しかし、話に聞いていた看板はなかった。そこで事情通に探りを入れてみると、どうやら再設置してすぐにマンション側から禁止の通達が出たのだそうだ。たしかに入り口には、違法看板を禁止する旨の貼り紙があった。看板を出すと、道路に移動させられてしまうということらしい。もちろん、そうなれば警察も動き出すことになるので、今のところ効果があるようだが…。『A』の一角にあるアジアンエステの店長は、
「管理人がいない深夜は、看板を出してもまだ大丈夫。だから、お客さんも深夜の方が多い」
と教えてくれた。現在もかなりの数の店が『A』に入っていて、すっかり復活したという。
ちなみに、アジアンエステが多いのは、お隣の鶯谷の衰退も関係しているようだ。つまり、鶯谷のアジアンデリヘルから女性が流れてきているというのだ。店長は、「2020年のオリンピックを前に、もう一度大きな一斉摘発があると睨んでる」ようで、「いつまでここで営業しているかわからない」と語った。上野の九龍城は、ふたたび伝説になってしまうのだろうか。
（文＝子門仁）
