淡白ではあったが、都内でちょんの間気分が味わえるのは悪くないと思い、筆者はその後も数回通った。当時は、今ほどネットは普及していなかったが、噂が噂を呼んだのだろう。お上への対策なのか、後期はメニューに『スペシャル宴会コース 1万円』と記載して、サービスを提供していた。
その後、事情は分からないが、その中華店はなくなり、建物自体も改装された。今では別の飲食店が入っていて、当時の面影は微塵もない。
先日、当時の仲間にこの店のことを思い出として話したところ、「今は大久保エリアにそういう店があるらしい」という話を聞くことになった。
このエリアに、四ツ谷にあった店と似たような名前を見つけ、もしかしたらと思い入ってみた。
20年前のようにひとりで食事をするも、待てど暮らせど耳元で囁かれないどころか、忙しいのかオーダーした料理すら届かなかった。
そこで、シビレを切らして「スペシャルメニューはありませんか? 1万円くらいの…」と自ら切り出した。
すると、対応した女性スタッフは「1万円のメニュー? ありませんよ」といって去ってしまった。
その後も、それらしいお店を見つけてはアタックしたが、どこも「ない!」と取り付く島もなかった。どうやら、あの中華料理店は本当に都市伝説になってしまったようだ。
それでも、後を絶たないのが『1万円メニュー裏風俗』の話である。あなたが入った料理店で1万円メニューがあったら、もしかして…。
(文=子門仁)