時間は22時。街灯などない道をビクビクしながら進み、小屋に入ると、すでに彼は待っていた。
キスから始まり、スルリと服を脱がされた。「かなり慣れてるな」と思った。周囲はあまりにも静かで、潮騒だけがやけに大きく聞こえて、行為になかなか集中できなかった。それでも、脱がされたら、あとは覚悟を決めるのみだった。そして、彼の迸るイチモツを受け入れた。
「あまりの痛さに、思わず“ウッ!”って叫んじゃったんだけど、そしたら彼が周囲に聞こえるからって、私のシャツの袖を口に突っ込まれて(苦笑)。グングン突っ込まれて、アソコの中でドクドク波打ってるのが分かったの。それに興奮したんだけど、それ以上に痛みが気になって…」
耐えても涙が流れた。血はそれほど流れなかったが痛みはひどく、2キロ離れた家に帰るのに1時間以上かかった。それでも、数日後に島を離れる彼との思い出ができて嬉しかった。翌日には痛みが引いていたが、「ジンジンしちゃって…」と、2日後に今度は貴子さんから誘った。彼のぬくもりを忘れないように激しく抱き合った。
そして、約束の日がやって来た。しかし、彼は島にいた。なんでも、受け入れ先の料亭の都合で1週間先延ばしになったという。セックスができると喜んだ貴子さんは、一日おきに漁師小屋へ向かった。彼女にとって一週間はあっという間だった。しかし、その後も彼は島にいた。その時も一週間先延ばしになったと言われたが、結局、ゴールデンウイークを過ぎても島を出ていく気配はなかった。
「要するに騙されたの、私。島を出るというのを口実にヤリたかっただけなの。“島を出る出る詐欺”に遭ったとでも言えばいいのかな(苦笑)」
話はこれで終わりではなかった。彼が自分の親の漁師小屋に女のコを連れ込み、ナニかをしているという噂が流れたのだ。当然、このことはすぐに彼の父親の耳にも入った。仕事で使っている、いわば聖域でなんてことをしたのかと激怒。その話は、たちまち島に広がった。
「親は何も言わなかったけど、私、島に居づらくなって…。それは彼もそうだっただろうし、ふたりで島を出ることにしたの。だけど、彼はお金がなかったから、先に行ってほしいって言われて…」
つまり、時間差で駆け落ちをしようとなったのだ。その約束から2日後、まず彼女が沖縄本島に出て、東京に向かった。当時は格安チケットやLCCなどなく、東京までの飛行機代は高かった。だから、まず福岡に出て新幹線を使うというルートにした。