エロ本編集者が言うのも何だが、胡散臭い。職掌柄、変態カップルなど掃いて捨てるほど見てきたが、こういう撮影の多くはどちらもノリノリだったりするもの。ところが、香織の態度からは拒絶しか感じなかった。
佐々木が電話で「妻が犯されている姿を見るのが好きなんです」と述べた台詞は、単純に“他人とセックスをする”という意味ではなく“合意なしでセックスする”という意味なのかも知れない。それって…
犯罪じゃねぇか!
予約した部屋に入ると、佐々木は「私のことはお気になさらず、好きなようにしてください」と言った。
今まで乱交パーティーやスワッピングの取材に参加したことはあるけれど、撮影を見学される経験はなかったので落ち着かない。おまけに妻の香織は顔が青ざめていた。リラックスさせようと軽口を叩こうかと思ったが、夫の見ている前で適当な与太を飛ばせる雰囲気ではなかった。
仕方なく淡々と下着姿から全裸でポージングなどを指示。香織は不平不満こそ口にしないものの、表情は完全に死んでいた。もちろん、エロい雰囲気など皆無。一方の佐々木は、ソファに座り笑顔でコーヒーを啜っていた。何だ、これ。
1秒でも早く撮影を終わらせて逃げ出したい。
ベッドでフェラの写真を撮ろうとしたところ、佐々木はカメラを取り出した。
「妻が他人のものを咥えている姿を撮りたいのです」
散々、他人の痴態を全国にバラ撒いてきたので、いまさら己の姿を撮られたところで羞恥心はない。ただ、佐々木の“オカズ”の刺身のツマ的なポジションで扱われると思うとゲンナリした。