【元・エロ本編集者による制作備忘録】
エロ本の主な目的は、世の殿方にオカズを提供することである。当時、単純なエロであればネットのエロ画像(動画はまだなかった)をアップする人間が増えつつあったので、何かしらのヒネリも必要だった。例えば、24時間耐久テレクラなんてことをやってその様子を誌面に掲載したり、巨乳と貧乳ではどちらが感度良好なのか検証したり。まぁ、馬鹿馬鹿しいことに血道をあげていた。
こちらとしては読者から「バカだねぇ」と言ってもらえればそれで十分なのだが、世の中は広いもので、こうした馬鹿げた真似を「サブカル」と勘違いする連中が一定数存在した。
エロ本でも一応編集者なのでハメ撮りばかりしているわけにもいかず、方々の飲み会に顔を出していた時、「エロって一種のサブカルチャーだよね」とか失笑ものの寝言を訳知り顔でほざくネーチャンと少なからず出会うことがあった。こういう連中の大半は編集とかライター志望で、残りは職業不詳にすることで自分を大きく見せたい阿呆だった。要するに、こじらせた自称サブカル好きだ。好んでお近づきになりたい手合いではない。
そういう連中には「じゃあ、誌面に出てみる?」と話を振れば大抵黙るものなのだが、100人のうち1人の割合で脳が茹で上がった輩はどこにでもいる。そうして偶然引っ掛けたのが「サキ」だった。24歳の自称ライターだが、商業媒体に原稿を掲載した経験はなし。やせ型でエロい雰囲気は皆無だった。シラフなら間違っても出演依頼をしないタイプ。
軽口を叩いた己を呪いつつ、酔いが醒めるにつれ話がうやむやになるだろうと踏んだのだが、サキは誌面に掲載されると確信している様子。日を置いても「いつ撮影するの?」と携帯電話に問合せが絶えなかった。