名前を泰子としておこう。社員証を物撮りしながら雑談すると、某メーカーで技術職をしていると教えてくれた。普通であれば、個人情報を見知らぬ男にペラペラしゃべるものではない。しかし泰子は、出身大学や現在の研究など個人情報ダダ漏れ。学歴や仕事で露骨にマウンティングを仕掛けてきた。
流行のAVは知っているが、研究のトレンドなど知らん。日本語を使っているはずなのに、彼女の発言のひとつも理解できなかった。泰子は「こんなバカ、生まれてこの方見たことがない」という軽蔑を隠そうとしなかった。
このままでもヌードは撮れるが、可能なら有名企業OLとファックしたい。たとえブスでも。だが、この雰囲気ではセックスに持ち込むことは非常に厳しい。下に見ている相手と同衾したい女はなかなかいない。
「どうにか話題を変えて、こちらの土俵に引きずり込みたい」
という思いから、撮影に応じた動機を訊ねた。すると、「東電OL殺人事件って知っています?」ときた。1997年、東電に勤めるエリートが夜は立ちんぼをしていて殺された、ギャップで世間を騒がせた事件。関連書籍は山のように刊行され、知らない出版人はいない。泰子曰く
「エリートと呼ばれる自分たちのような人種が、夜は金で男に弄ばれる。被虐の快感と女の価値を確認させてくれる悦びは、自分にもよく分かる」
とのこと。死人に口なしなので何でも言いやがる。
娼婦願望と被虐願望を満たしたい思いから、筆者が彼女の「崇高な人生」について知らなければ知らないほど都合が良い様子。下手に土俵に上げるより、“頭の中がセックスでいっぱいの阿呆”を演じれば事に至れるようだ。
非常に不本意ながら、相手の求めるように振舞った。だって、この先有名企業OLとファックできる機会なんてなさそうだったし。
娼婦願望やら何やら“のたまう”わりには、駄セックスもいいところだった。フェラは手抜き、手コキは雑。ハードなサービスなど期待できる気配は微塵もなかった。肝心の本番に至っては、冷凍マグロの方がまだ生きている感じがするほど無反応。そう言えば、江戸時代の娼婦は天井をぼんやりと見つめていたと何かの本で読んだ記憶がある。しかし、今日の風俗嬢でこんなサービスをしたらクレーム必至だ。グーで殴っても無罪判決を勝ち取れる気がする。
殺伐とした情交をこなした後、どうも収まりがつかず歌舞伎町のイメクラでOLコスプレのナンバー嬢を指名。実際の有名企業OLよりも、美人な偽OLの方に価値があると痛感した日だった。
(文=伊藤憲二)
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