2017年、アイドル・シーンはよく持ったなとすら思う。シンクタンクが発表するようなアイドル・マーケットに関する数字は、おそらくはAKB48を筆頭とする48グループや、乃木坂46や欅坂46の「坂道」による数字で、ライヴ・アイドル・シーンはじりじりとマーケットが縮小していることを感じてきた。この先、小さなパイを何人で奪いあうのだろうか?
…というような2017年の総括は、OTOTOYの「結成・加入・卒業・解散・メジャー進出──宗像明将に訊く、OTOTOYトピック2017アイドル編」でだいたい語ってしまったのだが、その取材後である現在、ひとつだけ付け加えるべきことがある。「ラストアイドル」の勢いの恐ろしさだ。
秋元康がプロデュースする「ラストアイドル」はテレビ朝日系で放映されているオーディション番組で、同名のアイドル・グループも2017年12月20日にデビューしている。
細かいことは一気に省くが、極めて重大なポイントは、すでにアイドルとして活動していても、事務所が許可すれば、他のアイドル・グループとの兼任をOKとしていることだ。
かくして2017年のライヴ・アイドル・シーンは、「ラストアイドル」に掻きまわされることになった。
ラストアイドルのセンターの阿部菜々実は、パクスプエラのメンバーだ。パクスプエラは、Dorothy Little Happyが所属しているステップワンで、かつて「mImi」として結成されたグループだ(現在は移籍)。
仙台から生まれたアイドル・グループのメンバーが、地上波テレビ番組で紹介されて、グループのセンターになる。こんなサクセス・ストーリーを見せられて、他のアイドルに追随するなというほうが無理だ。
「地下」と言われていたアイドルでも、テレビの力さえあればあっという間に「地上」への階段を登れてしまうことがはっきりしたからだ。
また、ラストアイドルには「セカンドユニット」もあり、Good Tears、シュークリームロケッツ、Someday Somewhere、Love Cocchiが誕生している。ファミリー化の準備も万端だ。Someday Somewhereの木村美咲は、そもそもは秋田のpramoのメンバーである(アイドル・ラップ・グループに在籍していた時期もあるが、そこは私の宗教上の理由により触れない。)
ラストアイドルファミリーは、2018年2月14日にZepp Tokyoでワンマンライヴを開催し、個別握手・撮影会を2018年3月25日に幕張メッセで開催する予定だ。いきなりこの規模なのである。
ラストアイドルがライヴ・アイドル・シーンの逸材を吸収していくとき、本籍であるはずのアイドル・グループとの兼任は本当に可能なのだろうか? 2018年も、ライヴ・アイドル・シーンがどんどん「ラストアイドル」、あるいはそれに類するプロジェクトに吸収されてしまう可能性は否定できない。焼け野原となったライヴ・アイドル・シーンが脳裏に浮かぶのは、私だけではないだろう。
秋元康とテレビは強い。誰もが知っている事実を噛みしめつつ、気分を入れ替えて2017年のアイドル・ポップス・ベスト10を発表したい。10位から発表するようなダサいことはしない。いきなり結論の1位からだ。
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