る。
「とりあえず、中に入ろうか」
「は、はい。わかりました」
私の後を、アヒルの子供よろしく、ちょこちょこと付いてくるナツが可愛らしく思えた。
入室し、ナツをソファーに座らせてドリンクを頼む。
いつもならすぐに講習に入るのだが、今回はまずナツと話すことから始めようと思った。
実は面接の際、受け答えが良かったのは姉のアキの方だけで、ナツ自身はそこまで質疑応答ができていない。
恐らくそれは、姉という自己主張の強い存在が隣にいることで、自分が意見を発しなくても大丈夫、という安堵にも似た感情で面接を受けていたからだろう。
だが、彼女たちが働くのは風俗店。女性一人一人が商品として価値を求められる場所であり、そこに双子だからといって特別な扱いはない。
強いて言えば、双子の姉妹が入店してきたという話題性があることだけ。
いずれにしても、彼女には姉にはない別の魅力をアピールしてもらうことが必要だった。