暮れも押し迫った寒い夜、いつもと変わらず暗いその路地を目的の店に向かうと、店の前から少し離れた場所にその店の案内人らしきおっちゃんが立っているのでした。
最初は、遠目に様子をうかがいつつ通り過ぎます。
店は営業しているのかしていないのか、照明は点いているけど人影は見えません。
そして、おっちゃんも何も話しかけて来ない。嬉しくもあり寂しくもある対応です。
Uターンして再び店の前に戻り、今度は近づいて覗き込んで様子をうかがうと、先ほどのおっちゃんが声をかけてきました。
「すぐ入れますよ」
「どんなコがいるの?」
「写真ありますからどうぞ」
言葉少なにそう言って、店内に案内してくれるおっちゃん。しかし、そこは筆者がのぞいていた店ではなかったんです。
おっちゃんが案内してくれた店は目的の●●屋ではなく、その隣のスナック風の店でした。
その店に入ると、ソファーにはすでに二人の待ち客が。壁には料金表と女のコの写真が貼られていました。
「今日来てるのは、このコとこのコとこのコです」
写真の女のコは、手で目や顔を隠していたり、横向きだったり後ろ向きだったり。でも、全員若くてスタイルのいい女のコばかり。
顔はよく見えないので、選ぶ基準はないと判断してフリーでお願いすると、待ち客を差し置いて最初に案内してもらいました。
奥のドアを開けるとその先に暗い通路があり、左手には四つの個室が並んでいました。
そのひとつに入ると、四畳半ほどの部屋には、クッションが絶望的にへたり骨組みが身体に当たって痛そうな折りたたみソファーと、小さなテーブルがあるだけ。壁のブラケット照明からは、むき出しの裸電球がか弱い光を放っているのでした。
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