エロ本もAVもエロ業界には違いないが、業務は八百屋と魚屋ほど異なる。要するに別業界だ。ゆえに手紙をもらった時「AVプロダクションの面接に行きなさいよ」と思ったけれど、くるみは
「エロ業界がどんなところか分からないので、まずはエロ本で雰囲気を感じたいんです」
とおっしゃる。持参した履歴書を読むと(ハメ撮りの応募に履歴書を持ってくる人間はまずいない)、年齢は21歳でフリーター、スリーサイズはB81・W64・H89とあった。風俗などでウエストが60センチを超えている場合は、大体トロールか豚の友達だけど、現実の女で64センチは珍しくない。ルックスも平均的で、スタイル容姿ともに見るべきところがない。
「モデルのストックは十分にあるし、撮影する理由がないなぁ」
と途方にくれていたが、その時、知人のスカウトマンから
「どんな女でもいいので誰か紹介してください!」
と懇願されていたことを思い出した。どうせ撮影の謝礼は会社の金だし、撮影するだけして後からスカウトマンに紹介料をもらえばいいかと考え、応じることにした。
AV出演を志願しているだけあって、撮影は順調に進んだ。ただ、素人モデルを撮影すると言っているのに、自前の大人のトイを挿入したり、性器を御開帳したりと、到底コンビニ向けエロ本には使えそうにないポージングをかましてくれたのには閉口したが。おまけに、撮影に慣れてくると、素人ヌードとは遥か遠い要求を出してきた。
「もっと素人っぽい雰囲気を出して!」と指示しても、彼女のゴールはAVである。何度注意しても気付くとハードなポーズやプレイになってしまう。
「できれば大人数で乱交をしたいんですけど、友達を呼んでもいいですか?」
「ハプニングバーで撮影がしたいんです」
とか言われても、困るのである。おかげで、撮影を終えてポジフィルムを見てみると、誌面に使えるのはごくわずか。何とか切り貼りして穏健なページに仕立て上げたが、労多くて報われるところがほぼなかった。