そのチーフプロデューサーA氏に筆者の本職が風俗ライターであることを告げていたこともあり、てっきり新しいジャンルの店を見つけたから遊ぼうという気楽なものだと思っていた。ところが、移動の車中で「会員制の店だから、口外禁止だから」と告げられ、さらに携帯電話は電源を切ったうえで一時没収、メモを取るなどの記録行為もNGなど厳戒態勢。そしてA氏は、「まっ、秘密クラブみたいなもんだね」と言ってきた。
到着したのは、人通りも多い繁華街の中にある、ありふれた外観の雑居ビルだった。各階には飲食店や美容室などが入っていたが、15時頃だったこともあり営業しておらず、館内は不気味なほど薄暗かった。
案内されたのは最上階の10階。フロアー内の廊下のちょうど真ん中くらいのドアの前まで来るとA氏はノックした。
すると、現れたのはスキンヘッドのいかついカラダをしたスーツ姿の黒人男性。A氏が筆者を指さし「マイフレンド」と告げると、中に入れという仕草をした。
扉を開けた先は、高級クラブのような内装だったが、時間帯が時間帯なだけに誰もいなかった。A氏がその黒人に「VIPルームに通してくれ」と言っているのが聞こえた。
部屋にはいくつかドアがあったが、ある扉を黒人男性がノック。すると、中から別の黒人男性が出てきた。同じく鍛え抜かれた体つきのスキンヘッドで、いかにも用心棒といった感じだった。
扉の奥には階段があり、上階へとつながっていた。その階段を上がると、さらにもうひとつドアが。それはかなり厚めのもので、防音対策だと思われた。
中に入ると、そこは少し暗めの鏡張りの部屋で、十数人の男女が酒を飲んでいた。その中にトップレスの女性もいて、胸を触られたりしていた。そして、女性に手を引かれて周囲の部屋に消えていく男性の姿も…。
A氏は「たまにテーブルの上でしちゃう人もいるけど、昼間の時間帯だとさすがにいないね。人も少ないし」とサラリと呟いた。どうやらここは会員制の極秘クラブで、ハプニングバー的な要素を持ち合わせているらしい。
しばらくすると、こちらのいるテーブルに3人のスーツ姿の女性がやってきた。キャバクラのようにお酒を作ってくれたが、A氏は慣れた手つきで服の上から胸を揉んだり、さらに服を脱がしたり、イチャイチャし始めた。そして、「行こうかと…」と女のコと店の奥へ消えていった。
筆者は戸惑うばかりだったが、女性から「気になった女性がいたら、あちらで確かめられてもOKですよ」と言われ、いくつかある扉を指差された。つまり、そこでコトに及ぶことができるようだ。
と言われても“相場”も分からず、どこかで恐さも感じていたので、ひとまず適当にその場をごまかして、女のコと話しながらA氏が戻ってくるのを待つことにした。