ここまで多くのモデルを供給されると、「友達が多いんだなぁ」などと脳内お花畑なことは考えられない。どう考えても何かしら裏がある。紹介されたモデルに「どういう経緯で撮影することになったの?」と訊ねたところ、
「友達の友達の友達の友達が『こういうアルバイトあるよ』って紹介してくれた」
と教えてくれた。普通であれば、撮影の謝礼はモデル当人に支払う形を採っているが、紹介料を別途で会社からかすめ取る術がなかったので、謝礼は一括でさつきに渡していた。仲介者が増えれば増えるほどモデル当人の懐に入る金は少なくなる。おそらく、このモデルの手元にはブラチラ撮影ほどの金額さえ渡っていなかったろう。ほとんどタダみたいな値段でハメ撮りされるって、搾取もいいところだ。
真っ当な人間ならこの構造に憤りを覚えるのだろうが、そうした倫理観を持っていたらとうに会社なんて辞めている。基本は、
「撮影ノルマをこなせれば、世はすべてこともなし」
である。とはいえ、そんなムチャが長続きするはずなく、ほどなくさつきからのモデル供給は滞り始めた。モデルの切れ目が縁の切れ目、彼女との連絡は途絶えがちになった。
さつきにとって“楽に金を手にできるシステムを構築したのに、それを捨てる”ことは難しかったようで、風の噂でフリーのAVプロダクションの真似事を始めたと聞いた。しかし、ノウハウも人脈も後ろ盾もない一介のギャルが太刀打ちできるほど甘い業界ではないので、即座に頓挫したという。
失敗したのだから諦めて地道に稼ぐ方法を考えればいいものを、一度甘い蜜を吸うとなかなか忘れられないらしく、他社のエロ本に筆者がかつて撮影したモデルたちが掲載されるようになった。が、他社は小社ほど「素人」という記号に固執しているわけではなかったので、需要はなかった模様。そもそも、複数のエロ本出版社に出ている時点でセミプロだろう。
さつきの存在をすっかり忘れた頃、彼女から久々に連絡が来た。曰く
「高校を卒業した妹がハメ撮りに応募したいと言っている。撮影は可能か」
という内容だった。身内まで売っ払う発想に呆れたが、その当時はストックに余裕があり、別段急いで撮影する理由はなかった。十人並みのギャルの妹ならやはり十人並みだろうし、面白味がない。半分は拒否するつもりで、
「姉妹丼という形なら撮影可能」
と返したら、
「やる!」
と即答。基本的に素人モデルの再掲は行わないのだが、姉妹丼という切り口なら企画は通る。妹分の紹介料が欲しいということだったので、そこは自腹で支払うことに。姉妹丼なんて滅多にできるプレイでもないし。