【真面目さを利用して講習の流れに】
「えー、ナースなんだ! すごいね」
「そんなことないですよ! 非常勤なのでそこまでハードじゃないですし…」
サチが入店して今日で一カ月。
面接の時よりも幾分か緊張がなくなった彼女は、初めは話そうとしなかった自分の素性について口にしてくれるようになった。
「でも、やっぱり普段から人と接する仕事をしてる子はすごいね。サチはお客様から人気だよ」
「本当ですか!? すごく嬉しいです!」
実際、彼女の評判は上々で、いろんなお客様からお褒めの言葉を頂いていた。
そこで私は、彼女の真面目さを利用してやろうと考えた。
「ただ…ランキングに入るにはまだ足りないかな」
「うー。もっと頑張りたいんですけど、どうすればいいんでしょうか…」
「サチが嫌じゃなければ、俺が講習してあげられるんだけど…」
「講習…ですか?」
サチの一瞬ためらう様な態度を見て私は少し焦る。
(あーマズッた。まだ早かったかな…)
サチはもじもじと手をいじっていて、軽く俯いた状態から話さない。
店長である私の誘いをどうやって断ればいいのか、考えあぐねているのだろうか。
「サチ、強制じゃないんだよ(笑)。その気があればって話だから、そんなに深く考え込まないで!」
「ち、違うんです。講習はすごくして欲しいんですけど、知ってる人に裸見られるのって、すっごい恥ずかしい気がして…」
口元に手をやって、恥ずかしそうに顔を赤らめるサチ。
確かに、その表情は嫌がっているというよりも、羞恥心がいっぱいになっている様だった。
「…でも、私、店長の期待に応えたいです! 講習お願いします!!」
ここでも自分が期待されているということを優先してくるあたり、本当に素直で純粋な子なのだな、と心の中で思った。