【サクラコをホテルに誘うまで】
仕事を終えた私は、すぐさまと彼女へ連絡する。
「仕事終わったよ、今どこ?」
「自宅です! 繁華街まで出ればいいですか?」
「ありがとう。○○ってお店の前で待ってるよ」
私が指定したのは、ホテル街がすぐ近くにある個室居酒屋。体が目的でがっついているという印象を与えない様に、軽く食事をしてから誘う事にしたのだ。
「わかりました! すぐ行きます!」という返事を受け取り、私もその店に向かう。
店の前に着くと、小雨が降ってきた。雨宿りの口実でホテルにも誘えるな…、そもそも彼女自身も抱かれることを想定しているのだろうか、なんて考えていると声を掛けられた。
「○○さん、お疲れ様です!」
振り向くと、にこやかな笑顔のサクラコがいた。泣き腫らした目の腫れは少し引いた様だ。
「さっ、入ろうか」
私はサクラコの腰に少し触れて店の中へと誘導する。
居酒屋は完全個室で他の人間からは見えない仕様になっていた。
私はそのことを確認して、対面ではなくサクラコの隣に座る。
「なんか恋人同士みたいな座り方ですね(笑)」
「サクラコの隣は落ち着くからね。嫌なら向こうに座るけど…」
「そんなことないですよ! 大丈夫です!」
何が恋人同士だ! さっきまで今の彼氏のことで泣いていたクセに…と心の中で静かに毒づく。
その後、酒も進んできたところで、サクラコに事務所でのことを話してみる。
「いえ、私もその…嫌って訳ではなかったので…」
サクラコは頬を赤くしながら答える。酒のせいなのか本当に照れているのかは、分からなかった。
「ふーん、そっか」と私は冷静を装うと、おもむろに机の下で彼女の手に指を絡めてみた。
すると、サクラコはそれに応える様に握り返してきた。ふふっ、と嬉しそうに笑いながら。
「ホテル、行ってもいいかな?」と手を握りながら彼女の目を見つめる。
「あ…はい…」恥ずかしそうに俯きながらも、彼女は確かにそう返事をした。