原稿を入稿した後、約束通りスカウトマンに紹介したところ、
「伊藤さん、確かに誰でもいいと言いましたけど、あれは酷いでしょう。売りになる部分が皆無じゃないですか」
と文句を言われる始末。まぁ、気持ちは分からなくもない。
ぐうの音も出ない正論なので、一瞬「すみません」と謝ろうと思ったが、メイクマネーのため強気の交渉をしなければならない。
「確かに、彼女に見るべきところはない。が、すげぇエロいんだよ。ウチだと使い物にならないけどAVなら武器になるんじゃないの」
と、さまざまな理屈をつけて何とか合意してもらった。
その後、くるみは中小メーカーから企画女優としてデビューを果たした。「企画女優の寿命は短いから、すぐ消えるんだろうなぁ」と思って視聴後3秒で存在を忘れたが、数カ月後に再度手紙が届いた。しかも、パソコン全盛のご時世に手書きで。
手紙自体はびっくりするくらい長いので要約すると、
「エロ業界って怖いところだと思っていましたが、伊藤さんの紳士的な振る舞いを見てAVに出る勇気をもらいました。今では多くの作品に出て毎日が充実しています」
という内容だった。人の価値観はそれぞれなので他者がどうこう言う権利はないけども、乱交・アナルなどのプレイが充実と呼べるのかは甚だ疑問だ。手紙を読むかぎり、大半のセクシー女優がNGにしているプレイをすべて制覇しているようだった。
それから数カ月後、くるみの所属するAVプロダクションの人間と偶然出会った時、彼女の近況を訊ねると、
「もう辞めましたよ。何でも日本のAVは物足りないって言っていました。NGがない娘だったので重宝していたんですけどねぇ」
とのことだった。彼女が出演したAVを聞けば、どれもハード路線を売り物にしているものだったのだが、それでも物足りないのかと呆れたが、おそらく辞める口実だと思った。
日々のハメ撮りライフでくるみの存在をすっかり忘れていた頃、たまたま視聴したどこぞの国の裏AVに彼女がいた。確か、その国ではAVは違法のはずだが、日本のハードAVでもやらないような過激プレイを訳もなくこなしている様子だった。内容を描写したいが、到底書ける内容ではないので割愛させていただく。とにかく、
「ああ、こりゃ日本のAVは彼女に生温いわなぁ。つーか、これAV以前に犯罪じゃねぇか?」
と呆れるよりなかった。ハメ撮りモデルからAV女優に転身する人間はそう珍しい話ではない。中には単体女優になった存在もいる。生憎、そんな美女を撮影したことはないが…。
風の噂では、くるみは他国の違法AVを引退した後、欧米に渡ってイケメンの白人と結婚したという。
(文=伊藤憲二)
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